表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライムイーター ~捕食者を喰らう者~  作者: ユエ
2話 捕食者を喰らう者
20/79

14 なるほど、これが天罰か……


 

 見目麗しい妙齢の女性です。


 ゆったりした袖のついたくるぶし丈のトゥニカは、動きやすさを考慮してか股下にスリットが入れられ、裾が大きいウィンプルの上から濃い色のベールを被っています。豊かな胸の前ではネックレスの十字架(ロザリオ)が光っていました。


 この方が助けてくれたに違いありませんが……。


 何でしょう、一体何が起きたというのでしょう?



「……あのっ」

「おい! どうした、何かあったのか!」



 彼女へ問いかける直前、意識の外から飛んできた胴間声にまたびっくりします。


 喧しい足音とともに駆けつけてきたのは、名も知れぬ冒険者の男性。

 背が低くがっしりとした体格で、背中には巨大な戦鎚。如何にもベテランの風格を漂わせています。


 もしかして、と思い至ります。


 このお二方はきっと、リオンさんが言っていた援軍に違いありません。なんというグッドなタイミング! 


 両手を組んで天を仰げば、顔なじみの受付嬢さんが女神のような神々しいベールを纏ってにっこり微笑んでくれました。



「これは酷いっ! すぐに手当てをしなければ!」



 さすがはベテラン冒険者。私が呆けている間に状況の確認を行い、何も言わずとも緊急事態を察したようです。

 オリビアさんの容態を見つつ、荷を下ろして広い背中を開けてくれます。


 彼の切羽詰まった声とは対照的に、落ち着いた声色が私の耳をくすぐりました。



「これをかけてあげてください、応急処置です」

「えっ? あ、はい!」



 すっ、と差し出されたのは、透き通るほどに透明な液体の入った小瓶。

 単なる水ではないはずです。


 ろくに確認もせず、指示されるままに小瓶の蓋を開け、真っ赤に焼け爛れた身体へと中身をぶちまけます。



「ぎぃいいやあああああああああああああああぁぁ……っ!」



 死にかけだったオリビアさんの口から、新鮮な絶叫が迸りました。

 重傷の身体を仰け反らせ、溶けかけた手足ばたつかせます。



「なっ、なななっ! ちがっ、え? 何でぇっ?」

「必要な処置です。慌てずに」

「そんな無茶苦茶な!」



 私からの抗議などどこ吹く風。


 神官の女性は何事もなく答えると、冒険者の男性に指示しました。



「すぐに教会の治療院へ」

「あ、ああ、わかった! スライムイーター、あんたは?」

「わたしは他の新米さんを助けに行きます。―――彼女と一緒に」



 ほっそりした手でポン、と肩を叩かれました。



「はいいっ?」



 冗談じゃないと首を振ります。



「いや! あの! 私が居ても足手まといで! わ、私が彼女を運んだ方が!」

「あなたの細腕は力仕事に向きません。それよりもこれまでの情報をわたしに伝え、迅速な救援活動に貢献してください」

「そんなの今ここで伝えればいいのでは?」

「時間が惜しいと言っているのです。さ、行きますよ」

「や、ちょっと待――――っ、うわあああああん!」



 果たして、華奢な細腕のどこにそんな力を秘めていたのか。素性も知らない神官の女性に引きずられるまま、私は危険領域へ再突入です。


 なるほど、これが天罰か……。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読了、ありがとうございました。
感想・評価いただけると嬉しいです! 最新話ページの下部にあります!
― 新着の感想 ―
[気になる点] オリビアさん、辛うじて一命を取り留めたようですが、もう冒険者には戻れないかもしれませんね…痛々しくて辛かったですが、甘くない世界なのは良い…のかな。少しでもお肌が綺麗に甦る事を祈ります…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