鬼だって物を欲しがる
「うぅ…こたつくん…」
「はいはい、また次のシーズンにですよ」
めそめそ、とするサシャ。なんかこう、猫を飼っているような気がしてきた。猫はここまでわがままを言わないけれども。300年生きてて猫よりわがままな吸血鬼。
と、まあ、多分猫も人に化けたらこんな感じなのかもしれないから、そこまで強くは言えないのだけれども。さらに言えば人間もそうかわらないんじゃないかな、って思う。わかんないけど。急に手のひらを返すようであれだけどね。
「む?どうしたのだ?私の顔をジロジロ見て」
「いや、サシャ様は可愛らしいな、と思っただけですよ」
「む?そうか?どんな人間も魅力でイチコロに出来るか?」
「できるかもしれないですねー」
多分サシャの思うようなイチコロと私が思うイチコロとは違うのだろうけれど、そう言っておけばそうかそうか、と機嫌を直してくれるのでそれで機嫌をとっておくのである。いつまでもめそめそされてもこっちも気が滅入ってくるからね。
だからといってこたつくんのシーズンは終わったのだ、仕舞わないといつまでも居座るからね。こういうのはちゃんと季節季節、があるのだ。最近はその季節がとっても崩れ気味だから困りものではあるのだけれど。
こたつをしまい終わったリビングを見て、私はそう思うのだ。
「さて、サシャ様」
「なんじゃ?」
「こたつくんを無事しまえたので、お買い物へ行こうとおもうのですが」
「アイス、アイスクリームがほしいのじゃ!」
「さむさむの日があるかもしれないのに、アイスをご所望です?」
「それは、それ。これはこれじゃ。本当はこたつくんに入りながら食べたいのじゃが」
あ、やばい。こたつくんに気が戻りそうだ。
「そうですね、こたつくんを我慢できたら、ちょっとお高いアイスを買いましょう」
「ダッツさん!?ダッツさんかってくれるのかの!?」
「そうですね、我慢できますね?」
「するのじゃ!ダッツさんのためなら、こたつ君とさよならできるのじゃ!」
すごいダッツさん。こたつくんとの別れを決意させた。いやまあ、ダッツさんもこんなことに使われるとは思ってないんだろうけれども。
とはいえ、色々とうまく行ってよかったよかった。