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18.異世界に転生したら彼女とのイチャイチャ尽くしだった件②

後書きにこの物語の舞台となる「敷栲市」の地図を載せておきます。

 デモンガルド。そこはヒトならざるものたちの楽園。

 ドウェラーは悪魔の仮装をしたうえでワンパのマークが載った服を着ているし、アトラクションの見た目も不気味なものが多くなっている。

 その特徴ゆえに小さい頃にここを怖がっていた子供たちが中学生になった途端大好きになるという現象が日常茶飯事なのだそう。

 魔界ということで、中学二年生が好みそうなショップもあるのが中学生人気に一役買っていると俺は睨んでいる。


「私、ここちょっと苦手なんですよね……」

「でも去年はずっとここにいたんじゃ?」

「巻斗くんがいるから仕方ないじゃないですか。ちょっとは考えて欲しいものです。自分にずっとついていってる人がいるって」

「知らなかったんだから無理だろ」

「ふふ、冗談ですよ」


 とはいえ、苦手ならあまり長居は出来ないよな。


「スルーして次行ってもいいけど。どうする?」

「いや、寧ろ巻斗くんがいないとこういう所来ないと思うので、せっかくだし見てみたいです」

「わかった、じゃあ行くか」


 栞の望みを叶えてやるため、デモンガルドを物色することに。

 さすがは魔界。呪いのグッズやお化け屋敷などが至る所に立っている。

 中にはゲテモノ専門の料理店まであった。


「ふむ、ワームの素揚げに鬼蜘蛛の丸焼きか……」


 メニューの内容はちゃんとファンタジー寄りになっているみたいだ。しかし見た目のキツさは食品サンプル越しでもありありと伝わってくる。


「ん?」


 裾を引っ張られた気がしたので振り向くと、眉をひくつかせた栞がゆっくりと首を横に動かしていた。


「いや、ちょっと立ち止まっただけだよ」

「食べたいのかと思いましたよ……」


 ホッと胸を撫で下ろす栞の手を引き、別の建物へと移動した。


「そろそろどこかの店に入るか」

「そうですね、お土産とかも見たいですし」


 そう言って古めかしい建物の中へと栞を連れ込んだ。


「あの……巻斗くん?」

「どうかしたか?」

「どうってことはないんですけど、ここがお店じゃないように見えるのは私だけでしょうか……」

「実際店じゃないしな」


 古めかしい建物というのは、「スペクターネスト」というお化け屋敷のことだ。

 これは俺も入ったことがないので、少し楽しみ。


「……私、騙されたんですか?」

「うん、ごめんな」

「何やってくれてるんですか!」


 さすがに怒らせてしまったかな。でも栞をお化け屋敷に誘うにはこの方法しかなかったと思うんだよね。


「……もう、責任とって守ってください」

「任せろ」


 シュンとした栞もやっぱりかわいい。絶対離すまいといった感じで俺の腕をぎゅっと抱きしめている。


 荷物をアイテムボックスに預けて、入り口へ。

 中は真っ暗で、ほぼ何も見えない状態だ。こんなのどうやって進むんだ。

 と思った瞬間のことだった。


「うわぁっ!」

「えっ!?」


 突然真横から光の玉が現れた。


「あの、ワンダラー様。火の玉をお忘れですよ」

「あ、なるほど……」


 どうやら照らす用のアイテムがあったようだ。火の玉を持つとうっすらと周りが見渡せるようになった。


「巻斗くんも怖いの苦手なんですか?」

「いや、得意なほうだけどね」


 実際、それ以降は何も驚かずに終わってしまった。

「ハァ、ハァ……驚く、ポイント、ズレてませんか?」


 スペクターネストを出た瞬間、栞が口をとがらせた。

 叫び疲れたのか息切れしているので、背中をさすりながら答えた。


