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文化祭 ➄

「あの堅物生徒会長が、ロリ巨乳妹系キャラが好きとはね」


「会長は4人姉弟の末っ子で、しかも男は会長一人だけなんだって」


 学校帰り、僕は大村君と下校している。もちろん、彼は性転換装置で再び男の姿に戻っている。


 万が一体調を崩した場合に備えて・・・なんていうマーさんたちの言葉は、もちろん彼が余計なことを喋らないか監視するための方便だ。


 もっとも、僕から言わせると大村君も真面目そうだから、少なくとも人にベラベラ喋るとも思えないけど。


 なので、同級生と秘密を共有した仲と言うこともあって、僕は監視そっちのけで彼と世間話をしている。


 そこで彼が話してくれたのは、築城先輩の意外な経歴だった。築城先輩は真面目堅物なキャラで通っているけど、どうもその性格形成は育ちにあるらしい。


「だから昔から、お姉さんたちに弄られるポジションだって言ってた」


「簡単に想像できる構図だね」


 年上の姉ばかりが3人もいて、男は自分1人。そう言うポジションになるのも、ありそうな話だ。


「だから妹、それもカワイイ系に憧れてるって」


「なるほど。でも、巨乳好きなのは、やっぱり生徒会長も男なんだね」


 貧乳とか微乳を差別するつもりはないけど、やっぱり男の性てものがあるし。


「いや、あれは僕の願望。胸の大きい方が、会長も喜ぶと思って」


 ・・・本当、大村君の生徒会長への想いはガチなんだな。好きな人のために、自己の願望に反映させるって。


 けどこうなると、やっぱり後のことの方が怖い。


「大村君、そこまで生徒会長好きなのに・・・女になったところで、どっちに転んでも失恋にしかならないじゃん。本当にいいの?」


 大村君が女の子の姿で告白して、生徒会長が受け入れようが拒絶しようが、どっちにしろ彼は男に戻らなきゃいけない。つまり、この恋は成就しないこと確定。それだったら、あきらめた方が良くないかと思ってしまう。


「うん。もう決めたことだから。生徒会長が選んでくれないなら、それでもいい。選んでくれたなら。くれたで、一時だけでも夢を叶えられるなら」


「・・・そっか。まあ、もう後戻りできないしね。僕としても、仲間が増えて悪い話じゃないし」


 実は今回彼を女にする代わりに、マーさんたちが出した条件が、文化祭後にうちの店を、つまり喫茶藍で働くことだった。何でも、より多くのサンプルがあった方がいいらしい。


 僕としても、美少女(中身男だけどね)メイドさんが増えるのは、歓迎だし。


「ま、何にしろ健闘を祈るよ」


 とにかく、少しでも彼が望む形になることを、今は祈るくらいしかできない。


「ありがとう・・・ところで、富嶽君」


「何?」


「君は正美さんか司さんと付き合ってるの?」


「ブフ!?」


 思わず吹き出してしまった。


「な、何でそんなこと聞くの?」


「いや、正美さんと司さんの態度を見てると、富嶽君に恋愛感情があるみたいだったから。で、富嶽君も満更でもなさそうだし」


 ク!人が認めたくないことをサラリと。これが第三者視点と言う奴か!


「あのね大村君。正美さんと司さんは確かに美少女と呼ぶにふさわしい存在だよ。だけどね、中身はあの岩川先輩と鹿屋先輩なんだよ!なんで付き合ってるていう話になるのかな?」


「でも、女になれば身も心も女の子になるじゃん。だから、女の子でいる間だけ付き合ってるみたいな?」


「アハハハ。僕にはそんな器用なことできないよ」


 出来たら、とっくにやってるよ!


「本当?」


「本当だよ」


「ふ~ん・・・まあいいや。明日の夜が楽しみだね」


 うん?明日の夜?つまり、後夜祭のことか?一体それの何が楽しみなんだろう?


「それって、一体どういう意味?」


「それじゃあ、僕はここで」


「あ!こら!」


 おのれ!都合よく逃げおった!


 う~ん・・・気になる。明日の後夜祭で何があるって言うんだ?

 

 


 そして翌日、文化祭も3日目。つまり、最後の日だ。喫茶藍の出張店はこの日も人気で、僕たちは忙しない1日を過ごした。それでも、何とかタイミングを見つけて文化祭を楽しむ時間を作ってくれたマーさんには感謝だな。


