〜ありがとう〜
(誰...?)
深い水の底、私は閉じていたはずの瞳を一瞬だけ開けた。
一眼だけ目に移ったのは良く見慣れた人物。
その人は私を湖から引き上げ、心臓マッサージと人工呼吸を行ってくれた。
「死...な!ノ...!」
意識が朦朧としていた私には、その人の声が聞こえない。
何か言っているのはわかるが、それ以上の事はわからないでいた。
(お兄...ちゃん...)
少しずつ意識が戻って行くと、私の瞳に映ったのはお兄ちゃんでした。
「ノーレ!!」
ずぶ濡れの服装を脱ぐ様子もなく、私の蘇生を優先してくれています。
「見つかったのか!?」
エルシーさんの声も聞こえてきました。
「エルシーさん!ノーレの体温が著しく低い!、木を集めてください!」
「わかった!、でもその前に...」
彼女は風の魔法で冷たい空気が私に当たらないように配慮してくれました。
「それでちょっとは寒さをしのげる筈だ!、私が木を集めてくるから準備をしておいて!」
「わかってます!」
お兄ちゃんはそう言いながら近くにあった木を擦り付け合い摩擦で火を起こしてくれました。
そこにエルシーさんが集めてくれた木の枝を注ぎ込み、風の魔法で一気に燃焼させました。
暖かい小さな火がここに灯ったのです。
「ノーレ!!」
今度はお母さんの声が聞こえてきました。
そして私を見るや否や、暖かい上着をかけてくれました。
そして服を脱ぎ去り、その服で冷たい水滴を少しずつ拭きとってくれます。
まだほんのりお母さんの体温が残っている上着と服はとても温かく、気持ちがいい...。
皆の必死の看病のお陰で、私はようやく口を動かせるようになりました。
「お兄...ちゃん...、お母...さん...」
「ノーレ!!」
私が言葉を発した瞬間に、3人ともが私を食い入るように見てきました。
「どうして...きてくれたの...?」
私は勝手に家を飛び出して森の奥に一人で向かったのですから、お兄ちゃん達が私を探しに来る必要なんてない筈なのにここまできてくれた事に心が震えます。
皆は私がそう呟くと、何故か笑っていました。
「家族だから当然だろ?、お前は俺の妹で、母さんの子供なんだから...」
「私は居候みたいなもんだし、宿に泊まる事を考えたらこのくらいの事しなくちゃいけないよね」
「あなたは母さんのたった一人の娘なの...、そんな大切な子が居なくなったら心配するに決まっているでしょう」
皆の声を聞くと胸が熱くなり、涙が溢れて何かが満たされて行くような感じがする。
「皆ありがとう...、私...もう二度と家出なんてしないから許して...」
そう言った時、皆は私に微笑んでくれていた。




