表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を繋ぐお仕事 〜世界征服編〜  作者: na-ho
ふりょうなるいさん
54/147

51 消臭

 ◯ 51 消臭


 連日、中間界で悪臭にまみれてアンデッド協会との共同研究だ。魔力回復薬は順調に出来上がっている。良く分からない素材を取ってきては混ぜて試して、アンデッドの薬やら人間の薬やらを作っている。何故か蓄光塗料も出来上がった。

 通常の光を使った魔法の癒しよりも月の癒しを掛けてじんわりと魔法を染み込ませた方が、アンデッドには良い効果が出た。その代わりに人間用のは減る。どうせ人間用のは他にも代替え品はあるのだからと、思い切ってアンデッド用に切り替えた。

 実験では副産物として時々変な人間用の薬が出来た。嗅覚が鋭くなるとか強力な下剤だとか惚れ薬だとか……。禿げる薬にしゃっくりを止める薬とか微妙な物まである。下剤以外はどれも効果が薄いけど、出来た物は適当に宝箱に入れている。

 アンデッドの薬はマミーの傷薬だのスケルトンの骨折を直す薬だのが出来た。それを売りに出すのと交換でヴァンパイア用の治療薬やらグールの食欲減退薬なんかを仕入れた。

 僕は消臭効果の結界をパワーアップさせて、出入りする人の消臭も勝手にしてくれるようにした。衣服に染み付いた悪臭は、結界を通るごとに消えて外の世界に悪臭を持ち込まない工夫をしている。


「そういえば、タキはまだウエイターをやってるんだろうか?」


 僕はチャーリーに聞いてみた。チャーリが示した先にタキがいた。洗い物をしている姿を見て、真面目に働いてるねと感想を言ったら、チャーリーは首を横に振った。

 どうやら接客は出来てないので下ろして、洗い物や掃除を中心にさせているらしい。十分おきにさぼろうとするので見張りが必要との事だった。それは迷惑をかけてるね。


「面倒見切れないなら、解雇して良いんだよ? 彼の為にもならないし」


「そう致します」


 即答したので余程腹に据えかねていたみたいだ。


「うん、ごめんね? 無理言って」


「気にしないでアキ」


「はう、可愛い!」


 僕はチャーリーを抱きしめてからタキに解雇を言い渡した。


「何言ってやがる! ちゃんと仕事してるだろうが!」


 大激怒しているが、決まった事だ。


「十分おきにさぼろうとするなんて、ずっと見張らないとダメなら無理だから」


「ふざけんなよ! 給料をちゃんと保証しろよ、そっちの理由だろうが!」


「そんな契約してないし、ここの世界には日本みたいな法律は無いよ?」


「はあ? てめえ騙したのか!」


「騙してないよ? 仕事が分かってないから要らないと言ってるんだよ? だって洗うのが遅くてお皿が足りなくなるなんてよっぽどおかしいよ? 客席の倍以上あるお皿が皿洗いしかしてない人がいるのに足りないなんていないのと同じだよ」


 きっちり文句を言っていいと思う! 忙しい時に限ってさぼっているみたいだ。チャーリー達の見張りがないせいだろう。


「そんなの俺の自由だろ?」


「ここの仕事はチームワークも大切だってどうして分からないの?」


「仲間になった覚えはねぇ」


 そっぽ剥いて言われてしまった。


「そう。じゃあ、他の仕事をやろうか」


「ちゃんとした仕事だろうな?」


「そうだよ」


 僕はタキを連れてガリェンツリー世界に降りた。世界樹の教会に打ち捨てられた奴隷の死体を埋めていく。何百とある死体を埋葬していった。タキは現状を分からないままシャベルを持って穴を掘り続けていた。幼い子供と女性が多い。タキもさすがに聞くに聞けないって感じだった。

 一週間程して何でこんな事になってるのか聞いてきた。


「奴隷の首輪を壊したから。魂を縛って無理矢理動かしてる物だったから、たとえこうなっても外すべきなんだ。他の世界に売られてずっと体と魂が壊れるまで働かされるんだ。解放が必要だったからそうした」


「おまっ、馬鹿か?」


「何で?」


「泣くなよ!」


「泣いてない」


「嘘付けっ! 辛気くせぇんだよ、こんな仕事やってられっか!」


 シャベルを放り投げて癇癪を起こしている。


「……なんで?」


「っ、もう、見たくねぇ」


 視線をそらして死体の埋まった跡を見ていた。


「もう後三体なのに?」


「うるせぇ!」


 何をごねてるんだろう。まあ良いか、どのみち死体は痩せて軽い。赤ん坊を抱いた女性と小さい子供の死体だ。多分親子だからしっかりと三人をくっつけてから祈り、土を掛けた。

 この人達は便乗して捨てられたんだろうか? 子供を認識していたなら、まだ魂は生きる為に命を灯そうとしていたに違いないけど……。いや、よそう。


「後、五カ所あるけど、嫌なら良いよ」


「まだあるのかよ」


 嫌そうに顔を歪めてこっちをちらっと伺ってまた視線をそらしている。


「どうするの?」


「給料を上げろ。そしたら我慢してやる」


「そう? 他のメンバーよりは上げれないよ。管理組合に帰れば?」


「ちっ、終ったら他の仕事を回せよ?」


「……禿げる薬の治験とか?」


「殺す!」


 腐った死体を埋めるのは疲れたけれど、一人じゃなかったのでまだましだった。タキはマシュさんに捕まって治験をやらないのかと迫られていた。

 僕に振ってきたが既に解毒剤を飲んでいて、けけけけと笑ったままの状態になっていた。解毒はうまくいくけど副作用が半日程、笑ったままになる。

 タキの飲んだ薬は耳毛と鼻毛と眉毛に睫毛が伸びる薬だった。需要があるのか分からないけど、それも宝箱におさめられた。解毒剤K4と育毛剤K4は宝箱におさめられた。当然禿げる薬の近くに出るように設定済みだ。そのくらいの悪戯は許されるでしょ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