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二○三二年五月十九日。
アラスカ南部に位置する島、セアル島。島の半分を占める森林地帯に大規模な火災が発生。火は約十時間後に鎮火。島の住民から負傷者は出なかった。火災発生前に、森の中で複数の人影が目撃されたという証言から、事件性有りと判断。アラスカ市警が調査に向かう。
二○三二年五月二十日。
政府機関GHUより調査員が派遣される。周囲から微量な放射能が検知された為、住民の避難を開始。島全体を立ち入り禁止区域とする。調査員からの報告。島の植物からグラム陰性菌の特徴を持つ細菌を確認。病原性を危惧し、島民の隔離を提唱。
二○三二年六月三日。
島から未確認の植物を確認。近辺の島の、どの植物とも同定されず、新種、あるいは突然変異体であると思われる。放射能の影響も含めて調査を続ける。数々の変異体を確認。主に植物の変異が著しく、異種同士の交雑種が次々と生まれている模様。植物に寄生された野犬を発見。後日、研究所に送る。
二○三二年六月五日。
植物の浸食が村まで及ぶ。調査員が三名行方不明。また、近隣の島にて植物の変異を確認。変異が大陸を超えて広がっている模様。政府機関GHUにより、島の調査を中止するよう通告される。
二○三二年六月七日。
島から採取した細菌に、突然変異を引き起こす可能性を発見。感染した生物の遺伝子情報及び、物体の原子構造に変化が起きたのを確認。政府機関GHUより、周囲の島を焼き払うよう政府に呼びかけられたが、国際機関からの強い反発により断念。
二○三二年九月三日。
島民の隔離区域に、猿に似た大型の生き物が確認される。軍の出動により捕獲に成功。死傷者十二名。死体は研究所に送る。
二○三二年九月三日。
政府機関GHU、細菌による突然変異が人類にも影響を与えると発表。だが、多くの専門家に否定される。同日、研究所から保管されていた細菌が盗まれる事件が発生する。
二○三三年四月十四日。
アメリカ、テキサス州北部にて、若者の集団が互いに共食いしあう事件が発生。薬物による事件とみて警察は調査を開始。
二○三三年六月七日。
世界中で奇妙な事件が発生する。
ブラジル、アマゾナス州にて、街一つが一夜で森に飲み込まれる。
ロシア、カムチャツカ地方にて、手足の生えた魚が捕獲される。
カナダ、ケベック州にて、銅像が声を上げて発狂する。
中国、北京市にて、住宅街の建物が球状の塊に変貌する。
日本、青森県にて、歩行する電柱を確認。
二○三三年七月七日。
政府機関GHUが世界に向けて緊急声明。今、世界中で起きている事件は去年五月にセアル島にて発生した細菌に起因すると発表。それに向けたワクチン開発の為、世界各国にて臨床試験のモニターを募集。参加者には二十万ドルの報奨金が約束される。参加者の中には借金を抱えた者、親に売り飛ばされた者も多く、政府による人身売買だと非難される。
二○三四年十一月二十日。
世界中で人間の変異が確認される。