82 下剤
◯ 82 下剤
ドワーフ族の第一陣が帰って八日後、シュウからメッセージが来たが良く分からない内容だった。ドワーフが関係している事は分かるけれど、何が言いたいのか分からない。
チャーリーとメッセージを一緒に読んでも分からなかった。スフォラも意味が分からない感じだ。ドワーフ族の集落に悪神が舞い降りたとか、アンデッドと手を組んで何かを企んでいるとか。
「うーん、誰が悪神だなんて言ったんだろう?」
何をどうしたらこうなるんだろうか?
「さあ。ですがこれは問題ですね」
チャーリーも怪訝な顔をしている。
「そうだね。何か違った噂が流れてるね? ちょっと皆の所に行ってくるよ」
「そうですか。気をつけて下さい」
今日は紫月達とポースも来ていて新しいステージに向けて練習した所だった。紫月達はアイリージュデットさんとお喋りしている。
どっちかというとアイリージュデットさんは紫月達と良く似ていると思う。無邪気で楽しく過ごせる事を優先している。人の事も理解はしているけれどそれだけだ。
でもそれが正解なのかもしれないし、悪いのかもしれない。ここまで大事になるまで手を打てなかったのだし。それでも何とかなってるのなら後は僕達が踏ん張るしかない。
「行ってきます、チャーリー」
ハグをしてから出発した。
「いってらっしゃい、アキ、スフォラ」
神界に入る転移装置は管理組合の物と交換した。セキュリティーがそれだけで上がったので少し安心だ。そして時間の流れもここで切り替えれる。十日ぐらいを一日に纏めれるので助かる。
「紫月達はもうちょっとお喋りする? 僕は今から出かけるよ。神界の明日に繋げるから今日はもう帰ってこないよ」
「アキ、分かった。もうちょっとお話ししたらアストリューに帰ってるね?」
「うん。ステージは四日後だからまだリハーサルがいるしね」
「うん、待ってるね」
いつものハグをして別れた。アイリージュデットさんも微笑んで送ってくれた。
「行ってきます」
転移門をくぐると、調度シュウがこっちに歩いて来ていた。タイミングがばっちりだ。挨拶を済ませて早速聞いてみた。
「それで、このメッセージって何?」
「悪神の残りが出たらしいんだ。ドワーフ族が洗脳されてるって噂で、アンデッドと組んで何か始めてるって言うんだ。皆あんな瘴気の場所に集合し始めているから絶対やばいって言ってて、討伐の為に兵が集められているんだ」
「え? 討伐ってまた神敵になりたいの?」
誰に聞いたんだかめちゃくちゃだ。良く聞くと冒険者ギルドにそんな噂が出ているらしい。皆ってギルドの情報なのかな?
「何言ってるんだ? アンデッドと手を組むなんて悪神だろ?」
「違うよ。ちゃんと調べないとダメだよ? そんな噂を丸呑みしちゃ。ドワーフ達は第十四フィールドにあった鉱山の麓に移ったけど人族の奴隷にされそうになって逃げてきたんだよ。好きで戻って来たんじゃないよ。それに瘴気はいずれは綺麗になるからね……」
「え? 全然分からないぞ?」
「浄化は百年単位でないと無理だし、そんな地でも奴隷落ちよりはマシだって帰ってきてるんだ。税金の額を聞いたら驚くよ? 人族の十倍だよ? 吹っかけられて払えないと奴隷にされるんだ。最低だよ」
「それは、知らなかったな」
「第五フィールドを目指してるドワーフ族を見れば分かるよ。検問所なんて勝手に作って通行料をせしめられてるから!」
「まさか? そんな事が……分かったよ。ちょっと見てくるよ」
シュウと一緒に検問所のある場所に行ったら、調度カジュラがいた。
「あ、カジュラさん。何してるんですか?」
シュウがカジュラを見て驚いていた。
「おお、アキ様こっちへ要らして下さるとは。恐悦至極にございます。シュウ殿もご一緒でしたか」
「どう? 通してもらえそう?」
「はい、なんとか第二陣は渡れそうです」
少し表情の硬くなっているカジュラの顔から、交渉は随分大変だったのだろうと推測した。
「良かったよ。暴動は起きてないよね?」
「なんとか。しかし、通行料を上げてきました。予想通りでございます」
「そっか。神樹の通告も無視なんだね?」
唇を噛んで検問所の方を見た。
「ええ、そのようです」
カジュラも怒りを抑えれないのか眉間の皺が深く刻まれている。
「分かったよ。それは上に報告しておくね」
「よろしくお願い致します」
カジュラは頭を下げた。シュウは集っているドワーフ達の姿に愕然としていた。着の身着のまま夜逃げ同然にぼろを着てやせこけた体を前に進めている。シュウの握った拳が震えていた。
「シュウ、出来ればシュウ達からも通行料の取り下げを言って欲しいんだ。シュウ!」
「はっ、ああ、済まない。そうだな。通告があったんなら、俺達の仕事だ」
通行料ってこれの事かと呟いていた。どうやら何のことか分かってなかったらしい。もっとこっちとの繋がりを持たないとダメだと思う。
「頼んだよ。炊き出しはこっちでやってるから」
シュウは直ぐに戻って皆を呼んだみたいだ。神樹の僕としての仕事をやり始めた。神樹の印が手の甲に神々しく印されているのを見せて睨みつけながら検問所の兵士達に理由を聞いていた。
炊き出しはドワーフ族の動けている人達と一緒にやった。神界に植えてあった野菜を使って神界の黒い大鍋も良い感じで役に立っている。
猛毒を作り出してからは炊き出し以外には使っていないし、綺麗に洗ってあるから大丈夫だ。木の棒を木のお玉にしてぐるぐるかき混ぜている。木の盾はやっぱり鍋の蓋だ。ドワーフ達も見覚えのある木の盾を見て苦笑いしていた。
ドワーフ達の身長は平均が百三十センチ強で、大柄な人は僕より背が高かったり、小柄な人は胸の辺りまでしか無かったりとバラバラだった。合法ロリから髭もじゃまで揃っている。
この炊き出しと同時進行で、冒険者ギルドにて第五フィールドの悪神の討伐隊の募集が始まった。それを知ったのが三日後だった。僕の造った建物は討伐隊の先攻に壊されてしまった。
地下の魔法陣は無事だったけど、建物が壊されたのはちょっとショックだ。
それ以上にショックで倒れ込んだドワーフの髭もじゃの族長は、ショック死寸前だった。
駆けつけたシュウ達によってなんとか建物を壊した人達の誤解を解いてもらって、冒険者ギルドに依頼の取り下げと、兵の徴集を止める様に人族の連合討伐隊にも通知を正式に出す事にした。悪神の居場所を吐けと尋問されていたドワーフ達も解放された。
神樹の正式な通知を持って行ったシュウ達は、連合討伐隊に門前払いを食らったらしい。読まなければ良いと思ったようだ。僕は神罰として集まっていた各国の兵達の食事の炊き出しに、マシュさん特製の下剤を入れてあげた。
食べ物を胃に入れるとものすごい痛みを伴いながら、必ず下すという世にも恐ろしい物だ。三日三晩効果が続く。
三日三晩考えるが良いと夜空に光で文字を書いた。マシュさんの台詞だ。
シュウ達には一旦通知を下げて貰った。解毒剤K4も効かない物で飲むと余計に酷い痛みに襲われる。水以外は受け付けなくなった彼らは神罰を恐れる様になるはず……。




