内燃
足が縺れて、絡まって、転んで
膝は擦りむけて血が止めどなく流れる
悔しさが眼から溢れる
ぼくには無理だ、あの人たちのようには書けない
もう、走れない
才能の差、圧倒的な力量差、センスの無さ
まざまざと見せつけられて、息も出来ない
自分に足りない物=全部
やめよう
毎日苦しい思いをしてキーボードを叩くことは無い
『やめちゃえ』
筆を折れば、楽になれる
『楽になろうよ』
毎朝酷い顔をした自分を見なくて済む
『限界なんだよ』
そうだ、ぼくはもう走れない
『……』
限界だ
『……』
底が見えた
『……』
だから……
『本当に?』
……
『本当に限界か?』
……
『走れないか?お前の心は折れたか?ぐぅの音も出ないぐらいに?』
あぁ
『筆を執りたく無い』
そうだ
『嘘だな、お前は書きたがっているよ』
馬鹿言うな
『本当のことだ。お前は打ちのめされても書きたがっているよ』
お前に何が分かるんだよ、何様だ
『全部分かるさ。俺はお前をずっと近くで見てきたんだ。お前はまだ書ける。その体を流れているモノを文にしたがっている。お前の内に灯った火は消えちゃいない。その衝動は、熱量は外に出ようとしている』
でも、何も浮かばないんだ
『キーボードに触れて、まっさらなディスプレイを見てみろ。お前の内から沸いて来る筈だ。書きたい物が、外に出たがっているモノが』
そうだ、まだ消えちゃいない
『消えちゃいない』
ぼくは書きたい
『俺は書きたい』
この押さえきれない何かをぶちまけたい
『体中を巡り、みなぎる何か』
まだ燃やせる
『火を』
この火が絶えることは無いだろう
『永久に』
ぼくの心臓が動きを止めるその日まで、ぼくは書き続ける
命の焔を燃やしながら