お洒落泥棒は止められない 1
◯ 1
「ただいまー」
玄関を開けながら声を掛ければ、キッチンの奥からえぷろんを外しつつお兄ちゃんが出てきた。
「お帰りー玖美」
相変わらずな兄だ。ちっともかっこ良くない。
友達に会わせるのが恥ずかしいと思っていた。
でも、最近親しくなった愛美さんと利香が言うには、可愛い感じで親しみがわくタイプだって。
けど、それって男としては終ってない? お兄ちゃん、しっかりしようよ。
「またスカートはいてる〜、ぶうぅ」
しかも手の込んだ一品物だし、すごく可愛い。お兄ちゃんのあの世での友達だって言う、マリーさんの新作かな? わたしも着たいのにっ。
「え、だって今日は家族で出かけるし……従姉妹設定ならこの方が良いから」
しどろもどろにいう内容は確かにお出かけの設定だから家では許されてるけど……。
だからって妹より可愛くしたらダメだから! ちょっとは遠慮をしてくれなきゃ、困る。
大体、男とは思えないくらい脚とか筋肉が無くて華奢で綺麗なんだもん。しかも幽霊だからかお肌も白くて綺麗し、女の子としか思えないよ?!
一昨年の暮れに兄が他界したのは周知の事だし、幽霊のままうちに居座っているのは内緒の話だ。
ちゃんと神界と冥界の許可は取ってあって、神様の許可があるから大丈夫なんだけど、それは今はどうでも良い。
その可愛い服を私によこして欲しい。ちょっと胸回りが苦しくなるけど、その可愛いコーデは共同でも良いはず……。
共同……良い事を思いついたっ! わたしって天才!
「ねぇ、お兄ちゃん? お兄ちゃんの服ってわたしと同じサイズだし、時々交換しない? そしたらワードローブも二倍だし、クローゼットもこっちの私のに入れておけば良くないかな?」
「え?」
案の定、良く分かってない顔だ。くふくふ……。
「だからね。可愛い服を妹にも着させて欲しいなって思ってるの。天国にあるお兄ちゃんの服は私も着れるでしょ? こっちに置いておけば一々取りに行かなくて良いし、私も嬉しいし、一石二鳥でしょ? どうかなって思うんだ〜。お願い〜」
兄の顔を見れば可愛い妹の頼みをどうしようか迷っている感じだ。もう少し押せば頼みを聞いてくれそう。
なんだかんだ言ってわたしのお願いは聞いてくれるのだし、靴のサイズから身長まで同じなのだ。今なら共同でいける。
「そ、そうだね。規格がこっちのに合ってるのは少し持ってくるよ。本当にマリーさんの服が好きだね、玖美は」
怪訝そうな顔をしていたけど、ちゃんとお願いしたら微笑みながらお兄ちゃんは承諾してくれた。
「やった〜! 楽しみにしてるね? 高校に入ってから服が一杯いるんだもん。嬉しいなぁ」
ちょっと大げさに喜んでみせたら、お兄ちゃんも嬉しそうだ。うん、ちょろい。
これで今度の女子会はばっちり。従姉妹と服の交換したって言えば良いしね。
この後のお出かけで、お母さんにはしっかりと上機嫌な訳を聞かれたけど、そんなに顔に出てたかな?
お兄ちゃん程じゃないと思ってるのに、おかしいな……。
三日後に持ってきたお兄ちゃんのワードローブはやっぱり可愛かった。
メンズっぽいのも何点かあったけど、充分いける。甘すぎる時にはミックスするとぴりりとコーデが締まっていい感じ。
特にこのピンクのハイカットのスニーカーはすごく可愛い。
短パンに合わせてボーイッシュに決め、靴の色だけは女の子なところが可愛い。さすがマリーさん、分かってる……。
あ、このトリコロールカラーの線が特徴のワンピースは可愛過ぎる……。お兄ちゃんにだけ着せるなんて勿体無いよ。
大丈夫、わたしがたっぷり着てあげる〜。
「あ、その服はこっちの靴と合わせると良いよ。ここにその服に付いてるリボンと同じので作ったシューズクリップと、あと髪留めもあったと思ったけど……そっちの袋に入ってない?」
言われて探したら出てきた。
「うわぁ、さすが。全身抜かり無しだね?」
「うん。マリーさんも玖美が着た時の感じが見たいって。着たらまた写真を取って送ってよ」
「勿論、そのくらいはするよ〜。お礼言っておいてね、お兄ちゃん」
お兄ちゃんはかっこ良くないけど、良い知り合いは多いよね。グラスグリーンの友達に先輩もいるし、人脈には恵まれてそう。
下手に警戒心を抱かなくていいからっていうのは利香ちゃんの意見だけど、何となく分かるかも。
男としては見られなくてもめげなくていいからね、お兄ちゃん……。
幽霊の事情はどうなのか知らないけど、いい人に囲まれてるし、お兄ちゃんに合いそうな人をきっと誰かが紹介してくれるよ。
無駄に女子力が高くて、普通の女の子には近付き難い不憫な兄の面倒を見てくれてる神様にも、祈ってお願いしておいてあげるね。
好きなキャラとかいますか?
明日は新章 てんのさばきとあくのぎしき に入ります。次回は最近出番の無いあの方々がいらして下さいます。




