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世界を繋ぐお仕事 〜世界征服編〜  作者: na-ho
ふりょうなるいさん
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44 捕獲

 ◯ 44 捕獲


 護衛は他の皆が優秀なので僕達のパーティーはちっとも出番は無かった。夜の見張りで襲われた時にツタの魔物が一度、荷台にまで登ってきたので、それをスフォラが電撃で仕留めたくらいだった。

 燃やす意外は使い道が無いとか言っているけど、意外に使い道はありそうだ。僕はその素材を貰って組合で買った収納スペースにこっそり突っ込んでおいた。こっちでは魔法のカバンが主流なので僕もその内手に入れるつもりだ。というより、今はそれを作る修行をしている。

 ポースは調子よく歌を歌っている。トレントがまた襲ってきた。出発して一日半で、もう十回目だ。思うんだけどこのせいで随分遅れていると思う。それともこれも予定の四日間なんだろうか?


「普通こんなに襲われるもんなの?」


「いや、倍ぐらいは多いな……なんでだ?」


 シュウも不思議がっている。この瘴気の上がり方も嫌な感じだ。まだ地獄と繋がっているのかと思うくらいだから闇のベールでマスクを作ってしている。昨日の夜にマリーさんに報告したら、今直ぐ調査に向かうと言われたのでこっちに来ているはずだ。


「おい、あれは! 畜生っ! 引き返せーっ!」


「何が出たんだ? なんだ大蛇(おろち)か。アッキあんなのスパッとやっつけて捕まえちまえよ」


 五つ首の大蛇がこっちを睨んでいる。二十メートル以上の長さに太さもかなりある。影を縫い止めているせいで、みんな動けていない。金色に輝く目に吸い込まれそうだけれど、直ぐに目を閉じて影の支配を断ち切った。

 そのまま影の治療改め眠りの術を掛けた。暴れる事無くトロンとした目をしていた大蛇は暫くしてからもたげていた首をずしっと落として眠り出した。当然周りの皆も寝ている。そのままポースと一緒に蛇の所まで行って契約をした。いつも通り体からものすごい勢いで力が抜けて、一息ついたところでポースが声を掛けてくれた。


「さすがだなアッキ。あっさりと配下にしちまうなんて。どんどん行こうぜ!」


「そうだね。でも、こんな大きな蛇が出てくるなんてこの森ってまだ食べ物があるのかな?」


「どうだろな。魔物同士で食い合ってそうだな……。そうなるとこの瘴気も納得だ」


「世界樹の方も心配だね」


「そっちは分かんねぇが、このくらいの瘴気を溜め込んでも物ともしないくらいにはなれねぇと、悪神とは言えねぇぜ?」


「世界樹が悪神に変わったの?」


 ここのエネルギー管理をしている世界樹がいるはずなのに、瘴気を抑えられていないのだからあり得なくない。悪神に操られているのかも知れない。


「そういう場合もあるよな? まだわからねぇぜ?」


「……アイリージュデットさんには分からないのかな?」


「さあな、何処までの繋がりか分からねぇしな」


「うん」


 僕は少し落ち着いたので皆を起こした。


「また寝てたのか?」


「くそっ、またアキにやられた」


 シュウは僕に眠らされたのが悔しいらしい。


「とどめは? 刺しちゃったの?」


 西本さんは大蛇を探していた。


「悔しい〜。あの素材は良い値で売れるのに!」


 他のメンバーが横取りは良くないとかなんとか言い出したが、


「大蛇は? いや、今のうちに進むんだ!」


 商隊の雇い主からの号令で渋々進み出した。


「ああいう場合は手を出しちゃダメなのかな?」


「人間の考えはわからねぇが、早い者勝ちだろ? あんなの」


「そうなの?」


「護衛中はあの素材は出さないとダメだよ。鮎川君、後で山分けだからね?」


 護衛の心得を西本さんに諭されてしまった。


「そうなんだ。知らなかったよ。じゃあ、捕獲しない方が良かったね?」


「え? 殺してないの?」


「うんと、ポースが飼ってるんだ」


「は?」


「だからそういう魔導書なんだよ」


「もう一回出してやればわかるぜ? うだうだ言ってる奴らに権利は無いってな。逃げ出してたくせに何を言ってんだっ」


 まあ、素材が欲しければもう一度あれを見つけて殺すしか無い。次は皆が頑張って戦うのを見る事にする。


「くそっ、今度は吸血コウモリだ!」


「大群で来てるぞ!!」


 見上げると何百匹というコウモリが飛んでいる。その中にひと際大きなコウモリがいるのが見える。赤い目のコウモリは闇の魔法を使っている所からすると闇の生物のようだ。だけど、何かから逃げている感じだ。

 案の定、後ろから大きな巨体を揺らして優雅に飛んでくる赤と黒の二色がカッコいい翼竜がいた。竜が緋色の火炎ブレスをコウモリに向かって吐いた。三分の一くらいが飲まれて焼けた。黒い灰になって大半が風にあおられてゆっくりと下に落ちていく。余程怒らせたらしく、竜はコウモリを追いかけ回している。


「一体これは……俺達は地獄に迷い込んだのか?」


 皆は呆然と上空で行われている虐殺を見上げていた。脅威は遠ざかっているので進む事にする。

 今度は遠くで竜の悲鳴の様な声が聞こえた。一体何があったんだろうか? いや、僕達にはもう、訳が分からない。進もう。進むべきだ! 一応マリーさんにさっきからの事を報告をした。

 そこからはみんな無口で街に向かってひたすら急いだ。


「あのコウモリは吸血鬼よ〜。変身してるのが分かるわ」


 トイレ休憩の時にマリーさんから連絡が入ったので繋いでみた。そしたらそんな事が分かった。


「そうなの? こんな昼間から?」


「そうよ〜。影を纏って必死で逃げ惑ってるのよ〜」


 どうやら上位の吸血鬼は影を纏って光を遮る事が出来るらしい。それに昼間と言っても少し薄暗いのは瘴気のせいだろうか?


