59 休日
◯ 59 休日
妖精達の歌声で目が覚めた。寝過ごしたみたいだ。スフォラが隣でじっと僕の目が覚めるのを待っている。
「おはようスフォラ」
ニッコリ微笑んでハグされた。朝の挨拶は済んだので一階のキッチンに入って朝食を作る。冷蔵庫に入れてあったダッチコーヒーを暖めていたら、マシュさんが部屋から出てきた。
「あれ? こっちに戻ってたんだ?」
「ああ、組合の用意した実験室はいまいちだ。みかんの中間界だとうまくいくが空間が違うとどうもな……。まああれに慣れすぎるのも良くないからやってはいるが成果が出ないようならそっちに戻る」
「分かったよ」
僕はマシュさんの分もコーヒーを入れて暖めた。直火よりもじんわりと湯煎が良い。
「念いの入れ方が変わるせいか作る分には随分補助が聞いてると思うぞ」
「ありがとう。じゃあ、本格的な実験室を作るの?」
サンドイッチ用に置いてあるパンを暖めて野菜類を刻んだ。トマトも入れるかな?
「そうだな。物も調達しやすいからそうなる」
ここでの物質で殆ど作っているのだからそうなるか。研究だけじゃなくてそろそろ生産工場も検討し始めている。
「分かったよ。その分はこっち持ちになるの?」
「いや、そこは交渉次第だろ。レイにでもやらせる」
「うん。決まったら教えて」
野菜とハムを挟んでコーヒーを隣に置いたらマシュさんは食べ始めた。僕もスフォラと一緒にテーブルに付いた。
「ところでそろそろその体に合わせてスフォラの改造をしないとな……」
「これに合わせるの?」
「もう、それ以上はスフォラに入るのは難しいはずだが、何故か入ってるよな……実体化しても融合するのか?」
「聞かれても分からないよ。そんなに違和感は無いよ?」
自分の少し透けた体を見る。今日はこのままでいようと思ってたんだけどな。
「おかしいな……何が違うんだ?」
「おかしいの?」
「おかしいだろうが」
いや、そう言われてもですね。スフォラと顔を見合わせて首を傾げるしか無い。今日はスフォラは本体もしっかりと自分の好きに姿を取っている。銀色の髪に水色の目が綺麗だ。女の子な服を着てお洒落をしている。
休日はこんな感じで過ごすようになってからは、マリーさんがフリフリの服をスフォラの為にどんどんデザインしていた。魔術の服だから変身しても大丈夫だ。今日もお人形のように可愛い。
「そのままでも良いが、繋がりが弱いからな。本体の部分は体内に入れないと意味が無いし、二重にならないようにしないと……」
何やら考え込み出したので僕達はそれぞれ好きに過ごす事にした。
「あ、紫月。今日は一日中休みだよ。一杯遊ぼうね?」
「うん。アキ、疲れてるから温泉行こう。皆で入るよ?」
「そ、そうかな? 良いよ、心配してくれてるんだねありがとう。ポースも行くかな?」
「みんな入るよ」
「分かったよ。じゃあ用意するね?」
僕達は神殿に向かって、温泉に入った。バッタ部隊までサウナ風呂に一緒に入っているし、紀夜媛も専用のお風呂で浸かっている。本当は龍族の専用だけど、サイズがサイズだけにそこしか入れないみたいだ。
ビアラマ隊も優雅に泳いでいて、ベリィヌーヴもしっかりと浸かって五つの頭を浴槽の縁に預けてだらけていた。
ポースは僕と一緒に温泉に浸かって鼻歌まじりでご機嫌だ。キリムは僕の頭の上に陣取っている。スフォラも一緒だし、妖精達も一緒だ。やっぱりここは落ち着く。ずっとここが良いよ……。
「アキ、泣いてる。お仕事つらいの?」
「紫月。……心配させてごめんね? 良く分かんないよ」
「アッキ、大量殺人なんて忘れろって、あれをやったのはブランダ商会だろ? それの責任を感じる事無いぜ。首輪を作ってはめさせた奴が悪い。ありゃーちょっとえぐいもんだったしな」
紫月の後ろにも妖精達が心配そうにこっちを見ているのが見える。皆……。嬉しくて皆に抱きついて大泣きしてしまった。
「しょーがねぇな、お子様は。これだから……」
「アキ、一杯泣くと痛いの治るよ」
その後の記憶は恥ずかしいので封印した。




