お母さんの召喚
異世界へ召喚されない日々が続いておりますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
俺は、
「田中くんは、授業態度は真面目で成績も良いのですがもう少し周りとの協調性を……」
「あらあら、カズキったらもう人見知りで……」
どうも、田中カズキです。
ただいま三者面談の真っ最中です。初めてフルネームが出ましたね。
三者面談の真っ最中だが、俺は声を大にして言いたい。
協調性ってムチャ言うなよ!?クラスメイトが毎日入れ替わるような場所だぞ!??
親友との絆すら打ち砕かれたんだぞ!?
これはもはや学級崩壊だろ!??
金八先生だって手に負えんわ!バカちんが!
母と担任の容赦のない言葉の暴力にさらされ続けて、SAN値が削られる今日このごろです。
「クラスには異世界への召喚が続いて勉強が遅れている子もいるのですが、田中くんはそのへん召喚がまだなので安心して下さい」
ぜんぜん嬉しくない。
はやく召喚されたい。
「最近は周りに負けないように体力作りもしているのか、体育も成績が上がっていますよ」
「あらあら、最近どうりで早く家を出るなと思っていたんですよ」
先生よけいなこと言わないで。
お母さんには内緒にしてたのに。ぐぬぬ。
ほのぼの系の母親と、ほのぼの系の男性教諭。あらあらうふふ、そんなそんな、なんて。俺のプライベートを暴露しあい、平凡な未来図を2人で描いている。息子、田中にとっては全然和めない状況だ。
俺は、非凡に、異世界へ召喚されたいのに。いやむしろ召喚が当たり前の世の中なのだから、召喚されていない俺はもしや非凡なのか……?それはそれでまったく嬉しくない。
「では、そろそろ……」
「はい。これからもお世話になります……あら?」
やっと解放の時。そう思って椅子をひいた時だった。母を中心に小さな魔法陣が突如キラキラとあたりを照らし出す。
「ちょ!お母さっ」
「田中さん!」
「あらあら」
カッ
手を伸ばした田中を拒絶するように、魔法陣は強い光を放ち、忽然と消えた。母と一緒に。
「え、ちょ、うそ……?」
母消えて
霞む異世界
残るおれ
お母さんが異世界へ召喚されてしまいました。
あらあらあら。なんて言いながら白い光の中に消えてしまったお母さん。煮物料理は得意だけどハンバーグを上手に丸められないお母さん。
おかあさーーーーーーーん!!!!!
俺を……っ俺を置いて行かないでー!!!!!
母へ伸ばした手が何もない空を掴む。こんなにも虚しさが込み上げたのは、異世界召喚に憧れて自主トレを始めて以来だよ!最近だな!
ねえ、あったじゃん……?母親と一緒に異世界行くアニメあったじゃん……???
息子と一緒に異世界へ行って母のほうがチートで超強いみたいな話あったじゃん?!
なんで!?なんで母だけ?!俺は?!
息子もつれてけよおおおおおお!!!
「敷地内だからとはいえ、本当は生徒だけが召喚されるはずなんですけどね、おかしいなー……」
母が座っていた椅子を見つめながら鼻をすすり始めた俺を見て、担任がなんとも言えない表情で背中を優しく撫でてくれる。
間違って母を連れて行かれた悲しみではなく、自分の不運を呪う田中。
きょうも俺は召喚されない!
お母さんを返して!
その後。
家のことがありますから……。と国王に直談判したらしく、1週間ほどで異世界から帰還したお母さん。
異世界でとんでもチートな力を手に入れたお母さん。敵の基地を爆砕し半壊せしめたあと、母の味で現地の将軍の胃袋を掴んでプロポーズされたらしいが、それはまた別のお話。




