20・涙
今回は、某スライムのアニメのあるシーンを意識したシーンがありますわ。多分分かると思いますが…。
次回と登場人物で、今章は終わりですわ。その次からは、また桜に戻りますわ。
埋葬が終わった後カイルとローベルは、警備兵の計らいで別の宿屋で泊まる事になった。本来なら今日本国に出発する予定であったが、襲撃と仲間の死により、明日に延期になった。
そしてその日の夜…充てられた部屋の酒瓶が置かれた机で、バハムートとリヴァイアサンの点検をしているカイル。其処にローベルがやって来た。
「今警備兵の人達に聞いたけど、ギルドには警備兵の方から連絡してくれるって」
ベッドに腰を掛けながら、カイルに伝えるローベル。
「そうか」
カイルは二丁の銃から目を離さずに答える。
「…カイル」
「何だ?」
「君は…悲しくならないのかい? 私は凄く悲しい…ほんの前日まで、皆は当たり前の様に生きてたんだ。でももう居ないんだ…君も悲しいだろ?」
ローベルが訴える様に言うと、カイルはバハムートとリヴァイアサンをしまって答える。
「何言ってるんだ。俺達の仕事は、何時何処で誰が死んでも可笑しくない仕事だろ? 自分が死ぬのも仲間が死ぬのも、百も承知じゃないか!」
「それは…」
「半端な覚悟なら、最初からスレイヤーズのギルドに入らなきゃ良いんだよ!」
そう吐き捨てるとカイルは、机の上にあった酒瓶を取って、バルコニーの方に歩き出す。
「…俺は少し飲んだら寝るから、ローベルは先に寝てろ」
そう言うと窓を開けて、バルコニーへと出てしまう。ローベルはカイルに厳しく言われてショックを受けて、電気を消してベッドに寝転がってしまう。
※ ※
暫くした時、ローベルは目を覚ました。ふとカイルのベッドを見ると、其処にはカイルは居なかった。
「カイル…?」
今度はバルコニーの方を見ると、黒猫の獣人の姿が見えた。カイルである。
ローベルはベッドから降りると、バルコニーに向かい扉を開ける。カイルは此方に背を向けて、柵に寄り掛かっている。
「カイル…そろそろ寝ないと…明日出発するんだから…」
そうローベルがカイルに話しかけるが、カイルは何も答えない。
「…まだ怒ってるの…でも私は少しくらいは、悲しんでも…」
良いと思う…そう言いかけた時、カイルが振り向いた。
「……」
「!……」
カイルの顔を見た瞬間、ローベルは言葉を失った。
カイルは…静かに涙を流していた…。
その表情は無表情であったが、青い瞳から確かに涙を流していた。
その顔を見たローベルは、何も言わずに部屋へと戻り、ベッドに横になった。
「…馬鹿だ…私は…」
己の無神経さに自虐するカイル。
ローベルは今から二年前に、このチームに入った。年齢はローベルの方が一歳年上であったが、入った当初既にカイルはチームに所属していた。
共に任務を過ごす内に親友になった二人。ある時ローベルはカイルに、何時からこのチームに居るのかと聞いた。カイルは七歳頃に両親を亡くし、その際にボスに拾われてチームに入ったのだと答えた。
現在カイルは十六歳、つまり九年もこのチームに所属しているので、ボスや仲間を失った悲しみは、ローベルよりも上なのであった。
それなのにその様子を見せなかったのは、カイルの強がりであったのであった。
「ゴメン…カイル…」
ローベルはカイルへの申し訳なさを、一人静かに謝罪する。何度も謝罪をしている内に、ローベルは再び眠ってしまった。
カイルも本当は、仲間を失った悲しみに満ち溢れていたんですが、共に生き残ったローベルの前では、出来れば見せたくなかったんですわ…。
因みに親を亡くしたカイルは、拾ってくれたボスに、父親の様な感情を抱いていましたわ。
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