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世界を繋ぐお仕事 〜世界征服編〜  作者: na-ho
えさのかち
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6 衝動

 ◯ 6 衝動


 随分活動的な日が続いていたので、今日は妖精達と一緒に遊んでリフレッシュだ。庭のカシガナも秋になると同時に実がならなくなって、葉も色が変わり始めた。紫紺の葉の色が薄れて蒼く染まり出した。

 地球でも十一月に入った途端に上着が必須になった。夢縁では秋冬用のコーデの人気投票があって、にぎわっていた。御門さんも参加していて、沖野さん達と盛り上がっていた。

 今年も年末のパーティーの招待状が雨森姉妹から届いた。去年は結局参加出来なかったパーティーだ。なんせ調度僕の葬儀の翌日だったのだから無理だ。そして、組合の新人交流会の案内も届いた。

 組合の監理している世界の一つみたいだ。どうやら宇宙ステーションの様な感じの場所で、宇宙空間の星を眺めながらの交流だと書かれている。月から見た地球の様なそんなイメージをしながら参加の返事を書いて送り返した。


「何だこれ?」


 僕は久々に開いた新人のコミュニティーを見て、首を傾げていた。いつの間にか僕の記事は全部消されて無くなっていた。うーん、放置しすぎたかな? まあ、もう美容のモニターは止めたし書く事もなくなったから閉鎖しようとは思ってた。でも自分でやったんじゃないからちょっと気持ち悪い。

 ヴァリーとホングに僕の記事を消したのか聞いてみた。二人とも気が付いてなかった。ヴァリーも最初は記事を載せていたけれど、最近は面倒くさがって全く更新していなかった。ホングは更に酷かった。昇格の試験があったので全く見てなかったらしい。僕も人の事はいえないけど、まあ良いかと開き直った。後でレイに聞いてみよう。モニターを降りたから記事を消したのかもしれないと思ったからだ。


「そんな事してないよ。それに本人にしか消せないはずだけどな? 不正に消したのなら問題だけど、元々消そうと思ってた物なら被害意識が薄いね。でも、セキュリティー的に困るから一応調べるよ」


 画面越しにレイが首を捻っていた。次の日、レイからメッセージが届いた。いくつかの新人のコミュニティーのページとリシィタンドさんから話があるという内容だった。

 早速ページを見てみると、フォーニのページと犬ぞりで一緒になったミントさんのページだった。フォーニの記事の内容が変だった。

 いつ、僕と最近会ったんだろうか? この前に会った時も上司にこびて嫌な感じだったと書かれているが、そもそも星深零の区画にはここ最近は行けていないし、上司はそんなところにいない。というか上司ってフォーニの上司だろうか? 良く分からない文面があちこちあった。

 というかこの二人による僕の悪口が書かれていて、良く読むと、僕のページを消してやったと書かれていた。それも正式に力のある人に頼んで、組合から追い出すからとか書いてあった。何の事か分からずに首を傾げるしかなかった。

 ページを消せたのはそれだけ酷い人間で、僕を侮辱したにも関わらず罪を償っていないからと書かれていた。盗み癖があるとか上の者には良い顔を見せて尻尾を出さないとか悪口が書かれ酷評されまくっていた。

 ミントさんもそれに乗じて、そんな人間だったと証言していた。時々メイナーさんも似た様な事を書いていて、嫌な感じで繋がったなという印象だった。そこに何人かが書き込みをしていて、制裁が必要だとか新人交流会で吊るすとか書いてあった。

 フォーニの最新のページにはページが消されたのはその権限がある人に交渉して、僕の言葉が嘘でないと証明されたからだと目立つように赤で書かれた文字を追いながら、どうなってるんだと頭を悩ませた。まあ、明日リシィタンドさんに聞けば分かる事だと思い、その日は早く眠った。


 次の日、レイから連絡のあった時間が近いので星深零の区画に足を運んで、待ち合わせ場所を探していたら後ろから声を掛けられた。


「アキ、この区画に忍び込むなんて卑怯な真似をして、ただで済むと思ってるんだ?」


「え?」


 振り返ったら、敵意をむき出したフォーニが睨みつけてきた。


「何でいるんだ! ここは馬鹿が来る所じゃない! 今、通報したからすぐに捕まる。逃げても無駄だから! 今までの事も全部、頭を下げて貰うよっ! 僕の場所だ、勝手に入ってくるなんて許さない!!」


「あ、あっちか」


 僕は何か言ってるフォーニの後ろに、待ち合わせ場所を見つけたので完全にフォーニを無視して進み出した。いやだって、何を話せば良いのか分からないし……。そこにいない方が良い気がしたんだ。目的地の方に走リ出した。


「無視するなんて! 犯罪者のくせに……許さないっこうだっ!!」


 五メートル以上はなれてたのにいきなり真後ろに気配と声がする。確認しようと振り返った瞬間、嫌な感触がした。フォーニが振り上げたきらりと光る刃が振り返った目に入った。嫌な感触は殺気?

 一撃目に気が付くのが遅かった。とっさに腕を上げてかばったが、腕と頬を切られた。次はなんとか足を使ってスフォラが避けたが、動きは向こうの方が早い。電撃が出せない区画で反撃が難しい。回避しても身体強化とかされてるフォーニをさばききれなし、防護も次々と壊されて行く。


「思い知ったか! 弱いくせに僕の前に立つな、邪魔だよ! 報いを受けろ!」


 警備の人の声がしてフォーニが蹴り付けるのを止めてどこかに走り出した。僕は幽体になってスフォラの止血を始めた。星深零の区画の小さな公園の片隅で、血が飛び散った上にスフォラが死体のように転がっている。そこにフォーニが呼んだ警備の人が走ってきた。


「僕は見ました! 彼が殺しました! 全部アキがやりました!」


 その言葉に僕を捕まえようとしたが、スフォラが血まみれで警備の人を睨んだおかげでなんとか留まってくれた。


「生きてるじゃないか! ちゃんと治療してるし、一体何があったんだ。先に救急だろう!」


 警備の人が非難するように叫んだが、死んだと思ったと分けの分からない言い訳が聞こえた。そのまま警備の人は返り血を上着で隠しているフォーニにもう一度状況を聞いていた。逃げずに何でそんな嘘をついてるんだろうか? ここの人達の事をもっとちゃんと知ろうとすれば、そんな行動は出来ないはずなのに……。


「そこの男のくせにスカートをはいてるそいつが殴るのを見ました!! 何してるんです?! 早くしないと犯人が逃げます!!」


 叫びながら説明をしていたが、完全な嘘だ。切られた跡を誤摩化せないのに、というかフォーニはこんな暴力をなんで僕には振るってるんだ? 岡田さんのあの執着を思い出す。嫌な感じだ。


「嘘ですね。警備の方、捕まえなくていいですよ。救急班は呼びましたか?」


 リシィタンドさんが騒ぎを見たのか駆けつけてきたみたいだ。息が上がっている。


「はい。でもスフォラは技術者を呼ばないと!」


「マシュを呼んだから大丈夫だよ。顔は大丈夫?」


 レイが横から一緒になって癒しをしてくれた。大きな出血は収まったけれど、まだ傷口は塞がってはいない。光のベールは朱に染まっていくばかりだ。


「レイ……」


「泣かないで、治療が先だよ」


 後でこの時にはもう、レイは僕の治療に入っていたと知った。スフォラと同じ傷が出来ていた。血は出なかったけど。


「うん」


 マシュさんが駆けつけてくるまで、そのまま待った。折れて捨てられていた凶器のカッターナイフはフォーニの持ち物だと直ぐに割り出された。犯罪者である彼の持ち物は全てチェックされていた。この事件からは僕の周りではフォーニの呼び名は切り裂き魔になった。


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