「ありがとうございました!・・・終わった~!!」


 閉店の時間。最後のお客さんを見送った途端、ウ~ンと背を伸ばす正美先輩。


「お疲れさまでした、先輩」


 実際のところ、まだ後片付けとかあるんだけど、それは文化祭の振り替え休日となる明日行うので、今日の仕事はもうほとんど終わりだ。


「忠一君もお疲れさま・・・で、忠一君は後夜祭出るわよね?」


「ええ。せっかくですから」


「そう。だったら、楽しみにしててね」


 先輩が楽しそうに、それでもって意味ありげにそんなことを口にした。もちろん、僕にはその意味がわからない。


「楽しみ?何をですか?」


「フフフ。すぐにわかるわ」


 そう言うと、正美先輩は司先輩と楽しそうにお喋りしながら出て言った。う~ん、気になる。ただ嫌な予感はしないから、何か起きるにしても悪いことにはならないだろうな。


「さてと、大村君は大丈夫かな?」


「あ、心配してくれるんだ」


 僕が呟いた途端に声が返って来たから、ビックリしてしまった。


「わ!?いつのまに!?・・・その格好どうしたの?」


 大村君、改め大村さんがいたのもビックリだけど、さらに驚いたのが彼女の格好。昨日はうちの店から借りたメイド服着てたけど、今日はメイド服じゃなくてなんとセーラー服、それもうちの学校の制服を着ている。


 良く似合ってるのはいいんだけど、どこで調達したんだろう?


「いやだな~。うちの学校の女子の制服に決まってるじゃない」


「そうじゃなくて、どこで調達したの?買ったの?」


「まさか~。ほら、生徒が着替えるような事態に備えて、学校が予備の制服を用意してるじゃない。あれだよ」


 あ、納得した。生徒が何らかの事故や過失で、制服が着られない状態になった時、学校が貸し出すために用意してるって、確か聞いたことある。


 ちなみに、一番良く着替えることになる理由は、中庭にある池への転落もしくは飛び込み事故らしい。実際、池の縁から生徒落ちるの見たし。


 あの池、真ん中に小さな島があって、ちょうど距離がなんとか飛べそうなくらいの微妙なものなんだよね。だから、興味本位や度胸試して飛んで、失敗して池ポチャする生徒の多いこと。


 あの池、水深が浅くて溺れる心配はないからいいんだけど、どちらにしろ、池の魚の餌やりと毎日掃除する身としては、中で泳ぐ魚が驚くから、正直止めて欲しいんだけどね。


 ちなみに、なんで池の世話を僕がしているかと言えば、底に貯まった藻やヘドロを乾かして畑で使っている交換条件で、園芸部が世話することになっているから。


 と、思考が余計な方に言った。


「ふ~ん・・・でも、あれって勝手に着ていいの?」


「だって、私は生徒会の人間よ。持ちだすなんて、造作のないことよ」


「・・・それって、職権乱用とか言うんじゃないの?」


「アハハハ。ナンノコトヤラ」


 こいつ、勝手に借りやがったな。


「まあ、ちゃんとクリーニングして返すから大丈夫大丈夫」


 ヒラヒラ手を振りながら、笑って誤魔化してるよ、この人。


「ま、何かあった時に責任を取るのは大村君・・・じゃなくて大村さんだから、もう何も言わないよ」


 すると、大村君改め大村さんが不敵な笑みを浮かべる・・・え?怖いんですけど!


「自分もそれに無関係でいられると、思ってるのかな?」


「何だと!?どういう意味だ!!」


「フフフ・・・アハハハ!」


 不気味な笑い声を残して、大村さんは去って行った・・・本当にどういうこと!?


 どうしよう、後夜祭行くの怖くなってきた。でも、今さら行くの止めるのも癪だしな。厄介ごとはないと祈って、とにかく行ってみよう!


 と、何だか自分自身でフラグ建てたような気もしたけど、危ないフラグなんかへし折ってやるぜ!


 ・・・なんて、考えていられたのはそれからわずか20分ほどでした。


 後夜祭の会場は、グラウンドや体育館が中心になっていて、そこで皆が思い思いのことをしている。ボールを持ち出してバレーやバスケに興じている人もいれば、机の上に用意された菓子や飲み物に口をつけながら、ひたすらお喋りに興じている人もいる。


 後夜祭は、参加も自由だしやることも自由。ただ終了間際に、男女がペアになってフォークダンスをするのだけは伝統だけど、生憎と一緒に踊ってくれるような女性はいないので、僕には縁のないイベントだ。


 だけど、一瞬正美先輩の顔が頭に思い浮かんだ。


 正美先輩と一緒にダンス・・・男なら誰もが羨むシチュだろうし、僕としてもそんなシーン体験してみたい。


 しかし、先輩たちは今頃男の姿に戻っている「忠一く~ん!」


「!?」


 聞き覚えのある、それでもって妙に甘ったるい艶のあるワザとらしい口調がしたかと思ったら、柔らかな感触が腕に・・・え!?まさか!


 僕が視線をソ~ッとずらすと。


「こんばんは!」


 正美先輩が、イタズラが成功した子供のような笑みを湛えていた。そして、その格好は。さっき見た大村さんと同じ、うちの学校の女子制服、すなわちセーラー服だった。


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