鬼だってだらける
日本、それはまた不思議な国である。神様やら悪魔やら、人間やら妖怪やら色んなものを飲み込んでは自ら達の話にしてしまう。
そんな日本という国で。
「いやじゃいやじゃ!まだこたつくんは片付けたくないのじゃ!さむさむのひだってあるから、こたつくんはまだ現役なのじゃ!」
吸血鬼、と呼ばれる鬼が、こたつに入ってダダを捏ねていた。なんだこの状況。
…私、速水奈緒はこの3月、高校を卒業したピッチピチのJD…ではない。いや、高校卒業はしたんだけど、その後は諸事情により実家の古物商を引き継いでいる。2月の時点でまあ、とっていたんだけど本格的に動きたのは3月下旬から4月上旬の今になる。
そして、その私が古物商を引き継ぐ理由となったのが…。いまこたつにくるまって駄々をこねている、吸血鬼、サシャ・ラーズニチュコバー、その人である。
金髪、青目、少女らしい体型、そして、鋭い牙。…まごうことなき吸血鬼である。西欧にあるなにか偉い集団に所属している。…家はそこに出資しているし、偉い集団の人が来るたびに家を貸している。でもって、私が高校を卒業するから親が家をあけることになり、それを引き継ぐために私が古物業を、ということになったのだった。
…んでもって、サシャはもう私の家に300年ほどお世話になってるらしい。曾祖母の時期からである。こう聞くと完全に吸血鬼なんだけど、裏付ける証拠はない。写真には映らないからね。…いやおばあちゃんの写真とか不自然に場所が空いている写真があるから、底にいるんだろう、っていうことはわかる、はわかるんだけども…。
「こたつくんと私は一心同体!だからこたつくんを片付けるということは私を片付けるということ!それは」
「ウチ、出資者なんでうちのほうが立場強くない?」
「うぇっ!?」
「ということでこたつを片付けます。布団をおひさまに当てます」
「まっ、まつのじゃ!!!布団くんが灰になっちゃうのじゃ!」
「ならないならない。サシャ様じゃないんだから」
「私も灰にはならんが!いたいいたいにはなるが、灰にはならんぞ!?」
「いたいいたいにはなるんだ…」
なんかサシャ(呼ぶときはサシャ様って言わないと怒る)の口調が完全に幼女のそれです、ありがとうございました。
…任務に行ってる時とか、満月の夜のときは、かっこいいんだけどね…。