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成仏
ドアをノックする音が聞こえた。
少し背の低い男が入ってきた。
「こんばんは。夜分遅くにすみません。」
「どうぞどうぞおかけください。」
「ここに小説家がいると聞きまして。」
「いかにも私が井伊空佑です。」
「依頼をしたいのですが。」
「どのような事を?」
「私はノミです。先程死にました。」
「それは、早く成仏なさってください。」
「それが出来たらやってます。
実は私の子供達が殺されたのです。」
「それで成仏できないと。」
「そうなんです。
ぜひともノミを題材にして小説を書いて頂きたい。」
「分かりました。
すぐ取り掛かりましょう。」
すぐにノミが可哀想に死んでいく話を書き、
ノミから見た人間について語ってみた。
作品はそこそこ売れた。
しばらくしてノミの男が部屋に入ってきた。
「ありがとうございます。
これで成仏出来ます。」
そしてノミの男は消えていった。