86 本場
◯ 86 本場
さて、今回のポースとのステージは異世界だ。音楽好きの神が集まっているという世界に向かっている。レイには勉強になるからじっくり見学もしてくると良いよと言われた。
ウェルジスハーミィー世界に向けて紫月と妖精達とポースとマリーさんとで出かけた。確かに本場なだけあってすごくレベルが高い。さっきから圧倒されっぱなしだ。
「すごいね」
「そうでもないわ〜、アキちゃんの方が素敵なダンスよ〜。オリジナルだもの」
マリーさんは何か対抗意識を燃やし始めている。
「本当?」
「どれにも負けないわ〜。ね? 紫月ちゃん」
「うん。アキはいつも通りやったら皆が楽しめるよ」
小人紫月が肩に乗っかったまま嬉しいことを言ってくれた。
「俺様の支援はばっちりだからな! 歌ってる時は押し付けちゃダメなんだぜ? 楽しみを分かち合うんだ」
「ポカレスからそんな台詞が聞けるなんて〜、感動しちゃうかも!」
マリーさんが目に涙を浮かべている。確かに俺様というのには合ってないけど歌ってるポースは自分が一番楽しんでると思う。
「俺様の新境地よ! その方が場の盛り上がりが良いんだ。あの独特の空間は壊せないな、俺様だってアーティストだ。皆の力を引き出さねぇとな、プロじゃないぜ。俺様と紫月達の歌と踊り、それを纏めるのが、アッキの仕事だ。そこは俺様には出来ない業だからな、あの支援は気に入ってるんだぜ?」
演出も気に入ってくれてるみたいだ。
「うん、皆で楽しもうね?」
ここは楽しくハッピーに仕事の事は忘れようと思う。そのまま十日程滞在した僕達は色々なステージを体験した。時にはお客としてそしてアーティストとして。
ほんのりと皆の出す波動を受け取り易くなった気がする。それを送り出すのにも色々と工夫が出来てきたかもしれない。
「その扇子、力が籠ってきたわね〜。成長してるんじゃない?」
「うん。何か形が変わってきたんだ。どうなってるのかな?」
何か持ち手といい、紙といい、僕の絵もなんだか変わった気がする。扇子の存在感がすごいかもしれない。オーラを出してる気がするのは気のせいだろうか? 魔法アイテムなのかなこれって。
「ふふ、道具まで成長し始めたのね〜、あたし達のステージにはそういう力が籠ってるのよ〜」
「そっか、カシガナ効果だね?」
「そうよ〜。ハッピーで素敵な効果を出してるの〜」
マリーさんは自慢そうだった。今回の旅行用に作ったステージ衣装もこだわりの一品だ。流水文にカシガナの花が咲き乱れた着物に、光のベールの兵児帯っぽいのを水の流れの続きみたいにボリュームを出しつつ、後ろに長く垂らしている。
なんちゃって着物だけど、すごく綺麗だ。最近のマリーさんは可愛いよりも綺麗な服を目指しているみたいだ。
帰り際に皆で今回のツアーの感想を言い合った。
「ステージのこだわりはみんなすごかったね」
個性に溢れていた。
「そうね〜。まだまだ負けてられないわ! 衣装はやっぱり個性も大事ね!」
マリーさんの目が闘志に燃えている。
「精霊の歌はどれも似てるね。ボク達とはちょっと違った」
紫月はちょっと考えているみたいだ。
「個性が出てるんだね。ポースもいるし、違う方が楽しいよ」
僕の言葉に頷いて何か得心がいったのか笑った。でもちょっと真剣にこっちを見ている。
「うん。アキは浮気したらダメ」
何でそんな話になってるんだろう。まあ、確かに精霊達は声も姿も綺麗でこっちの心まで澄み渡る様な影響力がある。
「そ、そう?」
何か怒ってる?
「メッ、するよ?」
「うん。しないよ。紫月が一番可愛いよ」
「嫉妬してるのね。可愛い〜、紫月ちゃん。大丈夫よ〜。これからの優良株よ、逃したりしないわ〜、ね、アキちゃん?」
「そうだね、最近綺麗になってるし、紫月もあんな風になるんだって思うとちょっと嬉しいと思ってるよ」
最近の紫月はオーラの輝きが増した。歌ってた精霊に負けてない。身内びいきも入ってるけど、いずれはあそこまでになるに決まっている。成長している紫月は僕の姿だけでなくて皆の姿を映している気がする。つまり随分綺麗になった。
「本当? 綺麗?」
「うん、綺麗し、可愛いよ」
やっと満足したのか機嫌が直ったみたいだ。どうやら他の精霊に見とれてたのがダメだったらしい。




