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校外学習です

 本日、校外学習の日です。

 晴れた青空が気持ちいいですね。

 校外学習の場所はちょっとしたリゾートホテル。

 なんでもここのオーナーが学園のOBなんだとかで提供していただいているそうですよ。

 オフシーズンの平日とはいえすごいよねぇ。


「受付の準備終了したしました」

「分かったわ。迎え入れの準備は?」

「休憩室の飲料、昼食の手配、緊急時の部屋の鍵、全て確認済みです」

「よろしい。講師の方々から変更予定などの連絡は?」

「今のところありません」


 明瀬総長の下に集まり、それぞれ最後のチェック報告をしていく。

 会場の確認や準備など色々あるので、風紀と風組み、生徒自治会のメンバーは先にホテルへと来ていた。

 他の生徒たちはバスで今向かっている途中である。


「それぞれに配備しているインカムの作動は確認してあるわね?では、各自持ち場にて待機」

「「「「「了解」」」」」


 さて、私も持ち場へ向かいましょうか。

 案内人は受付をすませた講師の方を休憩室へご案内したり必要備品が無いか最終の確認したりと色々雑用でございます。

 一人で2から3組の講師の方々の案内を受け持つのだけれど、1年は1組のみ。いきなり複数の受け持ちはさせないところに明瀬総長の優しさがみえます。

 私はある意味身内の案内なので、楽なのですがそのかわりというか、講師の方々の対応の取りまとめを任されました。これって1年でやることなのかな。

 やることは受付との連携だとか必要といわれた時の備品の管理とか対応とか休憩室での雑用指示とか、まあ色々雑務ですね。任されたからには万事に対応させていただきますよ!

 あれこれ最終の確認をもう一度していると、受付に講師の方が来たとの連絡が。


『○×大学の方がお見えになりました』

「了解です。案内人を向かわせます」


 告げられた大学の案内人に目線を向けると手を挙げて受付のほうへ向かっていった。


「今、向かいました」

『了解しました』


 徐々に慌しくなっていく会場。生徒たちももうすぐ到着するし、本番が来たっ!て感じですね。


Saijou(さいじょう)Security(セキュリティ)Service(サービス)の方がお見えになりました』

「了解です。今、向かいます」


 そうこうしている間に私のお客様が来ましたね。

 一旦その場を先輩に任せて受付へと向かう。

 受付に近づくに連れて見えてきた顔に私はげんなりとしてしまう気持ちを抑え切れなかった。

 講師として来ている人物に間違いは無い。指導員をまとめている指導課長だ。現場と内情にも詳しいので講師として適した人事だと思う。

 問題なのはその付き添いで来ている人物のほうだ。

 鍛え上げた肉体がスーツの上からでも良く分かる。かといって余分な筋肉が付いているわけでなく、綺麗な肉体だ。受付に向かっている私に気が付くとその人はにっこりと胡散臭そうな微笑をした。

 言っておこう。私がこの人につけたあだ名は「ドMの腹黒細マッチョ」略して「ドマッチョ(黒)」である。


「お待たせいたしました。案内をさせていただきます、斎条由紀菜です」

「お噂はかねがね。指導課長の柳下やなぎしたです。お嬢様に案内をされるとは光栄です」

「そんな、畏まらないでください。いまの私はただの一生徒ですから」

「お気遣いありがとうございます」

「…ところで、柳下さん」

「…はい」

「お付きの方が申告を受けていた方と違うようですが」

「申し訳ありません。その、急遽付き添いが変わりまして」


 柳下さん?顔、引きつってますよ?

 上に立つ者ならば、堂々としてなくてはいけません。特に、指導課長は俺についてこい!ぐらいの勢いが欲しいものですよ。締めるところは締め、情も懐も深い素晴らしい人だとお聞きしていたのですが。

 まあ、今は引きつるのも仕方ないと思うけど。どうせこの付き添い、そこのドマッチョ(黒)が無理やり割り込んだのだろう。見てなくても分かります。

 話の話題に出たため、ドマッチョ(黒)が私の前に出て話を引き継いだ。出てこなくていいよ?


「申し訳ありません。予定していた付き添いがどうしても(・・・・・)抜けられない用事が出来たと耳にしまして。私ならお嬢様とは顔見知りですし、それにお嬢様とお会いしたくて無理を言いました。どうぞお叱りは私に」

「………」


 お前、殊勝な顔をしているが叱られたいだけだろう。

「嘘つけぇ!」と殴りたいがそれはご褒美になってしまう。我慢だ我慢。


「いいえ、どうしようもない事情がおありならば予定変更は仕方ありません。一生徒の私(・・・・・)には推し量れませんので。休憩所へご案内いたします。こちらへどうぞ」

「ありがとうございます」

「…ありがとうございます」


 叱られなかったことに残念そうな顔をするな。

 私にそんな趣味は無いと言っているだろうが!!


「休憩所はこちらになります。まだお時間がございますからこちらでお待ちください。何かお飲み物お持ちいたしましょうか?」

「私は結構です。鵜野うのくん、君は?」

「いえ、私も結構です」

「畏まりました。では、その他必要なものがございましたら近くの風紀へお申し付けください。それと、私に敬語は必要ございません。先ほども言いましたとおり、ここでは一生徒ですので」

「いや…うん、そうか。ありがとう」


 ああ、聞いてくれて良かった。

 そのまま敬語だと何しに来てるのか分からなくなっちゃうところだったよ。

 柳下さんと会話中もずーっとドマッチョ(黒)が切なそうに見てくるのは当然無視である。


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