72 我慢
◯ 72 我慢
「来るとは思ってたけど、来たね……」
少し緊張気味のレイはそういえば余り見た事が無い。
「そうなんだ?」
「まあね、これを乗り越えたらなんとか再生は軌道に乗りそうだけどね……管理組合との戦いもまあ悪くないかな」
レイの戦いは今始まった。魔法力BOの事だ。開発するにあたっての権利をもう一度取り決めるという物だ。結局はここの中間界で開発しているので、組合の方ももっと噛ませてもらって利益を手に入れたいのだろう。なんとかここの管理権を譲るようにと言い出している。
そんな話は蹴るしか無い訳だけれど、ポイントを今直ぐ返せとか無茶を言い出すことは無かったのでホッとした。事前に散々レイにそんな交渉になるかもと脅されていたので拍子抜けした。新人がやってるなんてと舐めてるだろうから覚悟をしていたけれど、それは必要なかったみたいだ。
アイリージュデットさんに移しても良いんだよ? というのがこっちの逃げになる。彼女はフリーだから管理組合もそんな話は出しにくくなる。
僕が管理組合員としてここに入ってないからややこしい訳なんだけど、組合員として入っていたら大手を振って権利を言えたのが、死神のネットワークを使って冥界から入って知り合いに会いに行ってるのが始まりなので、向こうは幾ら新人とはいえプライベートに文句は言えないのだから苛ついている。
僕がプライベートに借りてるポイントに関しても何も言えない。最初に管理組合に迷惑がかからないようにとバックアップ無しで借りてるのだから。というか条件はそれでしか貸してもらえていない。それがここに来て管理組合からすると裏目に出ている訳だ。
「折角良い感じになってきてるのに手放せというのもおかしいよ? 何の権利があるって言うの。大体最初に手を入れるのを嫌だと言ったのはそっちだよ? 今更新しいエネルギーの権利をただ譲れと言われても無理だよね」
「しかし、我々が管理した方が速やかにここの世界も軌道に乗せれるはず。それは認めて下さってますよね?」
「まあね? でも新人でも十分やってるし、手放す理由は無いよ? そもそもマシュもあれを手放すくらいならこの世界ごと地獄にでも沈めると思うよ?」
「く、やりかねないから恐ろしい……」
にこやかに続く話は両者の意見は全くかみ合っていないのが分かる。焦っている管理組合の幹部らしき人は、不利なのを分かっていてなんとか話し合いを続けようと口を開いた。マイナスポイントの半分を戻すからという話もこっちは蹴っている。そんなの無くても戻せるのは分かっている。
組合の幹部が出てくるくらいには大事になってるのだし、将来性は抜群だ。確かに石油を掘り当てたのと同じだからそんなもんか。話は結局纏まらないままに終った。
「ふうー、断れれば良いんだけど無理だからねあれは。しつこく来ると思うよ? 早く魔法力BOの開発された物が軌道に乗ってくれると良いけどね。まだ世間には知られてないからこんな話を持ってくるんだ。プレッシャーを与えて譲れと言ってるんだよ。ただの迷惑だよ、ビジネスじゃない。まあその内ギリギリには大きめの投資の話をしてくるからそれまで持ちこたえないとね」
さすがに幹部の話を聞かずに蹴るのは無理ならしい。
「うん、良く分かんないけど、これまで通りにやれば良いんだね」
「そうだよ、頑張ろうね?」
「うん、レイも大変だったね。温泉行く?」
「そうだね、マッサージ付きが良いよ」
僕達はアストリューに戻って一緒にリラックスした。
「ふふ、管理組合もアキを怒らせて他に移られるのは困るみたいだね。みかんの中間界は都合が良いから手放せないんだと思うよ。魔法力BOと秤にかけて拮抗するくらいにはね」
ご機嫌なレイはそんなことを言った。評価されてるんならちょっと嬉しい。他の神が都合良く手入れをしても大丈夫な未完成なみかんの中間界は、組合が色々と手を入れてあちこちに出荷されることになっている。足りてない中間界を補う為だ。
それは何故かストップしている。魔法力BOのせいだ。それを止めるのももう、無理な所まで来ている。動き出した中間界事業もせき止めるのは難しい。元々管理組合が一番力を入れてるのが中間界の管理だ。それをなおざりには出来ないので、僕達は時間を稼ぐだけで良い。全ては上手く回り出す。
増え続けていたマイナスポイントの数字が止まるのももうすぐだと聞きながら眠りに落ちた。




