表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

担任の召喚


 みなさん、ちょっと聞いてくださいよ。

 朝登校してたらとんでもないものを見ちゃったんですよ。なんだと思います?



 なんとね、ネコが……

 目の前で召喚されていったんですよ……。

 ただ、校内を横切ろうとしたノラ猫だよ?



 おい、異世界?

 お前さん、ネコの手も借りたいのか?


 いまは総合学習の時間だ。

 担任が異世界へ召喚された際の注意や、相手への対応の仕方、理不尽な扱いを受けた時など、過去に召喚された勇者の文献をもとに話している。


 召喚されたこともない俺にとっては、とても胸躍り想像力を掻き立てられる授業だが、いまいち朝見た光景を思い出して悶々として身が入らない。



 そして、はっとする。


 もしやもしやもしや。

 異世界に召喚されるべきは俺で、ネコは座標がズレた何かで間違って召喚されたのでは?

 俺が座標を固定していれば、異世界へ召喚してもらえるのでは????



 だって、

 どう考えてもネコはおかしいもんね!?

 戦えないもんね!?



 授業中にとんでもないことに気づいてしまった俺です。そろそろ俺の番だと思ってたんだわー!ははははー!


「はい、じゃあグループごとに意見をまとめようか。プリントを配りますねー」


 そんな俺をよそに授業は進む。動かないようにしようと思ったらこれだよ!

 気付いてしまったら、たとえ授業中であっても移動は憚られる。俺を中心に人が集まらない、求心力の無さを呪う俺です。


「おい!田中!お前こっちのグループだろ?」

「田中くん?席移動して?」


 席を動かない俺に、クラスメイトたちが訝しげな視線を向ける。

 なので、首脳サミットばりのとても深刻そうな顔をして、俺は言った。


「先生、おれ、席から動けない呪いをかけられているみたいです」


ざわっ


 普通だったら「なんそれお前頭大丈夫?」案件だが、この教室内は異世界帰りの元勇者ばかり。こう言っておけば俺は席を移動しなくてもいいはず。


 しかし……


「なんだって?」

「だれ?だれが呪いなんて!」

「おい田中、お前いじめられてるのか!?」

「許せない!田中くんをいじめるなんて!勇者の風上にもおけない!」

「待ってて、田中くん!呪いを解くのが得意な術者が後輩にいたはずよ!」


 うっわ、勇者たちの正義感なめてた。

 ごめんなさい。

 しかも即座にいじめられてる認定されてるの悲しい。



「あ、うっそ、動くわー!めっちゃ動くわー!なんか足が痺れてたっぽいわー!」



 あははははー!

 俺の発言(棒読み)と、席を立って大丈夫アピールをしたことでほっとした表情を見せるクラスメイトたち。


 おれの良心が悲鳴を上げた。


 自分の座標も固定できないし、いらない嘘をついて自尊心を傷つけるという負の連鎖。正直にこっちでやろうよー!って呼んでみればよかった。



 ウソヨクナイ。ダメゼッタイ。



 ふと目が合ったスズキ。

 しかし、ぱっと気まずそうに目を逸らされる。


 おいスズキ。さては呪いなんてないって気付いたな?!この高スペックリア充め!!!

 聖女とケモミミ美少女を異世界からテイクアウトしたスズキだ。呪いの有無くらいは見ただけで判断できるのかもしれない。ぐぬぬ。



 キーンコーンカーンコーン



「じゃあ、まとめたプリントは前に提出してから休んでくだ


カッ


 突然教室を包む光。

 クラスメイトにも俺にとっても慣れたものだが、おい、まさか?ごしごしと目を擦って、教室を見回す。


 担任が、消えた……。



「えええ!???先生!!!?」



 騒然となるクラスメイト。どういうわけか生徒しか召喚されない仕組みになっているはずなのに、担任の先生が召喚されてしまった!

 どうなってんだ!?


 生物を担当していた担任。

 ぱっと見はメガネでさえない印象のだったが、優しかった担任。解剖が得意で、やたら人体の急所について熱弁を繰り広げていたことを思い出す。

 そして、滋養強壮に良いと謎の薬を突然調合し始めていたことも。


 異世界で薬作ったり、治癒師ヒーラーとしての能力に目覚めたりして、穏やかに世界を救うのかなあ……。

 もしくは、優しさ故に戦争の多い王国から逃げて、まったりスローライフ始める系かもしれないなあ……。


 異世界へ行ってしまった担任の未来を勝手に思う俺です。

 座標の固定すれば俺が……とか言ってたやつ誰だ!?ずっと固定されてたはずの担任が召喚されたじゃねーか!バーカ!



 きっと担任は、持ち前の優しさと生物に精通したスキルを駆使して ツンデレ王女様の不治の病を治したり、クールな女騎士をピンチから救ったり、腹黒なエルフの村の壊滅を阻止したり、天然な獣人娘のお腹を満たしたり。などなどなど!

 ハーレムを築き上げる様が想像できた。できてしまった。


 涙が止まらない。


 おい、異世界よ。

 そろそろおまえ呼び出しすぎじゃないのか?日本人の適応力は凄まじいと思うけど、そんなに戦力不足なのか異世界よ。

 そんなに何人も呼び出さないといけないほどピンチなのか?


 お願いだから俺も呼んでくれ。

 呼ばないのなら、いっそ潔く滅んでくれ。



 きょうも俺は召喚されない!涙



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