14 なるほど、これが天罰か……
見目麗しい妙齢の女性です。
ゆったりした袖のついたくるぶし丈のトゥニカは、動きやすさを考慮してか股下にスリットが入れられ、裾が大きいウィンプルの上から濃い色のベールを被っています。豊かな胸の前ではネックレスの十字架が光っていました。
この方が助けてくれたに違いありませんが……。
何でしょう、一体何が起きたというのでしょう?
「……あのっ」
「おい! どうした、何かあったのか!」
彼女へ問いかける直前、意識の外から飛んできた胴間声にまたびっくりします。
喧しい足音とともに駆けつけてきたのは、名も知れぬ冒険者の男性。
背が低くがっしりとした体格で、背中には巨大な戦鎚。如何にもベテランの風格を漂わせています。
もしかして、と思い至ります。
このお二方はきっと、リオンさんが言っていた援軍に違いありません。なんというグッドなタイミング!
両手を組んで天を仰げば、顔なじみの受付嬢さんが女神のような神々しいベールを纏ってにっこり微笑んでくれました。
「これは酷いっ! すぐに手当てをしなければ!」
さすがはベテラン冒険者。私が呆けている間に状況の確認を行い、何も言わずとも緊急事態を察したようです。
オリビアさんの容態を見つつ、荷を下ろして広い背中を開けてくれます。
彼の切羽詰まった声とは対照的に、落ち着いた声色が私の耳をくすぐりました。
「これをかけてあげてください、応急処置です」
「えっ? あ、はい!」
すっ、と差し出されたのは、透き通るほどに透明な液体の入った小瓶。
単なる水ではないはずです。
ろくに確認もせず、指示されるままに小瓶の蓋を開け、真っ赤に焼け爛れた身体へと中身をぶちまけます。
「ぎぃいいやあああああああああああああああぁぁ……っ!」
死にかけだったオリビアさんの口から、新鮮な絶叫が迸りました。
重傷の身体を仰け反らせ、溶けかけた手足ばたつかせます。
「なっ、なななっ! ちがっ、え? 何でぇっ?」
「必要な処置です。慌てずに」
「そんな無茶苦茶な!」
私からの抗議などどこ吹く風。
神官の女性は何事もなく答えると、冒険者の男性に指示しました。
「すぐに教会の治療院へ」
「あ、ああ、わかった! スライムイーター、あんたは?」
「わたしは他の新米さんを助けに行きます。―――彼女と一緒に」
ほっそりした手でポン、と肩を叩かれました。
「はいいっ?」
冗談じゃないと首を振ります。
「いや! あの! 私が居ても足手まといで! わ、私が彼女を運んだ方が!」
「あなたの細腕は力仕事に向きません。それよりもこれまでの情報をわたしに伝え、迅速な救援活動に貢献してください」
「そんなの今ここで伝えればいいのでは?」
「時間が惜しいと言っているのです。さ、行きますよ」
「や、ちょっと待――――っ、うわあああああん!」
果たして、華奢な細腕のどこにそんな力を秘めていたのか。素性も知らない神官の女性に引きずられるまま、私は危険領域へ再突入です。
なるほど、これが天罰か……。