私のチームはこうしてできました
その昔、私が自分は愚か者であると自覚をしたあの時から、私は私のチートを疑っている。
自分の愚かさに身もだえ、引きこもりに走った私。
引きこもりながら今までのバカさ加減を思い出し、一つの考えに至った。
私の能力はおかしい。詐欺にもほどがある。
だっていくら幼児の頭とはいえ凝り固まった大人の意識が入っているのに吸収力だけで言語を覚えてしまえるなんてどう考えてもおかしいじゃないか。
気が付くのが遅いとかは言わないで。だってあの衝撃の事件までは頭が沸いてたんだもん。ヒャッハーしちゃってんたんだもん。ごめんなさい。…なんにせよ、変だとやっと気が付いたのです。
これは、自分の実力じゃない。でも、使えるのだ。使えるのならば、理解をしなければいけない。有効活用する為にももっと把握しなければいけない。
だからこそ、出来るわけが無いと思っている事も、出来るのが当たり前だと思っていたことも。把握するために全てを試して、試して、試しまくった。
もちろん、知能だけでなく身体能力についても、出来うる限りの事は全て。
運よくというか、今の家は警備会社を運営している。
警備というのは人から機密情報までありとあらゆるものを守ることが仕事になりえる。
だからこそ知識能力も身体能力も高スペックな人材が会社にそろっていた。試すには格好の場所だ。
会社に行くには父に着いていくのが一番である。
「お父様のお仕事しているところがみたいな」
なんて、心の中ではサブいぼを立たせながら父にかわいくお願いをした。
私は子供私は子供と怖気に負けない様に言い聞かせながら。
娘に甘い父は部屋から出て元気に活動を始めた娘のお願い事を一にも二にも頷いた。
「あっちがみたい」
「こっちがみたい」
「あれをしてみたい」
「これをしてみたい」
なるべく父の邪魔にならない様にしながらも、会社にある様々な部署でざまざまな事を試していった。
そう、チートを使いに使いまくったのである。
その結果、そのうち私が向かわなくとも会社に顔を出せば様々な部署から色々と持ってこられるようになり、小学生のころはずぅっと放課後は会社に入り浸っていた。
そうしているうちに社内に作られてしまったのが私の専任チームである。
「誕生日のお祝いだ!」
とか言って、10歳の誕生日に父が持ってきた分厚い資料には社員情報がびっしりであった。
「この中から好きな人を選んでいいよ。大丈夫、由紀菜の事を嫌っている人は省いてるからね」
にこにこ笑顔で言う事ではない。
父の権力を使いまくっていた自覚はある。多少チートでやりすぎたかもしれんとは思ってもいた。
しかし、専任チームを作るとか職権乱用すぎないだろうか。というか、独断で作っていい物なのか。
「父よ」
「何だい?」
「いらないから。私の存在が邪魔になってるならもう会社行かないから。こんなの作ったら株主総会で干されるよ?」
「大丈夫だよ?」
どこがだ。なにがた。
私が色々やって、試して、調べて、把握する為の行為は私の私による私の為にした事であって、そんな大それたものを作ってほしくてしたことじゃない。
「もう社内会議で決定したことだからね。社内周知も終わってるし。あ、この資料も希望者から選別したものだから無理矢理とかはないから、大丈夫大丈夫。…というか、由紀菜が会社に来ないようになる方が糾弾されそうだし」
最後にぶつぶつ何を言っているのかは分からなかったが、ざっと目を通しただけでも何十人とある資料が全て希望者だと!?何故だ。何故そうなった!!
あれか、社の威信をかけて作られたプログラムチームの自信作である将棋マシーンに勝ったのがいけなかったのか?
それとも、訓練のための作られた障害物コースでタイムレコードをたたき出してしまったのがいけなかったのか?
中身小市民の私に専用のチームとか、考えるだけで空恐ろしい。
この事で父の地位に揺らぎはないと分かっても簡単に「わかった」とは頷けない。
なんとか拒否しようと頑張ったけれど、最後は「心配なのよ。一緒にいられないお母さんを安心させてちょうだい」と小さな弟を抱きながら泣く母の姿に負けた。
負けたものは仕方がない。こうなれば、妥協する方があほらしいとチームメンバーは選び抜いてやったぞ。
そんなに大人数はいらないので、6名ほどですけどね。で、特製チームが出来上がったわけです。
確かにあったほうが便利ではあった。最近では会社に行くとどこからともなく色んな人が色んな資料を持って押しかけていたから。
チームが出来たことで私がいない間に選別をしといてくれるようになったのだ。
そのあたりはありがたいと思っております。
なんか便利屋のように使われているような気がしないでもないけれど。
きっと今回の誘拐事件についても偶然にしろ何にしろ私がここにいるんだから私のチームが適任とか勝手に言われたんだろうなぁ。
まあ、給料泥棒になるような部署にならなくて良かったよ。




