鬼だってお断りをしたいことだってある
「だっつ、だっつ、だっつさん~♪」
ご機嫌でダッツを食べているサシャ。いや、ほんと子供舌というか幼女舌っていうか。食べてるものは決してそんなに安いものではないので問題ではあるんだけれどね。そうそう買ってられないというか。
いや、まあ。そういう教団とかを支援しているんだからとても金持ちなんだし使えっていう意見もあるのはわかるしそのとおりだとは思うんだけれど、そういうちょっとした我慢がお金を生むっていうこともあるしそうそう使っていられないっていうのもわかってくれると嬉しい。
お金使ったほうがお金を生むっていう意見も私の中にあるんだけどね。毎回、頭を悩ませるわ。
「毎回ダッツさんが良いのじゃ」
「心を読むのやめてもらえますかー?」
「むぅ。しかし、奈緒は契約者じゃからな。自然に流れてくるのじゃ」
「あー。じゃあ、私が呼び捨てしてるのも筒抜けですか」
「そうじゃな。…いや、おかしいじゃろ。なんで裏でもちゃんと【様】呼びをせんのじゃ」
「面倒」
「えっ」
「面倒だからです」
「二回言わなくてもわかるのじゃ!」
思わず手に持ってるスプーンを落とすサシャ。長いこと一緒にいると態々「様」呼びが面倒くさくなってくるというか。私が生まれてからずっと一緒、学校通ってる時は別だけど、だったからね。
「もしかしてあれじゃな?第四の壁超えておるな?」
「…内緒です」
「いや、説明口調でモノローグはそれぐらいしかやらんじゃろ」
「確かに」
吸血鬼って割と超越者なところあるからね。そちらの世界ももちろん知っている訳で。そして…、そして図らずもサシャの契約者になった私もそういうことで。
ちゃんと自己紹介は、まあ、後々。とりあえず今は私とサシャの関係は私が立場の上の出資者兼サシャが立場が上の契約者っていうなんだか複雑なような単純なような関係性ってことだけが伝わってくれれば。
なんていってたら、私のポケットに入っていた携帯がバイプで電話が来たことを教えてくれる。私はそれを取り。
「はい、もしもし。こちら、速水古物…、あ。お疲れさまです。サシャ様ですか?今はダッツ食べてますが。代わります?……、あはは、そうですね。じゃあ、私が受け付けますので、ええ」
「はっ…」
「だめですよー、サシャ様。それ食べたんだから逃げられませんよー?…あ、はいはい。そうです、逃げようとしてたので捕まえておきました。じたばたしておりますが」
「はーなーすーのじゃぁー!私は先週きちんと働いたじゃろー!?もう1ヶ月は働かないのじゃぁ」
「あ、聞こえました?後できちんと言っておきますので、ええ。はい、はい。そうですね、詳しい話はいつもと同じように」
「いーやーじゃぁー!」
ジタバタするサシャの首根っこを掴みながら、私は携帯から耳を離した。さて、仕事だ、仕事だ。