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スライムイーター ~捕食者を喰らう者~  作者: ユエ
4話 捕らわれの姫君
60/79

20 どうするのこれ



 混沌極まる惨状の舞台に、リンネさん登場です。



「ご無事ですか、アルル様。ああ、あなた様の顔を見られて心から安心しました」

「ありがとうだけど、一体何から助けようとしてくれたの?」



 極彩スライムの体内で蹂躙されるお姫様を見やり、リンネさんは「おや?」と不思議そうに首を傾げます。



「良く見ればあれは姫君でしたか。とてつもない臭気と醜悪な顔立ちだったので、てっきりゴブリンの雌に襲われそうになっているのかと」

「かつてのお姫様に酷い言いよう……」

「あれが一国の姫君だとは到底信じられません。ご覧ください、あの醜態を。あんなに顔を蕩けさせて、なんていやらしい! スライムを何だと思っているのですか!」

「少なくとも食べ物ではないでしょうに」

「生きるために仕方なくです」

「ついてる」



 口端に付着しているスライムの欠片を拭い取ってやります。


 リンネさんは、ややバツが悪そうに顔を赤くして言い訳します。



「いえ、せっかくなので、味見ついでに新種をひと口……」



 やっぱり結構楽しんでいたようです、新種のスライム作り。



「お味のほどは?」

「飲み込めずに吐き出してしまいました。やはり調教されたスライムなど食べられたものではありません。天然が一番」



 トライ&エラーを繰り返し、原点回帰したようです。お帰りなさい。


 ちなみに、出来上がった極彩スライムはいとも容易く鉄格子を融解させる力を獲得したようです。


 混ぜ合わさり、混濁し、忘我混沌に陥ったスライムは、ただ自らの存在意義を実行すべく脱走を図り、猛然と走り出したのだとか。リンネさんはそれを追ってきたわけです。



「おかげでアルル様の所まで迷わず辿り着けました。とりあえず、あんなの放っておいて逃げましょう。一刻も早く新鮮なスライムが跋扈する天然洞窟に戻らなくては!」

「いや、洞窟からは出られたんだからさっさと帰りましょうよ」



 それも違います、急いで王都へ向かわなくてはいけません。かといって、未だこの城から脱出する妙案があるわけでもなし……。


 ここに留まるのも得策とは思えません。

 極彩スライムの体内で弄ばれているお姫様を引っ張り出すことができない以上、この騒動の責任は私たち二人に課せられることになるわけですから。


 魔神王に命を握られている今、一番やってはいけない形でやらかしてしまった感が拭えません。



「行動を起こすのが早過ぎやしない? せっかくお姫様に取引を持ちかけて、魔神王の企みを挫く算段をつけていたところなのに」



 数日前、リンネさんが話していた情報を外へ持ち出す手段というのも、きっとこういうことだったに違いありません。


 即ち、自ら孕み袋にされた上で城から脱出し、王都へ向かい、危機的状況を伝える。

 なるほど、起死回生の一手ながらも最悪な方法でした。よく考えつくものです。


 

「どうするのこれ」



 口八丁手八丁使って焚きつけたお姫様は、今やスライムの中。怒り狂った魔神王が冷静に事を運んでくれるとも限りません。

 私は頑張ったというのに、これでは何もかも台無しです。

  

 軽い抗議を交えて問い詰めれば、リンネさんは極めて冷静な表情で「問題ありません」と力強く断言します。



「天啓を授かりました。もうすぐ救いが舞い降りる、と」

「天啓って誰から? あ、女神様か」



 彼女が心を寄せる存在など、それくらいしか思い浮かびません。



「神々との交信は神官の力のひとつです。女神様の囁きに耳を傾け、御言葉を頂戴することができれば、苦難の道も切り開けるというもの」

「へえ、そんな便利な能力が」



 きっと、信者しか(あやか)ることのできない似非信仰ですよ。なんか胡散臭いなあ……。


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