92 反発
◯ 92 反発
どうやらカジュラは神罰中の元族長に服の秘密を教えたらしい。上着を脱いだ姿に、下剤の効果で顔色の悪い元族長の力の籠らない睨みを受けつつ、ダンジョンに向かう計画を立てた。
「じゃあ、三日後ね?」
「はい。密林のダンジョンから入るという事で」
初級のダンジョンがあるらしいので、皆の動きを確かめる為にそこに入ることになった。僕も準備に取りかかった。魔石を使って魔法のカバンを作ったり、光量調節付きのランプを作ったり。自分用の食事を作って自分の収納スペースに詰め込んだり、余分に一週間分くらい入れておいた。非常食のクッキーも作って、魔法アイテムの指輪と腕輪も持った。
腕輪は岩鼠から採取した半貴石に魔法陣を刻んでワイヤーで数珠つなぎにしてみた。魔力を放ちすぎても魔石から溢れた魔力をほんの数秒だけ石の周りに留めてくれる。
つまり、それを使えば楽に連続で魔法を放てる。大量に身に着けたら攻撃魔法も対応出来そうだけど、重くなる。まだ試験レベルなのでカジュラ達にも試してもらうつもりだ。指輪を使った方が近いせいか腕輪の効果は高いので指輪装備だ。
後は回復アイテムやらの薬とテント、毛布、着替えに霊泉水に美容グッズも入れたし、虫除けに魔物よけにと色々と用意した。
「アキだよ。今日はよろしく。治療師のランクGです」
全員挨拶からだ。今日は戦闘用の作業着だ。
「は〜い。マリーよ〜、よろしくね。オールラウンダーでランクなしよ〜」
今日はマリーさんが来てくれた。自作のドレスタイプの装備を付けてご機嫌だ。手袋の上には指輪の様なナックルを嵌めているし、ブーツは金属パーツが見えて頑丈そうだ。腰には金属の警棒の様な物も差していた。
「ハイドーリアだ。よろしく、獲物はこれだ」
何故か来ているハイドーリアさんだ。手に持っている槍を見せていた。腕に金属タイプの手甲が、足にも足甲が付いている。やっぱりセクシータイプの装備で割れた腹筋が僕には大きく揺れてる胸よりも気になる。
この二人は地獄型ダンジョンの装備のまま来てる気がする。
「カジュラですよろしく、魔法剣士のランクSです」
カジュラは居心地悪がそうだ。主に隣にいる人のせいだろう。僕の渡した装備を着ている。
「……」
神罰中の元族長だ。会話禁止のマスクをもう付けていた。不機嫌だ。得にハイドーリアさんの胸の当たりを睨んでいる。まあ確かに僕も元族長が女性だと気が付くのに時間が掛かったくらいだし、それはどうしようもないと思う。
「こちらはグラメールです。魔法弓使いの治療師でランクSです」
代わりにカジュラが紹介した。
「……クーノフタス、クーノスで良い。剣士、ランクSだ」
狼族のイケメンでカジュラの仲間だ。両手で持つ大きな剣を持っていて、鎧も頑丈そうだけど重さを感じない。魔物の一部を使ってそうだ。
「ジュニーよ〜、よろしくね。魔法使いよ。ランクはGね」
ゴーストで、半透明だった。最近、冒険者ギルドに登録したアンデッドで、カジュラの仲間だ。杖を持っていて楽しそうだ。
「いつも四人で探検してるんですか?」
僕が聞いたら、
「そうなの〜。ギルド登録が出来たからランクを上げていくのっ。良い神様になって嬉しーい」
と、ジュニーさんが答えてくれた。その後、ベージュにも見えるピンク色の作業服が可愛いと褒めてくれた。ジュニーさんも可愛いとんがり帽子を被っていて緑のリボンが飾られている。服装はケープを羽織っていて、その下はきわどい感じだけど可愛さのある魔女装備だ。お互いの装備に付いて話し合っていたら、
「荷物は少ないな。大丈夫か?」
