69 簡素
◯ 69 簡素
「この女が黒の魔術師がいるから討伐するべきだってギルドに報告したらしいのよね」
と、神界の会議室に連れてこられた倉沢さんがいた。蒼白で泣きながら命乞いをしていた。チャーリーとリーシャンがカフェをほったらかしてまで駆けつけている。
「あ、鮎川君助けて!」
助けてと言われても……。昨日は結局連れて行かれたギルドからはなんの収穫も無かったのだけど、ここにいるのなら大丈夫だろう。
「助けてですって?! アキちゃんを売ったのに、何言ってるの〜? アキちゃんはカフェをお願いね。お仕置きが必要なようねぇ?」
威圧を掛けているのが目に入ったが、リーシャンに連れられて僕はカフェに戻った。成る程、どうやら事件は繋がっていたらしい。マリーさんに喧嘩を売った自分を怨んでくれると良いな。
シュウ達に闘神の説教を受けているから倉沢さんは無事だと報告した。黒の魔術師がいるから討伐するべきだと冒険者ギルドに報告したのが倉沢さんだったらしいと、それも付け加えておいた。
シュウからは仲間が済まない事をしたと闘神に伝えて欲しいとメッセージが届いた。
倉沢さんは神樹とレイの前で罪の告白をさせられ、反省するまで神の僕としての仕事を休むように言われていた。実質降格だ。
「すごいね。仲間のお金を使い込んでアキの討伐依頼を出す為の資金を出したみたいだよ?」
レイが告白の内容を教えてくれた。実際は質問の答えは言い訳しかなかったらしいけど、レイ達にそんなものは関係ない。心を読んでしまえるのだから。
「え? シュウはそんな事は言ってなかったよ?」
「そりゃだそうだよ。自分達の失態だし言いたくないに決まってる。彼女はカジュラにも色々とアキの悪い部分を吹き込んで、討伐対象だから一緒に捉えようと言ってたらしいし」
「カジュラにも?」
「もう! アキの鈍感! 利用されてるのに気が付いてないんだから!」
レイの話だと、シュウ達も神界入りを狙っているのだとか。僕を頻繁に呼び出してるのは神界との繋を取りたい為だったみたいだ。カジュラが神界の者だと思っての倉沢さんはあの態度だった訳で……。
しかし、シュウ達は神樹の管轄だと僕は思っているので、扱いは変わらず想いはすれ違っていたようだ。そうならそうと言ってくれないと、僕はそっちの話には疎いんだから無理だよ。
「それでどうなるの?」
「管理神であるアキの一存だけでは決められないよ。大体下の事をする人間が足りないから喚んでる訳だし、それを放棄して神界入りされても困るよ。彼らにはここの仕事は無理だし、カフェの店員くらいしか何の役にも立たないよ」
う、カフェの店員の僕は肩身が狭い……。
「アキは良いんだよ。人手不足の所に入って色々出来てるし、宝箱の内職まで出来るしね」
「う、うん。そうだね」
確かに言われたらそうだ。神官としての治療に製薬の手伝い、カフェの店員に宝箱の魔道具作りに魔法アイテム作り。人界の物資の調達までやっている。冥界との交渉もレイに手伝ってもらいながらもやっているし、中々ハードだ。
「みかんの中間界だってアキのだし、新人としては頑張ってるよ」
「良かったよ。それでどうなるの? 彼女は」
「神界で下働きするって言うからさせる事になったよ。自分のする事が見つかれば良いけど、無理だろうね」
「そうなんだ。頑張るんだね?」
と言ってもそんな仕事あったかな?
「まあね、アキは手伝ったらダメだからね? 彼女の為にならないから」
「分かったよ」
そんな感じで決まったみたいだ。結局は二日もしないうちに人界に戻って行った倉沢さんは、みんなに謝ったらしい。
神界は何も無かったと話しているらしい。そりゃそうだろう、貧乏なこの世界にきらびやかさを求められても困る。そもそも会議室と休憩室以外は無い簡素な所だし。




