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愛する君に花束を。  作者: 咲ヶ丘ゆづき
プロローグ
2/3

愛する君に花束を。

日常パートで挫折しないように頑張ります。

 『許さない。許さない。許せない……。お前も地獄に落ちろぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!』

 

 感情はもう壊れた。私は人形。操り人形。地獄でもどこでも怖くない。痛みなんてもうない。だから

 

 「——————ちゃん!」


もう何も怖くな——————。


 「お兄ちゃん!!!」


 「!!」


目を開けると、女の子が目に涙を浮かべて抱きついていた。 


 「詩織?」



 「詩織……。詩織!詩織!!!」



 俺は妹の詩織を抱きしめた。温かい。人ってこんなに温かいんだ。一人じゃないって、こんなに嬉しいんだ。


 「お、お兄ちゃん!く、苦しいい!!」


 「ご、ごめん」


俺は詩織から離れると周囲を見渡す。


周囲を見渡すと、いつもの俺の部屋だった。何の変哲もない、俺の部屋。いつもの日常だった。 


血もついていないし、変な化け物もいない。カーテンから光が差していて、世界は何も変わらず回っていた。


ただ、息切れでとても苦しいのと心臓の鼓動がはち切れそうなくらい早い。


あれは、何だったんだろうか。夢。とてもそんな風に考えられなかった。


 「お兄ちゃん、なんで泣いてるの?」


 「え?」


そういえば目から自然と涙が溢れ出ていた。


何も悲しいことなんてないのに。この現実が嘘みたいで。もう詩織に、


皆に会えなくなるんじゃないかって。そんなことないのに。悲しくて嬉しくて辛くて、幸せで。


 「今日のお兄ちゃん変だよ?」


変なのはいつもかといつもの調子で言ってくる。


 「いつも変じゃない。一言多いぞ」


だから俺もいつもの調子で返した。


少し詩織と話していたら、動機も治まり呼吸も整ってきた。

 

 「もう、朝から抱きついてくるし!信じられない!」


 「ごめんて」


 「今回だけだからね!」


 「もうやんねーよ」


 「そ、それもそれでヤダ!あ、いや……うぅ……もう!お兄ちゃんなんて最低!変態!!ロリコン!」


詩織は、部屋を飛び出して、一階に下りて行った。



このやりとりが幸せだったんだなって。


 

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>



 あの夢は何だったんだ。いやにリアルだった。そして、襲ってきた女にもどこか見覚えがあった。だけど思い出せない。思い出そうとすると頭が痛くなる。まるでコンピュータがウイルスに感染したみたいに記憶がバグる。でも……。すごく大切な何かな気がする。


 「お兄ちゃん朝ご飯だよ!んもう!また泣いてる!どうしたの?彼女にでも振られた?」


詩織の声に現実に戻される。


 「ほら!今日は好きなもの買ってきてあげるから元気出して!ね?お兄ちゃんらしくないよ」


 そうだよな。たかが夢だ。現実じゃない。少し疲れていただけだ。きっと。そうに違いない。


 「ありがと詩織。元気出たよ」


 「愛してる詩織?!結婚しよう?!何言ってんのお兄ちゃん」


 「どんな聞き間違いだよ」


 「わ、私たちはきょ、兄妹な訳であって、け、結婚とかで、できないし、全然うれしくないし。むしろきもいし」


 「話を聞け」


「こういうのは、ムードが大事なのよ!急に言われても困るのよ!言うならちゃんと」


「この人生においてお前に告白は絶対しないから」 


なんで言わないのよ!と少し不機嫌になった詩織は再び下へ降りて行った。


何でも何も。俺ら兄妹だからな。でも悩んでるのが馬鹿みたいに思えてきた。夢ごときで、こんなになる必要にない。俺は、寝間着から、学校の制服へ着替え下の階へ降りた。





>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>



 ここ、永瀬家は俺と詩織の二人で暮らしている。親は俺らを捨て海外へ移住した。


あまり記憶がないが小さい頃、どこかの施設に入れられていて俺と詩織はそこから還ってきたらしい。


その施設を今調べても、地図に存在しない場所になっている。だから過去を探るのは困難だった。


俺と詩織が本当に血が繋がっている兄妹なのかも実はまだ不明だけど、詩織には兄妹と言っている。



 詩織は中学三年生、俺は高校二年生。食事の事は全く出来ない、させてもらえない為、全て詩織に任せている。


なぜ俺に料理させてくれないのかと聞いたところ、詩織曰く


 「お兄ちゃんに料理させるとおいしくない」とド直球に答えが返ってきた。めちゃくちゃ素直な妹さんである。お兄ちゃんは悲しいです。

その答えを言えるほど詩織の料理はうまい。多分レストランに出しても差し支えない。お兄ちゃんは嬉しいです。


 中学三年なので受験生でもあるが、頭もいい。そして俺が言うのもなんだが可愛い。ツインテールで身長は低めで、見た目は子供っぽいのにとても大人である。エプロン姿もめちゃくちゃ可愛い。


クラスにいたら多分告ってた。んで振られてた。だが俺らは兄妹である。家族なので恋愛感情はない。あいつにもないはずだ。ないよね?




 にやにやしているのを睨まれつつ朝食を頂く。今日のメニューは、ご飯とみそ汁と豚肉の味噌漬け焼きだった。



 「おいしい。今日もおいしいな」


 「スタミナ付けて元気出せよお兄ちゃん。女なんていっぱいいるしここにもいるよ」


 何か勘違いしている詩織は無視して、朝食を済ませる。食器を片付け、玄関に向かう。


 「詩織も早く学校向かえよ」

 

 「うん」


 「じゃあ、行ってくる」


 「いってらっしゃいお兄ちゃん」


 永瀬 優君。 そうやって俺の名前を言って笑っている気がしたが玄関のドアで遮られて見えなかった。














 

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