断章 シーン1 かえりみち
断章 シーン1 かえりみち
「それでさあ、ねえ? 聴いてる?」
「んー? ああ、うん。」
「ウソ! 今、眼、泳いだし。いつもの通り左斜め上。」
「………まあ、半分は。なんでわかったん?」
「ほーら。カナタ様、大正解。ちゃんと聴いてよ。何年一緒に帰ってると思ってんの?」
「そんな胸張って得意げにせんでも………保育園の頃から?」
「ううん。それはノーカン。だって親と一緒だし。」
「じゃあ、八年かな。小・中。二年の今までで。」
「そんだけ一緒に居たら、アンタの癖くらいわかって当然でしょ。」
「んー………たしかに。」
「ほれ、アタシの彗眼に敬意と話を聞いていなかった無礼に報いて、ジュース奢ってよ。」
「えぇ………。わかった、わかった。ほれ。」
「『ほれ。』って…………六〇円しか入れてないじゃん。」
「〈半分は〉話を聞いていたから。半分。半額だけ。」
「………案外ケチね………。」
「流石のカナタ様も、俺の性格は、まだ把握できてないみたいだなあ。」
「ちょっ! 茶化さないでよ! てか笑うな! 手、どけろ! わしゃわしゃやめ! 髪が乱れる! あと残り六〇円、早く入れろ!」
「いや、だって面白いし。自分で様付けしてこのザマだし。面白い。」
「性格悪! キリヤ、そんなんだからモテないんだよ。」
「うるせえ。そんなんどうでも………よくねえのかなあ………?」
「いっ、いや、急にそんな真面目な顔で言われても………うう………も、モテたいの?」
「いや、どうなんだろう………てか、なんでそんなキョドるのさ?」
「や、だって急に、そんなさあ………」
「なんで顔そむけるのさ? 」
「うっさい! あー!喉が渇いた! あー! 暑い暑い! 火照ってきちゃう! 早くジュース飲まなきゃ! クールダウン!」
「結局六〇円出すんだ。」
「喉が渇いたからね! 暑いからね! 仕方ないからなんだからね!」
「一気………ようわからんなあ………まあ、いいか。」
「そ! そそ! まあいいのよ! はやく帰ろ!」
「ちょ、なんでそんな早歩きなのさ!」
「うっさい! 自分で考えろ!」