54 放電
◯ 54 放電
「十分よ。行きましょう」
「倉沢さん。今まですいませんでした。索敵は頑張るから許してもらえますか?」
「ふん、分かれば良いわ」
「アキ?」
「大丈夫!」
僕は心配そうなシュウと祐志に微笑んだ。
「良し、行くぞ」
そのまま進んで、行くとリビングアーマーに会った。さて、亡霊が付いていると言われたり、怨念で動いていると言われたりしてるけど、目の前のは怨念っぽい。瘴気をまき散らしてこっちに突っ込んできた。
「見つかったか! 仕方ないやるぞ!」
シュウがリビングアーマーの槍を躱し、片手剣を構え直している。僕は皆の後ろで後ろから来るストーンゴーレムを見ていた。
「挟まれたよ」
「ち、ストーンゴーレムかよ!」
焦った永井の声が響いた。僕は霊泉水を出してリビングアーマーに投げるようにスフォラに頼んだ。僕が投げると大惨事だからね。
難なくリビングアーマーに当たって瓶が割れ、中身が掛かった。霊泉水がリビングアーマーの瘴気を抑えて動きが鈍った。それでシュウと祐志とで戦えた。
「こっちは任せて!」
他の三人がストーンゴーレムに向かった。僕はリビングアーマーの上に浄化の魔法を注いだ。霊泉水が掛かっているから楽に力を送れた。白い光がリビングアーマーに当たると黒い瘴気が煙のように吹き出て、ゆっくりと倒れた。
「その杖は浄化の杖なのか?」
シュウが聞いてきた。少し息があがっていた。
「あー、そうだね。今は光の魔結晶を入れてるから」
「そうか。西本のは指輪だが、ここまでの威力はない。杖の方が強いのか?」
「さあどうかな、色々あると思うよ? 今のは霊泉水が先に掛かってるから、それで力を入れやすかったんだ」
「成る程な、使い方次第ってことか。おかげでこの鎧は使えそうだ。傷が余り付かなかったから高く売れる」
そう言いながら、ばらけた鎧をカバンに詰めてシュウはストーンゴーレムの方を見ている。祐志は既にあっちに向かって走って行っている。
永井が柄の長い槌でがんがんと叩いている。そこに倉沢さんが水の固まりをぶつけていた。大きいストーンゴーレムの体も、空を歩ける靴で無理矢理上から叩き込めるので重力の力がプラスされている。
西本さんはストーンゴーレムの顔をめがけて投げナイフを当てては気を逸らしているみたいだった。当たれば痛いけれど、動きがそんなに早くないので粘れば勝てるみたいだった。
「もう一回!」
「はいよ!」
なんだか流れ作業だ。そうしている間にゴーレムは体にヒビが入り、ぼろぼろと崩れ出した。祐志が参戦し出してから直ぐだった。そこにシュウが更に加わって決着はついた。しかし、元ドリアード達の気配が近くに来ているし、囲まれつつある。
「緑の魔物に囲まれそうだよ?」
「どうする? 折角のゴーレムの魔核よ?」
「一旦引こう」
「嫌よ!」
「倉沢、魔核より命だ。どっちだ?」
「こっちに走って! もうそっちに来るよ」
全員が走り出したが、十メートルも行かないうちに見つかったようだ。
「悔しい! 折角!」
「そうだな」
「くっそー!」
「馬鹿、走れ!」
しかし、走り込んだ遺跡の中にはリビングアーマーが二体いた。壊れかけたドアを閉めて、前のリビングアーマーに向かった。
「アキ、神聖なる祈りの水を!」
一瞬、何の事か分からなかったが、直ぐに霊泉水だと気が付いた。カバンから二本を取り出してスフォラに頼んだ。投げつけた瓶はさっきと同じで中身が鎧に掛かると同時に、彼らの怨念は黒い煙となって吹き出し、動きが鈍った。
「浄化の魔法を!」
僕はさっきと同じように杖から魔法を飛ばした。光は真直ぐに二体を包んで、瘴気を体中から吐き出させた。西本さんも魔法を放とうと集中しようとしていたが、僕の方が早かった。
「その杖は発動が早いのね」
西本さんは少し見直したように杖を見ている。
「威力は無いけどね」
倉沢さんは威力にこだわっているみたいだ。発動の早さは気の操作の差だから杖は関係ない。だけど、倉沢さんに意見は言えないので黙った。うーん、難しい。倉沢さんがドアの向こうに魔法を放つ準備をし出した。祐志が抑えているドアの向こうは魔物で一杯だ。ばらけた鎧は他の皆が拾って回収した。
大きな魔力を集めてるけど殆どが漏れてしまっていて勿体無いと思う。それよりはもう少し抑えた方が良いのに……杖の力よりもオーバーしている。魔石が持たないんじゃ……。
心配した通りに魔法が発動したと同時に魔石が壊れた。ドアは炎の固まりがぶつかったと同時に外へと飛んだ。そんなに魔力を出したら当然だけど、緑の魔物は元妖精だ。魔力に敏感だから逃げるに決まっている。全くの無傷の大量の緑の魔物が部屋の中に傾れ込んできた。
「もう、こんな時に! 私の力にもう合ってないのよこれ!」
「下がれ!」
倉沢さんを下がらせて他のメンバーが部屋の中に入って行きた魔物と戦い出した。が、向こうは数の暴力だ。細かい魔法を雨のようにこっちに飛ばしてくる。
西本さんが魔法の結界で防ぐけれども持たない。スフォラも防護を張ってくれた。僕は眠りの魔法をそっと広げた。
杖は使わない。光の魔結晶が入っているので相性が悪い。向こうは魔法防護を全員で掛けている為に中々通らない……。それでも防護の隙間を狙って魔法を飛ばし続けた。
不意に西本さんの防護が消えた。横を見ると指輪の魔石が壊れていた。倉沢さんはそれを見てすかさずに僕の杖をひったくって西本さんに渡した。まあ、使ってないから良いけど一言欲しいかな?
「これ、魔法が使えない!」
西本さんは僕の杖が使えずに焦っている。
「嫌よ死にたくない!」
次々と魔石が壊れたせいでパニックだ。倉沢さんは僕の杖にあたって振り回している。無理だからそれ、こつがいるんだ。そんな状態じゃ使えないよ。って、あ。
折れた。展開していた魔法が動揺で崩れてしまった。大体、僕の杖は殴るようには出来ていない。五十センチちょっとの細身の木の棒だ。
スフォラが我慢出来ずに倉沢さんを殴った。
「ちょっと! 仲間割れは今はダメよ!」
西本さんが焦っている。
「スフォラ?」
怒りは収まらずに部屋中でスパークを起こしている。あー、不味い。当然に敵味方関係なく感電した。まあ、ずっと怒ってるのは知ってたんだ。だけど、杖を折られたのでプッツンと切れたらしい。結構大事に手入れしてたからね。
僕は杖を拾った。これ、直るかな? どうみても無理そうだ。外れて転がった魔結晶を拾ってしまった。スフォラはまだ怒っていて、バチバチっと威嚇するようにして魔物を近寄らせなかった。僕は皆を僕の収納スペースに入れて外に向かって歩いていた。
感電した緑の魔物も放置してきたので今頃は目を覚まして動いていると思う。はあ、今日は疲れた。皆を宿の部屋のベッドに並べて、僕もベッドで眠った。




