繋がる先の、君へ。
夢から醒めた朝は、何処となく物悲しい。夢を見ずに醒めた朝は、激しい消失感を感じる。
夢は、不思議だ。夢は、何処から漂ってくるのだろう。夢は、何を求めて私に縋るのだろう。深い意識の底からだろうか。深い欲望の形だろうか。
時には、私を彼に会わせてくれる優しい夢。時には、まだ見ぬ場所へと導きたがる夢。それが、夢。
夢は、見たい時に見ることが出来ない。それがもどかしくも、嬉しい。ふとした瞬間に見せる時の顔の様に、私をいつも飽きさせずに、楽しませてくれる。それが、夢。
私に、何も読ませてくれない絶対不侵領域。それが、夢。
唯一、私に理解を求めない確かな存在。唯そこにあるだけの、優しい存在。
・・それが私の、夢。
― 歩きながら、私は考えている。途中で躓くこともなく、なだらかな一本道を歩いている。しばらく歩いて行くと、まるで待ってましたというように、都合よくレンガ造りの低い塀が現れる。辺りを見回すも、他に座れるものは見当たらなかった為小さく溜息を吐くと、軽くレンガの砂を落としてそこに腰掛ける。すると、また待ってましたというように雨が降る。雨は好きだが、濡れて風邪を引いては馬鹿らしい。そこで私は持っていた赤い傘を差し、また意識を集中させて考え始めた。雨粒が傘に弾かれる音が何とも心地良い。
夢がカクレンボをしている時は、私が鬼をさせられる。
これが、私が必然的に独りになる瞬間。ふとした瞬間に優しさが恋しくなる時間。その時は、息を深く吸い込んで手を伸ばす。高く、高く手を伸ばす。
手を伸ばす先には、ホントに何もない。唯々、在るのは色のない彼。
だけど、いつでも彼は私の傍に在り、私を生かし続けてくれる。それも、優しさ。夢とは違う、磨かれることのない鋭い優しさ。
彼に手を差し伸べても、手は自然とすり抜ける。それは、至極当然の事なのに。
私はそれが如何し様もなく、悲しい。
夢は、いつからか意味を持つ。
それは出会いの声かもしれない、それは別れの合図かもしれない。唯、誰かの呼ぶ声が聞こえたら。答えを出さなければならない。
それが、いつか夢を壊す声だとしても。いつか運命を変える事になろうとも。
それが、私の存在を消す結果を招こうとも。
夢は意味を持ち、理由を持ち、やがては存在を持ち、解き放たれる。
悲しい夢も、優しい夢も。皆、何処かで繋がりを持ち、いつかはまた交わり、廻る。
今日も誰かが、泣いている。
ああ、悲しいねと手を伸ばすも、届くことのない私の手。
いつか繋がる夢の先で、私の手が届きますように、と。
ぽつぽつと、泣きながら小さく笑う空に手を伸ばし、いつの間にか手に持って開いていた本を閉じた。
本の背表紙を軽く撫で、私はゆっくりと立ち上がる。
今日も誰かが、泣いていた。
ああ、良かったねと手を振って、赤い傘を畳んで歩く。
涙の溜まったその中に、笑う子どもと「アリガトウ」。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
未熟な点が手からこぼれおちても直止まらない勢いです。
少しでも、何か感じて頂ければ幸いです。