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世界を繋ぐお仕事 〜世界征服編〜  作者: na-ho
しんらいとさいせい
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70 破綻

 ◯ 70 破綻


 地球では二月に入って一週目を過ぎた今日は、夢縁のクラスアップ試験を受けている。実体化させた包帯を出してなんとか試験は合格した。星四つだ。


「いやーん、千皓君に追いつかれちゃったよ? 優基〜、どうしよう〜」


 沖野さんは僕の合格を聞いて成田さんにしなだれ掛かっている。相変わらずな感じだ。


「合格おめでとう。やるなぁ」


 そんな沖野さんをサラッと流してから支えて立たせつつ、成田さんは余裕の笑顔でお祝いの言葉をくれた。


「ありがとうございます。でももうすぐ受けるんですよね?」


「ああ。再来週に決めている。実力テストもまたあるみたいだからその前に受けとくつもりだ」


 成田さん達も星五つを目指してクラスアップの試験を受けるみたいだ。


「そうなの〜。実力テストがまたあるなんて、聞いてた〜?」


「あー、恒例にするとは言ってたかな?」


「うう〜、黙ってるなんて酷いぞ?」


 唇を尖らして攻められた。


「いや、でも僕も聞くまで忘れてたし……」


 頭を掻くしか無い。


「まあ、頑張るしか無いな」


「僕も高校の方の期末試験があるからそれもそろそろやらないと……」


「最終学年は殆ど受験の為って感じだしな、うちの学校は……」


「大学は近所ですか?」


「ああ。そこに入れると良いんだが、近いけど遠いからなあそこは」


 苦笑いをしている成田さんはそれでも余裕を感じる。この調子なら大丈夫そうだ。僕みたいにギリギリじゃないのが羨ましい。成田さんは理系だし、沖野さんは文系だから大学は離れるかもと寂しそうだった。

 そこは全く心配要らなそうな安定のカップルだと僕は思ってるけど、どうなんだろうか。そこまでは突っ込んだ話はしてないし、二人の問題だ。乗り越えると思うな、この二人なら。

 成田さん達とはそこで別れてトシに会いに行った。トシの周りにはハーレムが出来上がっていた。


「なんか増えてるけど……?」


 二人だったのが四人に増えていた。しかもメンバーが違う。


「いやあ、気が付いたらいつの間にかこうなってて、一人どう?」


 トシの助長は留まる所を知らないみたいだった。


「遠慮するよ。後ろからの殺気に気をつけてね? じゃあ僕は帰るよ」


 あの良く分からない愛憎空間は僕には居心地が悪過ぎる。ささっと出て行くのが良い。しかし、次の日にはトシの悲報を聞く事になるとは思わなかった。

 駆けつけたら、随分こっぴどくやられたみたいで、夢意識体はぼろぼろになっていて、精神も傷だらけですっかり弱っていた。


「つけが来たみたいだね。あんな状態に置かれたらどんな行動に出るか分からないよ? ちゃんと向き合わなかったトシが悪いんだからね?」


 女性達四人によってたかって妙な術を掛けられ、素人ながらも愛憎の込められたそれは厄介で、随分な目に遭ったみたいだった。


「自業自得だとか言うのか?」


「誰が見てもそうだと思うけど? 何か反論があるの?」


「俺がハーレムをやったらダメなのか? イケメンは良くて俺はダメなのか?」


涙目で訴えられたが、ハーレム自体が難しい状況だと思うんだけど……。


「そんな事いわれたの? イケメンでもダメだけど、それを許している女性はそれなりだよ。見た目とステータス重視だったりするんだ。トシの将来性を見込んでのハーレムだったんだし、まだ良い感じだったはずだよ? でも、それだけに少しでも成績が落ちると足下を転がされるんだ。最近さぼってただろ?」


「う、それは彼女達が付き合ってって言うから、色々とデートしないと……」


「言い訳はダメだよ! その気持ちを利用してあんな酷い状態にしておくのが悪いんだ。破綻して当然だよ。異常な空間に発展しそうなくらいの怨念が溜まってたよ? 殺されなくてよかったよ、本当」


 トシはしばらく安静にする事になった。夢縁でのこの事件は警察沙汰になったせいで有名になった。複数の女性をもてあそんで捨てた勘違い男を、その女性達が結託してやっつけたという武勇伝になっていた。

 ほとぼりが冷めるまで休んだ方が良さそうだ。幸い、十日は安静が必要だ。心のケアも含めてだけど、じっくりと反省した方が良い。


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