「暗闇から突然何か出てきたらそりゃ驚くだろ」

「最初のやつ以外もそういう仕掛けばっかりだったんですが?」

「最初ので耐性ついたからさ」

「耐性付くの早すぎません? ゲームキャラなんですか?」


 正直に言うと最初は気が緩んでたっていうのがデカい。最初のハプニングのおかげで気が引き締まり、なんとか全部驚かずに済んだ。

 目の前に急にチョンチョンが現れた時は危なかったな。思わず声が出そうになってしまった。チョンチョンというのは大きな耳で空を飛ぶ首だけ人間のこと。

 栞の方はというと、ずっと俺の腕を抱きしめながら驚き続けていた。


「でも、守ってくれてありがとうございます。巻斗くんがいなかったら動けなかったかもしれませんから」

「ま……まぁな。遊園地は得意だし」


 確かにずっと庇い続けてはいたけど、そもそも入るように仕向けたのは俺なんだよな。良心が痛む。


「もう次行きましょう、次!」


 半ば栞に引っ張られるように移動していく。どうやら建物の近くにいるのも怖くなったらしい。悪いことしちゃったな。


 建物を抜けると、広場が見えてきた。


「空中ブランコとかもあるな、あれはどう?」

「うーん、あれはちょっと気持ち悪いですね……」


 俺が指さしたのは「ヘカトンケイル」という空中ブランコ。ヘカトンケイルというのはギリシャ神話の巨人で、五十の頭と百の腕を持っている。その腕が全てブランコになっているのがアトラクションのヘカトンケイルだ。確かに気持ち悪いな。


「魔王城はいやだろ?」

「そうですね、避けてくれると嬉しいです」



 広場の奥にある魔王城は、最恐ジェットコースターと最恐お化け屋敷の二台アトラクションがある施設。どちらも苦手な栞は近寄りたくもないだろう。


「だよなぁ」

「なんか、ごめんなさい。私のわがままで行けるところを制限しちゃって」

「いや、気にしないで。うーん、魔王城がだめなら、じゃあ『ドラゴンズライド』は?」

「それなら、まだなんとか」


 「ドラゴンズライド」はパーチ山の麓にあるジェットコースター。園内で二番目に怖いジェットコースターなのだが、ドア・イン・ザ・フェイスにひっかかったのか?

 ドア・イン・ザ・フェイスというのは大きい要求のあとにちょっと低めの要求をするという交渉術のこと。さっきの件もあるので栞のことは騙したくないのだが、話の流れでやってしまった。

 

「本当にいいの?」

「うーん、巻斗くんと一緒ならいける気がします」

「よっしゃ、じゃあ決定な!」


 ドア? んなの勝手に挟まっとけ。「一緒なら」とか言われて行かない男がどこにいるかってんだ!



 デモンガルドを抜け、現在パーチ山の麓で列に並んでいる。列が短くなっていくにつれて、栞が少し不安そうな表情をするようになってきた。


「大丈夫。俺がついてる」

「乗るまでぎゅってしてていいですか」


 答えを待たずに抱きついてきた。俺から甘やかすことは多々あれど、栞から甘えてくることはなかなかないのでジェットコースターさまさまである。


「いい匂い……」


 汗の臭いしかしないはずだけどな。まぁ安堵の表情を浮かべてるし気にしなくていいか。


 そして俺たちが乗る順番に。ドラゴンズライドは龍の背中に乗って竜の巣探検をするというジェットコースターだ。


 火口を目指し、龍は順調に山を登っていく。


「うぅ、今更になって怖くなってきました……」

「落ち着いて。叫ぶことに集中すれば怖さは薄まる」

「はい……」


 道中にはワームやワイバーンなどが山にしがみついているのを観察できた。奥には虹色の蛇がアーチを作っており、まるで本物の虹のように見えた。火口近くにいた龍人はこっちにお辞儀をしてくれた。礼儀正しい龍もいるものだな。

 龍人とさよならし、そのまま火口へと突っ込むのかと思いきや、もう落ちるというところで龍が動きを止めた。

 宙ぶらりん状態での待機。火口がどれほど高い場所にあるかをありありと見せつけられているようだ。


「無理無理無理無理! 下ろしてください……」

「もう遅い」


 俺がそう言った瞬間だった。突然龍が活動を再開した。つまり、火口へ真っ逆さまということだ。

 

「きゃぁぁぁぁあああぁぁあああ!!!!」


 手すりにしがみつきながら叫び声を上げる栞。その声を聞いて、俺と一緒なら乗れると豪語してくれたことを思い出し……。


「栞、好きだぁぁぁああああああああ!!!!!!」


 居ても立っても居られず、そう叫んでしまっていた。


 チラッと隣を見ると、耳まで真っ赤にしながら叫んでいる栞がいた。

 ちゃんと聞こえてたんだな。


「栞、大好きだぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!」


 火口の内側はまさに竜の巣といったところ。多頭龍や機械の竜、東洋西洋さまざまな竜たちが生息しているようだ。

 俺たちの乗る龍は滝口から外へと脱出した。勢いそのままに虹蛇のアーチを潜り、旋回して今度は虹蛇の背中を渡る。


「栞をぉぉぉぉおおお! 一生、愛しまぁぁぁぁああああああす!!!!!!」


 そのまま一気に滝壺へと急降下。滝の裏にある洞窟から火山の内側に侵入し、減速しながら出口へと向かって行く。隣からなにやら「たらし、たらし……」という念仏のような音が聞こえてくるが、あえて聞こえないふりをした。


「あの、巻斗くん?」


 隣から鋭い視線を感じる。あまり見ないようにしよう。


「こっち見てください」

「はい」


 語気が強かったので思わず従ってしまった。


「気持ちは嬉しいです。気持ちは。でも、叫ぶのはやめてほしいです」

「ついやっちゃった」

「ついって、もぅ。こっちは恥ずかしくて頭がパンクしそうだったんですから」


 そう言った後、栞は小さな声で付け加えた。


「まぁ、怖さは薄れましたし、一生……えっと、あれは素直に嬉しかったんですけどね……」

「栞、好きだ」

「まだ言いますか!」



 ドラゴンズライドを降りた俺たちは、休憩がてらソフトクリームを買うことにした。


「いらっしゃい! なんにしますかい?」

「ソフトサーブ二つで」


 ワンパではソフトクリームのことをソフトサーブと呼んでいる。ソフトクリームは和製英語なのだそう。


「大きさはいくつですかい?」

「俺はMかな……栞はどうする?」


 腕にしがみつく栞に問いかける。ドラゴンズライドを降りてから、栞は俺の腕に抱きついて離れようとしない。顔まで埋めてしまっている。


「同じので」


 了解、と顔をあげた時、視界の隅に気になる人影を見つけた。


「L一つとM一つでお願いします」

「はい、毎度ありぃ!」


 料金を払い、ソフトサーブを受け取った。にしてもこのドウェラーさんなんで江戸っ子風なんだ?


「栞、これ持っててくれない?」


 コクリと頷き、栞が腕から離れた。ちょっと名残惜しい気もするが、栞にLの方を持たせて人影の方へと向かう。


「えーと、生徒会長ー!」

挿絵(By みてみん)


これがNTR阻止の舞台、敷栲市。巻斗達はこの街を駆け巡りながらイチャイチャしていきます。


③以降はちょっと遅れると思います。投稿する努力はしてみますが、一ヶ月以上音沙汰がなければ「あぁ、間に合わなかったんだな」と思ってください。

これから一年間は投稿できない状況になるので、また待ってもらうことになりますがご了承ください。そう、またなんです。

一年後、本格始動します。それまでしばしのお別れということで。


戻って来た時に感想とか評価とかブクマとかがいっぱいあったら感動すると思うので、その暇があればよろしくお願いします。

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