と、クーノスさんが僕のウエストポーチを見て聞いてきた。荷物がそれしかないからだろう。
空間の魔石を使ってポーチを魔法のカバンにしていたら、大きくしすぎたのだ。自分でも空間を作れるせいだろう、やりすぎて魔石の容量一杯にしてしまった。日本の家一軒分くらいはある。
使ったのが地獄型のダンジョンで出たのを使ったのも悪かった。やり過ぎついでに魔物の死体を入れるなら保存よく保冷にしようと思って中は水と風の魔石を使って冷蔵庫の中くらいにひんやりさせている。最近覚えた技術だ。
「多分、大丈夫だよ」
「多分じゃ困る」
クーノスさんに指摘された。
「大丈夫よ〜。食料はばっちりよ」
マリーさんが保証してくれたので大丈夫だろう。
「それなら良い」
「じゃあ出発ね〜」
そんな感じで第十九フィールドの密林のダンジョンに向かった。密林のダンジョンはエルフの第三の里と逆方向に進む感じだった。三日程移動に掛かるのでその間に皆に数珠の腕輪の使い勝手を聞いた。
「あれがこうなるのですか?」
カジュラは僕のデモンストレーションに目を見張っている。
「連続で光が出る?」
クーノスさんは面白そうに見ている。一秒置かずに光を放つのを不思議そうに見ている。魔法使いのジュニーさんは興味津々だ。
「魔力が霧散しないのね?」
「そうなんだ、ほんの数秒だけ魔石の近くに留まるからそれを利用する感じだよ。わざと魔力を過剰に出して最初の魔法の後、腕輪が同じ魔法を発動するからこんな感じだよ。まだ試作の段階だからもっと手を加えるけど、面白いとは思うんだ」
「元が弱いからこんなに繋げてるのね?」
ジュニーさんは面白そうに腕輪を嵌めて火を出したり水を出したりしている。
「うん。石に穴を開け無い方が良い感じだったから次からは全部そっちにするよ」
もう無くなったので補充しないとならない。
「同時発動は魔法上級者でも難しいですが、これは中級者でも簡単に出来てしまいます」
カジュラもジュニーさんから渡してもらって使っていた。
「でも、高出力の魔法は対応出来ないみたいだし、私にはそっちの方が大事かな?」
「……練習には良さそうだと思わないか?」
クーノスさんはじっと見ている。気に入ったみたいだ。
「この石も色々種類はあるんでしょ? ダンジョンの奥なら良い宝石をくっ付けていそうでない?」
ジュニーさんは少し期待を込めてそんなことを言った。
「岩鼠は割と何処でもみますからね。ここにはいないが」
「狩る魔物でもないしな、あり得る」
「そっか、ここにはいないんだね?」
「そうなのよ〜、残念!!」
「宝石の出る鉱山ってあったか?」
「取り尽くされて岩鼠だけでは?」
「貴族が持ってて手放さないだろ。って、奴らはこれを知ってるのか?」
「……そうね。貴族が溜め込む理由って言ったらそれでしょ」
全員が押し黙ってしまった。
「それはただの推測でしょ、今はもっと気楽に楽しく進みましょ〜。これからは独占されないんだし、希望を持たなくちゃ」
「はい。ありがとうございます」
マリーさんの言葉で全員納得したらしい。皆の話を聞くとどうやら同時に魔法を使える人はいるみたいだ。僕も二か三つまでは出来る様になっている。空を飛びながら方向転換の為に足先で反発力を出すのは同時に使ってる事になる。
マリーさんなんて、十くらいは使えるんじゃないだろうかと思うくらいだ。僕にはまだそこまでは無理だ。
ずっと話に入ってきていないハイドーリアさんと神罰中の元族長は、僕達の会話中はずっとにらみ合っている。何か起きないと良いけど……。




