鬼だってやる気が無いことだってある。
さてさて、実家から車で依頼者のところへ行く車内。私は運転席に、サシャは後部座につけた棺桶で顔のところだけ開けて入って横になっているという謎の乗り方である。
「なーなー…本当に行かないといけないのかー?」
「なんですかいまさら。依頼者の人は困っているんですよ」
「それはわかっておるのじゃがぁ…どうしても、どうしてものぅ…」
「まあ、いつもそうですよね。あれですよ?これ以上文句言うと窓開けますよ」
「いたいいたいになるのじゃ!……うぅ…」
「まあ、そのあれですね。終わったらちゃんとご褒美あげますから」
「…本当じゃな…?」
「本当です」
こうやって行くまではだいぶブーブー言っているが、依頼には真面目にこなしてくれるからその点は全然困っていない。むしろサボるほうが何かこう病気なんじゃないかって思うぐらいである。それでもぶーぶーはいうからあれなんだけれども。
「なんじゃ、ぶーぶーいっちゃいけないのか」
「あんま言わないでほしいな、とは思っては居ますが。言うなとまでは言いません」
言うなといってへそを曲げられても困るわけで。そうならないために私は色々と考えているのだ。
いやまあ、このままだと筒抜けなわけで。そうすると下手するとへそを曲げられそうだけれども。
「ふむ、まあ、その気持に免じてへそをまげるのはやめてやろうかの」
「助かります」
まあ、今日のところは避けられてよかったよかった。機嫌悪いとへそ曲げるからね、ほんと。
…まあ、そうならないように、途中でコンビニへ寄ろう。
「そうじゃな。トマトジュースもきれそうじゃからの」
「そうなんです?そういうことは早めに行ってもらえると」
「うむ、すっかり忘れておった。すまんな」
「………まあ、いいです」
「そっちがへそ曲げるのじゃ?!ごめんなさいなのじゃ、機嫌直してほしいのじゃ」
「別にまげてませんしー?」
いっつもなんかこうやられっぱなしだから、たまにはお返しを、と。思っただけである。