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世界を繋ぐお仕事 〜世界征服編〜  作者: na-ho
しんらいとさいせい
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63 同胞

 ◯ 63 同胞


「あ、マリーさん」


「待った〜?」


「僕も今来た所だよ」


 管理組合の異世界への移動審査の順番待ちのエリアで待ち合わせていた僕達は、渡航手続きを一緒に済まして魔族世界の見聞旅行へと出発した。後ろには魔族の悪神ハイドーリアさんが付いて来ている。

 悪神であるので犯罪者用の魔法契約をして、旅行の同行をする事になった。マリーさんの意向なので不安は残るけれど仕方ない。


「この人はいないと思ってくれていいのよ〜。アキちゃんはアキちゃんの心のままに決めて良いのよ? この女は現状をちゃんと知る必要があるから連れてきてるだけなの。んーと、こっちはこっちのお勉強があるのよ〜。気にしなくて良いからね?」


「そうなんだ。分かったよ。じゃあ行こうか?」


 僕達の順番になったので転移装置前に移動した。やけに静かだと思ったら勝手には喋れないみたいだった。こっちから話し掛けないとダメとかそんなのがあるらしい。何か奴隷の契約より酷くないかな? 


「勿論正式の悪神用の魔法契約よ。このくらいしないと旅行先の受け入れが無理なのよ〜。本人承諾だから問題ないわ〜」


 聞いてみたら必要な処置ならしい。


「そうなの? 旅行も大変なんだね」


「そうよ〜、悪い事しちゃダメなんだからね?」


 子供に向かって言うみたいな注意をされてしまったが、少し冗談まじりだ。遠回しにハイドーリアさんへの注意な気がする。


「分かったよ。不自由だね」


 少し気の毒なくらいだけど、受け入れてもらえないのなら仕方ない。というか何で付いて来たんだろう? まあ取り敢えずは最初の世界だ。組合の管理している世界の一つで比較的良い感じに受け入れられている場所だ。


「ようこそウェスターゼへ。話は聞いております。魔族の見学ですね? 検討なさるだけでも大変喜ばしい事です。そしてそちらの者の無礼をお許し下さい。どうも直情型が多くて……その上騙されやすいと来ておりますのでフォローの必要な種属と見て下さい」


 そう言って矢継ぎ早にそんな謝罪と魔族の特徴を一気に喋ったここの魔神であるザラーデさんは、知的な雰囲気を漂わせたやり手のセールスマンの様な人だった。一瞬後ろのハイドーリアさんを見る目が鋭く光ったような気がする。悪神となっている姿が余程嫌なのか非常に厳しい気を送っている。


「そんなに気を荒立てたらアキちゃんが怖がるわ〜。静めて下さる?」


 マリーさんが僕がチョッピリ震えているのを見てお願いをしてくれた。


「これは失礼を、魔族の面汚しが目の前にいると思うとつい……後で少々お話をしてもよろしいでしょうか?」


「良いわ〜。暴力はダメよ?」


「勿論です。説教をさせて頂くだけです」


 額の青筋は内心の荒ぶった心を全く隠せていなかったが、腹芸の出来ない直情型というのは良く分かった。成る程と思いつつ、説明を続けて貰った。お話のお許しが出てからはザラーデさんは淀みなく丁寧に話を続けてくれた。


「こちらでは原始的な生活はしておりませんでして、魔物も大型のものが多いので乗り込み型のロボットを操縦する形です」


 こっちの世界を調べたのかそんな前振りから始まった。


「あら〜、機械文明なあれね?」


「貴方様には少々退屈かもしれませんが、そのような形です。魔族はその多い魔力によって高出力の武器を支えて戦う事が出来るので、戦闘面では優遇されております。が、反面非常に細かいことが苦手でして……戦闘以外はからっきしですね。たまにイレギュラーが現れますが実に少なくて地位の確立は中々進まないのです」


 はあ、と溜息を付いてからザラーデさんは神界の一室にある巨大パネルを見せてくれた。岩場と同じ灰色に塗装されたアニメチックなロボットが、巨大なピンクでタコな姿の魔物に向かって一斉に突き進んでいった。岩場の隙間から進んで魔物の出すソニックアタックをやり過ごして近づいたロボットが魔砲弾を撃ち込んでいた。


「……テレビか映画みたい」


 気が付くと口が開いていたので絞めて感想を言った。現実味の湧かない映像だ。


「まあねぇ、あんなのは中々体験はしないものねぇ」


 マリーさんは苦笑いだ。


「そうですね。このタイプの世界は管理が行き届きすぎて面白みに欠けるか、逆に敗退的になってくると暴走しやすく滅びるのが一瞬、という厄介さがありますからね」


「うーん。物語もその展開は多いね」


 確かにあんな兵器とかあるんじゃ、宇宙戦争的な展開になっても不思議じゃないかも。ヒーロー物だと危機一髪で助かるとかだけど、現実じゃそんなのは難しい。


「魔族だけだとあっという間に滅びますね」


 自虐的な言葉を吐きながらザラーデさんは巨大パネルを操作して街中を映した。その横にいるハイドーリアさんは唖然とした様子で巨大パネルを見ていた。


「これは街中ですね。人族、獣人族に妖精族が一緒に住んでいますね。ここは教育施設にあたります。魔族は戦闘は優秀ですが頭が悪くて中々司令官等には上れませんで、魔族は固まってスラム街に追いやられてます」


 パネルが綺麗な通りから裏通りの寂れた箇所に向かっていった。そこで暮らす魔族は割と楽しそうで生活もそんなに悪いようには一見見えなかった。


「まあ、スラムと言っても野宿と言った事はこの世界ではありません。浮浪者も殆どいませんし、社会福祉が充実しておりますからね……。ただ、税金喰いとは言われておりますかね」


 苦々しげにそう言って、ザラーデさんは今度はグラフを見せてくれた。魔族の学業終業者の数やら、危険地域での就労者数やら平均給料にその他の種属との違いをこんこんと説明してくれた。

 分かったのはお勉強が嫌いすぎて戦闘職を選ぶ人が多い事と、乗せられたら直ぐに突き進んでしまうお調子者が多い事みたいだ。

 そしてそれに危機感なんてさっぱり持っていないお気楽な種属だと言う事である。利用されやすい性格が災い過ぎて、生活水準が周りに比べて低い事になっているのにも気が付けてないおめでたい人が多いみたいだった。ある意味幸せで良いのでは? とも思う。生活水準を上げる為の頭が無いと嘆いているサラーデさんがイレギュラーなのだと良く分かった。

 ハイドーリアさんはグラフやら数字がさっぱり理解出来ないみたいだったし、何が悪いのかも分かってなかった。あのまま差がつきすぎると良くない感情が吹き出し始めるのは何となく分かる。なんとか気が付いてない程度におさめる必要があるとしきりにサラーデさんは言っていた。


「物作りなんてさっぱり興味ないし不器用だし、多少壊れていても気にしない大雑把さ。はあ、私はイレギュラーを優遇してなんとか魔族の地位を下げすぎないようにしております。横で難しい話について来れずに欠伸を連発している悪神なんて役に立ちませんね。このくらいは出来なければ神界に入るには役立たずだと分かっているのか?」


 怒りのオーラが立ち上がり出したので、


「あら〜、お説教タイムかしらぁ?」


 と、マリーさんが聞いた。


「そうですね」


「分かったわ〜。アキちゃんもう一回グラフを見ときましょ〜」


「うん。この学校って種族の皆が同じ所に通ってるのかな?」


「そうみたいね〜。思い切って魔族専用にしてしまう手もありよね。何処で挫折するのが多いかをデータを取ってやれば少しはマシかしら?」


「そうだね、この脱落者の数は無視出来ないね」


 サラーデさんは隣の部屋に眠たげなハイドーリアさんを連れて行ってドアを閉めた。


「起きんかこらっぁあ? 寝てんじゃねえぞ。良いか、そんなんじゃ魔神なんてなれねぇんだ! 数字くらい読めないと話に付いていけねえだろが? そんなだから悪神になんて落ちるんだ。大体世界を崩壊させといてそこを譲れだなんてふざけた事抜かしやがって、恥ずかしいんだよ! それにあそこはもう闘神もいるし技術神に知の会計に交渉、生命に再生の冥界の方も揃ってるし何処に入る気だ? ああん? お前の入る余地なんて何処にも無いだろうが!? 無茶苦茶言ってるんじゃねえぞ? 受け入れる場所なんて無いんだよ!! てめえが壊しといて美味しいとこだけ取ろうなんて甘いんだよ! この泥棒がっ!」


 ものすごい怒声がしっかりと聞こえてきた。そんなに叫んだら喉を傷めますよ?


「同胞からの罵倒は利きそうね〜」


「う、大丈夫かな?」


「大丈夫よ〜。あのくらい言わないと元がお気楽だからダメなのよ〜」


 マリーさんは全く気にしていないし、大丈夫だと言い聞かせるように微笑んでいた。


「色々あるんだね」


「そうよ〜。アキちゃんはあんなの言われたら落ち込んで明後日の方向に飛んで行っちゃうから出来ないけど、ハイドーリアにはあれくらいじゃないとダメなのよ〜。気にしなくて大丈夫だからね?」


 それはまあ、確かに落ち込んで帰って来れないかもしれない。その後一時間ばかし怒鳴り声は続いたが、僕達はその間まったりとお茶を飲んで寛ぎながら、魔族の街の近くに宿を予約したりして観光の道順を決めていた。やはり観光客を装うのが無難なのだ。持ってきた魔術の服をこっちの服装に近い物に入れ替えて準備した。


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