親友の召喚
ノボル君のラブラブぷりを見て羨ましくなる田中。だがなすすべはない。
俺だって彼女ほしいよ?
けどみんな異世界で特殊な能力手に入れてんだよ?
「せんせー!小林さんが握力計粉砕しましたー」
「ごめんなさい!軽く握っただけで壊れるなんて!恥ずかしい!」
握力計粉砕する女子に、どう立ち向かえと?
みんな目に見えて身体能力は上がってるし、魔法が使える生徒だっている。
俺立ち向かったら死ぬじゃん。
アタックしようにも向こうのHPが高すぎて
俺の攻撃力じゃ羽虫を払う勢いじゃん。
女子たちの強さに心が折れかけていた、そんなある日。
「タナカ!戻ってきたぞ!」
「スズキ!」
教室に入ってきた人物を見て、思わず笑顔がこぼれた。
スズキタケル。
半年前に異世界へ召喚された、俺の数少ない友だち。親友だ。
「やっと戻って来られたのかよ!」
「おう!時差があるとはいえ、大変だわ異世界」
苦笑いを浮かべる友人。いつもなら異世界の話をするクラスメイトに歯軋りをしたくなるものだが、彼は親友だ。素直に帰還が嬉しい。
思い返せば、高校に入学したばかりの頃。同級生が次々と消えていくなか、スズキと俺、あとは数えるだけの人数しか異世界未経験者がいなくて。
スズキとは、はやく俺たちも異世界行きてえなあ。と妄想を2人で膨らませたものだ。
そういえば、どちらかが先に異世界へ行くようなことがあっても、恨みっこなしな!俺たちはずっと親友だぜ☆なんて恥ずかしい会話もあったなあ。
過去を懐かしみながら、そうだ帰還祝いに何か奢ってやるか、と思いつく。その時に、スズキの異世界譚でもゆっくり聞こう。
なんだか少し顔つきが凛々しくなった親友を見ながら、感慨深い気持ちになっていた、
「スズキ、きょうの帰りにーー
「タケルさまっ!お迎えに来ましたわ!」
ガラッ!と勢いよく教室に入ってきた美少女が俺の言葉を遮り、迷うことなく一人の男子高校生に抱きつく。
俺なわけはない、スズキだ。
「スズキィィィイイイイ!!!??」
思わず怨嗟のこもった声を出してしまうのも仕方がない。
入ってきた美少女は、きらきらと流れるような銀髪に、意志の強そうな青い瞳。透き通るような白い肌は見るからに滑らかで。
その体はズバリ、ぼんきゅっぼんだ。
ほかのクラスメイトも呆然としている。異世界人が渡ってきた記録なんてアニメ以外では聞いたこともない。
「エメリア、どうして……?ダメじゃないか。君は聖女なんだから!国を救うんだろ?!」
聖女だ、と?
「私は、私は……っ!タケルさまがいない世界など……救っても意味がないのです……」
大きな瞳に涙をたたえて、スズキに縋り付く美少女。スズキ、ほんとお前そこ代われ。
「でも、君は……!あの国でたった一人の聖女じゃないか……僕のために、そんな……」
「タケルさま、タケルさまは迷惑ですか?私は、あなたにこの体のすべてを捧げた日から、あなただけです!あなたのために生きたいのです……!」
ちょいいいい!!!!!
おまっ!スズキ!おまっ??!えっ、体のすべてってそういうこと!??
頬染めて2人だけの世界に浸ってんじゃねーよ!
ここ教室だかんな!
スズキ異世界いくまでは俺と同じ童貞だったじゃん??!!!
なに大人の階段のぼっちゃってんの!??
なにナチュラルに聖女の腰に手を回してんの!?
戦争中の国から聖女テイクアウトしてんじゃねーよ??!
「タケル!わらわも来たのじゃ!」
「ジュファ?!」
けっ、ケモミミだとーーーー!????
そこへ突然乱入してきてスズキに飛びつく和装姿の美少女。
しかもケモミミだ。
ネコっぽい三角耳がぴこぴこと揺れている。それだけで可愛いが止まらないのに、極め付けは着物からのぞく豊満な谷間。急いで来たのか足元も着崩れていて。たまにのぞく滑らかな長い足がまたなんとも扇情的だ。うしろで一つにまとめられた、黒く艶やかな髪も色っぽさを強調している。
一足先にスズキにアプローチMAXだった聖女と、急に現れた和装美少女。何やら修羅場ってまいりました。
「ジュファ!あなた一体何しにきたの!?一族を守ると息巻いていたじゃない!」
「おぬしこそ!国を守る聖女がこんなところで何をしておるのじゃ!?」
いまにもスズキを巡ってキャットファイトが起こりそうだ。
そして俺、田中は、目の前で繰り広げられるスズキ取り合い合戦に歯軋りが止まらない。
ひたすらに親友のハーレムが憎い。
おまえ、異世界いくまでは俺と同じモブ属性だったじゃん!コンチクショー!
血の涙を流す俺を見て、スズキが苦笑いした。
「な、なんかごめんな、田中……」
ごめんで済むなら警察はいらねえ!
「スズキの裏切り者ーーー!!!!」
「ちょ!?田中!??」
愛と欲望の前に、友情なんて儚いものだった。
俺は泣きながら教室を飛び出した。
きょうも俺は召喚されない!!!血涙。




