16・打ち上げの宴
今回も1998年のヴァンパイア映画の影響を受けていますわ。
尚、この世界は十五歳で成人の為に、十五歳で飲酒可能ですわ。『転生したドララー』と同じですわ。
ある程度の大きさのある街の二階建ての宿屋で、バカ騒ぎが鳴り響いていた。
その宿屋ではカイル達のチームが、大勢の娼婦を招いて騒いでた。皆仕事を終えた事からか、帽子もコートも脱いで娼婦の腰を抱いたりしながら酒を飲んで笑っている。
そんな中カイルは、女と絡んだりはせずに、帽子もコートも外さずに、机に座って瓶を机の傍らに置いて、自分の拳銃を弄っている。
「なんだよぉカイル~、お前女も抱かずに、酒飲みながら銃弄ってんのかよ~」
酒瓶を持ったデニスが、カイルに絡んでくる。カイルはデニスから漂う酒の匂いに、顔を顰めながら返す。
「ここの所、『バハムート』も『リヴァイアサン』も、オーバーホールしていなかったからな。忘れない内にしているんだよ。『フェンリル』と『ガルム』もやっておくつもりだ」
『バハムート』と『リヴァイアサン』とは、カイルが使っている二丁の大型拳銃の名前であり、『フェンリル』と『ガルム』は、リボルバーの名称である。これ等の四丁の銃はカイルの自作である。
「その割には、酒飲んでるんじゃねぇか」
そう言いながらデニスは、カイルの瓶を手に取る。
「んぁ? 何だよ果汁水じゃねぇか。やっぱりお前はガキだな」
「うっせぇよ! 酒飲みながら点検が出来るか! ってかあっち行けよ!」
カイルが怒鳴ると、デニスは笑いながら娼婦達が居る所に行った。カイルは溜息を吐くと、バハムートを組み立てていく。すると近づく気配を感じ、デニスがまた来たのだと感じた。
「しつけぇな! 何だよ今度は!?」
勢いよく振り返ると、其処に居たのはデニスではなく、ボスだった。
「何だボスかよ」
「何だは無いだろ。お前は女は抱かないのか?」
「俺は年上の女には興味は無いよ」
「ああ、雌猫か」
ボスが言うとカイルは、ジト目で睨む。
「そういえば、ローベルはどうした? 何時の間にか見当たらないが?」
ボスが見回すと、他のメンバーは娼婦と戯れているが、ローベルの姿が無い。
「ローベルは先に休んだよ。アイツはこういう騒ぎは好きじゃないからな」
「そうか…」
「…?」
その時カイルは、ボスが浮かない顔をしている事に気付いた。
「どうしたボス?」
「ああいやな…こんな時に話す内容じゃないが…三日前の仕事の事だ…」
「三日前? 確か強盗団を始末した仕事だったな…それがどうした?」
「あの時俺は、アジトの洞窟の大きさから、五十人は居ると推測したが、実際には二十人足らずだった…」
「そりゃ読み間違える事もあるだろ?」
「…残党が何処かに残っているんじゃないかと考えてな」
「居たら俺達で倒せば良いだろ?」
フェンリルを見ながら答えるカイル。
「…まあそうだな…お前も少しは楽しめよ」
そう言うとボスは、他のメンバー達の所に行った。
※ ※
その頃賑やかな声が響いている宿屋の外では、武装した集団の姿があった。その数はおよそ三十名程である。
「……」
先頭に立っている大男は、大きな槍を携えていた。
※ ※
用意してあるピザの様な食べ物を食べている時、カイルの肩を叩く者がいた。カイルが振り向くと其処には、酔った様な顔をした新入りが立っていた。
「やあカイル!」
「何だハンス。お前酔っているのか?」
新入り‐ハンス‐は、あからさまに酔った様子を見せており、その姿は昼間とは別人である。
「まさか! 僕は酔ってませんよ!」
「…それは酔っている奴の、決まり文句だぞ! オイってか誰だ! コイツに酒を飲ましたのは?」
「ああ、俺だ!」
そう答えたのは、ハリーであった。
「ハリー。コイツは十五歳だが、コイツにジープとトラックのガソリンを入れさせるのを、あとでやらせる予定だっただろうが、これじゃ出来ねぇだろ。」
カイルは文句を言うが、ハリーは何も答えずに、抱いていた女に顔を向ける。
「おい、ビールがもう無いぞ!」
「何だよ! じゃあ酒屋に買いに行くか?」
「キャハハ!!!」
仲間達の声に娼婦達もテンションが上がっている様に笑う。
「いや、確かトラックに積んである筈だ。俺が取って来よう」
そう言って立ち上がったのは、ミゲルであった。
「俺が取って来るか?」
カイルが尋ねる。
「いや良いさ…俺はサブリーダーだからな、メンバーを気に掛けないとな」
「いやミゲル…お前も酔っているだろ…ボスはどうしたんだよ?」
「ああ、奥でグースカ寝ているさ! まあ気にするな」
そう言いながらミゲルは、フラフラの足取りで外への扉に向かう。カイルはそんなミゲルを気にしつつも、ボスが寝ている奥の部屋へと向かう。
「やれやれ、明日でこの国ともお別れか」
そう言いながらミゲルは、ドアノブに手を伸ばした。
ドスゥン!!!
「?」
突然腹部に衝撃が走り、何かと思い腹部に目を向けるミゲル…腹には扉から突き出た、大きな槍が刺さっていた…。
最初の犠牲者が…。
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