66 願望
◯ 66 願望
久々に夢縁に来ている。草色ブレザーを着ている木尾先輩とその勉強会のメンバーは、めでたく全員が草色ブレザーに昇級していた。
「鮎川か、最近さぼっているだろう?」
園田先輩が方眉を上げてさぼりはダメだぞと目で訴えてきた。
「はあ、まあちょっと」
「そんなんじゃ、このブレザーは着れないぞ?」
木尾先輩は草色のブレザーをピッと引っ張って自慢げに見せてきた。
「そ、そうですね」
「星三つからがきついんだ。四つ目、五つ目がな、難しいからしっかりと食らいついておかないと大変だぞ? それに特化はそれしかないから素質を伸ばせないと難しいと聞く」
加島さんも真剣なアドバイスをくれた。
「う、あ、はい」
確かに。難しいと思う。でもかなり良い感じにはなっている。戦闘でテンパって無かったら眠りの術はなんとか目の前の人にだけ集中して掛けれるようになっていて、後は慣れるだけだと言われている。
巨大な芋虫やら蜘蛛やらムカデに囲まれてさえいなければ何とかなる。もっとも、昆虫類は眠らせるのがちょっと難しいのであちこち漏れるのは仕方ない。それに人間の方が掛かりやすいのだから……。まあ、言い訳はこのくらいにしよう。
「もう二年目だろ? 鮎川も。そろそろ就職先も決めとけよ?」
「はあ」
「強力なコネがあるんだ。神界入りも夢じゃないだろ?」
「いや、それはどうかな? ちゃんと実力を取ると思うぞ。意外とそういう所はちゃんと見てる気がするんだよな」
「確かにな。猫が縁でもちゃんと実力を付けろよ?」
「はい。そうします」
「成田もまたクラスアップにチャレンジするとか言ってたし、また上がりそうだな?」
「そういえばあいつら頑張ってるよな」
「じゃあまたな。もうさぼるなよ?」
草色ブレザーの集団は行ってしまった。確かに、星三つから実体化に空間の術にと難しくなる。暗示をかけて記憶操作だとかも出来るなら神界警察に入れる率が高くなる。
僕は既にその辺りは組合の方でやっているので復習みたいな感じだ。一応最低限の講義を受けておかないと、クラスアップの試験は受けれないので消化しているところだ。
「お兄ちゃーん」
「あ、玖美。今日は来てたんだ」
駆け寄ってきた妹に腕を組まれながら進んだ。
「そうだよ? メッセージでお兄ちゃん、来てるって入ってたし。明日は家に来れるんでしょ?」
「うん。あれ、そのブーツは……」
「去年貰った奴だよ」
マリーさんのお手製のブーツだ。そういえばそんな事もあったなと思いだした。靴作りはここ最近出来ていない。またやろうかな……。学食の鴨南蛮を注文して一緒に食べた。
「どうしたの?」
「ううん。最近趣味の事が出来てなかったからゆっくり取り組もうかと思って」
「そうなの?」
「うん、まあね」
「それでね、またお洋服が欲しいな、お兄ちゃん。去年のはもうサイズがちょっとダメなんだ〜。この辺が窮屈で……」
胸の当たりを抑えている。上目遣いにお強請りされてしまった。
「うん。マリーさんに頼んでみるよ。サイズが変わったなら全身の撮影もしとこうか」
「へへ〜。ちょっとだけ大人な感じにしてね?」
嬉しそうに頬を緩めている。デートにでも着ていくんだろうか?
「そうだね。デザインを送るよ。それから選んでみて?」
「了解であります!」
おそばを食べ終ってから全身撮影をした。なんとなく身長が僕より高くなっているのは気のせいじゃ無いと思う……。少しヒールのあるブーツのせいだとは思うけれど視線の高さが……いや、気にしちゃダメだ。妹の成長を喜ぶんだ。
ちょっぴりブルーな気分で帰ってマリーさんに服を頼んだ。僕はこっそりとぺたんこ靴を妹の為に作り始めた。ちゃんと足が痛くないように靴底と中敷きにはこだわった。
合わせやすい茶色の靴が出来上がった。シューズクリップを幾つか用意しておいたので服に合わせて付け替える事が出来る。マリーさんが作った服と一緒に入れておいた。
……自分の小さい心に自分で呆れながら、もうちょっとだけお兄ちゃんでいさせてと良く分からないお願いを靴に込めておいた。




