〜尋ね人〜
俺がいつものように畑仕事をしていると、妹が俺を呼びにわざわざ畑まで来た。
何事かと思ったが、どうやら家に誰か来てたまたま彼女しかいなかったのでその人を俺の所まで呼んできたらしい。
てか母さんが家にいないのは珍しいな...、しかもノーレを置いて出かけるなんて不用心にも程がある。
俺がため息を吐きながらその尋ね人からの話を聞いてみる。
「おおっタルト君!、お父さんはそろそろ戻られるか?」
「いえ、父はまだ帰っていませんね」
そういえばタルトの父さんを見たことがない。
1週間以上も家を放り出すなんてあり得ることなのだろうか?、いや母さんの様子を見る限りそれ以上の月日が経っているようにも思える。
俺がそのことについて考えていると、その人は肩をがっくりと落としてこう言って来た。
「そうか...、最近スターラビットが山のふもとに出現して村人を襲いはじめたんで退治してもらおうと思ったんだが、いないならしょうがないか...」
そう言いながら帰っていこうとする彼を見た俺は引き止めてこう言ってみた。
「良ければ俺がやりましょうか?」
「タルト君がか?しかし相手は下級とはいえ魔物だぞ、本当に大丈夫か?」
疑わしく俺をみてくる村人にこう言い返す。
「こう見えて俺も毎日剣の特訓をしているんですよ、腕っ節には少し自信があります」
そう、最近ツバキとの訓練で着実に力量を伸ばしていった俺は少しこの力を試して見たくなったのだ。
意気揚々とその仕事を引き受けて妹にはこう言っておく。
「お兄ちゃんちょっと仕事してくるから母さんには今日遅くなるって言っておいてくれ」
「にーにー、本当に大丈夫?」
なんとなく危険な事をすることが妹に伝わったのか、心配そうな表情で俺の顔を見て来たので癒された。
俺のためにこんな表情になってくれる人がいるということはこんなにも幸福な事なのだと実感する俺。
大丈夫今日の日暮れまでには戻ると妹には伝えて駆け出した。
とりあえずツバキの家に向かう。
短剣を貸して貰わない事には魔物への攻撃手段がないからね。