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◯ 90 追加
その五日後、悪神でないという証拠はあるのか、という謎の質問をエルフ代表という人がぶつけてきた。レイはやっぱり神域は要らないんだねと溜息を付いた。それをそのまま返した。
それで観念したのか元族長さんが服を登録したみたいだった。レイの力の籠った服の効果と、アイリージュデットさんからの世界樹のエネルギー操作に、ガリルの種族別生体端末の管理で、木の枝から落ちたり小石に躓くエルフが増えたらしい。戦闘中はこの効果は出ないようにしてるみたいだ。さすがにそれは危険だからね。
落ちた運気分のエネルギーは周りの自然に向かう設定にしているみたいで、エルフの里の復興には役に立つと思うので僕はまあ良いかと思っている。口止めはされてるけど。
エルフの里の光の空間は元の強さに戻した。水はまだ戻してはいないが、桶に溜めた水を光の空間にしばらく置いてそれを使っていた。
エルフの里には元族長と何人かのエルフが住んでいて、他のメンバーが戻ってくる準備をしていた。エルフ独自の結界を敷いて瘴気を少しずつ外に逃がしていた。
「聖水はどうしたら戻して頂けるのでしょうか?」
すっかりしおらしくなった元族長に聞かれた。紫の瞳に憂いの影を落としてじっとこっちを見ている。
「さあ、聞いてないけど」
「聞いて頂けるのでしょうか?」
すがる様に聞かれたが、触らぬ神に祟りなしだと思うな、今の状況は。
「聞いたら逆に怒りそうな気がする。交渉はしないってはっきり言ってたし」
レイの天の邪鬼な性格からすると、しばらく大人しくしてた方が良いと思うんだよね。元に戻す時はボク達の許可を取ってね、とレイにニッコリ微笑んで言われているので勝手には出来ない。
「そうですか」
がっくりと肩を落としていた。
「そういえば自己紹介がまだなんですけど……」
「見習いに名乗られてもな」
「……はあ。元族長と呼ぶのも変ですけど、それで良いんですか?」
「サ ティンゼル グラメール様と呼ぶが良い」
ふんぞり返っている。
「フルネーム呼び?」
「文句があるなら神にでも会わせるんだな。役立たずの見習い」
ダメダこりゃ。僕に神との交渉をさせるよう誘導する為にしおらしさを見せてたみたいだ。無理だと分かると態度を一変させてる。そんな態度の変化なんかは、ほんのりカジュラと似てなくない。
「神罰中の元族長、その上着を着ても意味無いですよ?」
上着で隠している間は頭の上に光で神罰中とエルフ族全員に他の種族から見えるんだよね……。ガリルの設定をマシュさんが楽しそうにやってたから上着は着ない方が良いんだけどな。
「恥ずかしい色の服を着ているだけでも我慢の限界なのに、変な言葉が書かれているし、本当に悪神じゃないんだろうな?」
疑いの目で睨まれた。見習い呼びを止めないうちは頭の上の文字は教えないであげよう。皆は悪戯の方が仕事よりも張り切るんだな……分かる気がするけど。
「どうでしょう。喧嘩を売ってるのが悪い気がするけど」
「なんだと、見習い!」
拳が上げられたのを、
「グラメール、ダメです!」
とっさにカジュラが止めに入った。
「こんなちんちくりんの猿に頭を下げるのか?」
カジュラに抗議している言葉は聞き捨てならない。
背が低いのを馬鹿にしてるな?! 確かにエルフ女性の神罰中の人からしたら十センチ程低いけど、その呼びは無いよ。
「僕からは絶対に水を戻す様には言わないから、そう神罰中の元族長に言っといて」
そう宣言した。もう口もききたくない。メッセージも着信拒否だ。僕は来た目的の事を忘れて神界に帰った。僕がイライラをキリムに癒してもらっていたら、レイが出先から戻って来た。
「ダンジョン行きは決まったの?」
僕がそう言えばと思い出した顔を見てレイは首を傾げた。
「随分怒ってるね。何か言われたの?」
「見習い呼びされるし、ちんちくりんの猿だって言われた」
「罰がまだ足りないんだ? 追加が欲しいなら遠慮しなくて良いのに、そんな回りくどい事して頭が悪いよね」
呆れ顔のレイの一言で、マシュさん特製の下剤が神罰中の元族長の食べ物に投入された。そしてカジュラ経由で紫のマスクが渡された。僕とお揃いになるけど、効果は瘴気の除去とマスクをしているときは話が出来ない。会話禁止の文字が書かれている。
これでルルさんの嫌みが消えてくれたら良いけど。