「それで、世界樹は大丈夫なの?」


「ダメね。あの竜を食べてるのが世界樹だって言ったら驚く? 見れば分かるわ〜」


 録画映像を見せてくれた。あー、世界樹って巨大なトレントなんだ。初めて知ったよ。エルダートレント世界樹バージョン! 地下を潜り影から飛び出し枝をしならせ竜の捕獲を一瞬でし、モシャモシャと食べる姿が映っている。……あれ、欲しいかな?


「ポース。このトレントとかどう思う?」


「なんだ? おおー、すげえなこいつ! 仲間にしようぜ!」


 ポースは一目で気に入ったみたいだった。


「だよね? 何かカッコいい」


 壊れすぎてて逆に怖くないというか、あのくらいすごいと楽が出来そうだ。というかかなり大きいよね、あのトレント。既に僕の感覚も壊れてきた。良し、ちょっと捕獲に行ってくる!!


「シュウ」


「どうした?」


「ちょっとこれを捕まえてくるね? 先に行っててよ」


 画面のトレントを見せて説明した。世界樹の暴走を止めないとダメだ。これは管理神の仕事だから行かないと。


「はあ?」


 僕は言うのもそこそこに森に向かって走り、途中から空を飛んで現地に向かった。さっき竜の悲鳴が上がった場所だからそうは遠くない。途中でよれよれのコウモリが襲ってきたがスフォラが電撃であっさりと撃ち落として進んだ。

 『スフォラー』同士で位置確認をしてマリーさんと合流し、世界樹の様子を見た。闇のベールを被って巨大トレントを良く見ると、何か術の後が見つかった。


「あの術の後は?」


「うん〜、分からないわ〜。でも術者もあの感じだと食べたと思うのよね〜」


 複雑そうな顔でマリーさんは世界樹を見ている。黒い世界樹の幹には悪魔の顔が大きく浮き上がっている。


「あー何かそんな感じだね。中からすごい地獄の気が立ち上ってるんだけど……」


 闇のベールが無かったら死にそうなくらいだ。


「悪魔が世界樹を支配しようとして逆に喰われたとかそんな感じよね〜。あのままだと世界樹自体が悪魔化しそうで怖いわ〜。というかもう半分なってるわね」


 さすがにマリーさんもこの事態に頭を悩ませている。死神もこの周りの捜索に駆けつけている。


「そっか。アイリージュデットさんはどう言ってるの?」


「こうなっては仕方ないと泣いているわね。同胞を失ったのですもの……」


「そっか。せめてポースと一緒に活躍出来れば良いけど……」


「出来そう?」


 マリーさんが心配そうに聞いてきた。世界樹の討伐は確かに嫌な確執が残りそうだから、避けたい気持ちも分かる。


「分からないよ。とリあえず、眠らせてみるよ?」


「そうね、瘴気を抜かないとダメだし、良いわ、ゆっくりやるのよ?」


「うん」


 僕はいつもよりも慎重にゆっくりと薄らと闇の魔法を掛けていった。影の精神治療を草木も眠る段階まで掛け続ける事一時間、悪魔も眠る昼下がり……今度は闇のベールで世界樹を覆って月の癒しを掛け続けながら眠りの魔法を掛け続けた。

 地獄の気はベールの癒しの効果で徐々に抜けてはいるものの、時間が掛かりそうだった。丸一日掛かってやっと少し抜けたと言った感じだ。自分も時々仮眠を取りながら三日目。やっと悪魔化が止まった。更にもう一日眠らせて残りの瘴気を抜き、僕も睡眠を取って準備を整えた。


「大物だからな、一気には無理だ。だが、マリーとチャーリーにリーシャンが手伝ってくれる問題ない! 行くぞ!」


「おー!」


 気合いもいれて契約を済ませ、体を変換するのに十分割ぐらいしていれる事にした。最初のはうまくいった。休憩を挟みつつ二回目、三回目も寝ててくれたのでなんとかはいってくれた。休憩中に世界樹が起き出して暴れ出した。マリーさんとリーシャンが力尽くで押さえ込むとうめき声を上げながら泣き出した。う、ごめんよ。中途半端で辛いよね? 半分くらい入ったら辛くないって話だからもうちょっと我慢を。

 四回目は抵抗されながらもなんとかはいった。五、六回目は怖がって暴れ回られたので、なだめすかして暴れ疲れるのを待ってから入れた。そして最後の十回目が無事に終ったのは契約から三日が経ってからだった。長かった。


「出来た〜」


「良くやったわ〜、こんなに大変なものを良く契約したわね〜」


 僕は達成感で涙があふれた。三百メートル級の高さのある木だから半端なかった。眠らせてから七日も掛かってる。


「おう、こりゃすごいぞ! 俺様もうかうかしてらんねぇぜ!」


「吐き戻すなんて事無いでしょうね〜?」


「当たり前よ! そんなもったいねぇことしねぇぜ」


 そういえばシュウ達の事をすっかり忘れていた。そろそろ帰る頃かな? 何件かメールが来ていたが、スフォラが気を利かして保留にしてくれている。緊急事態だからね。

 連絡を入れてみたら、あの大蛇の支払いをさせられているみたいだった。それは無いよね、と帰りの護衛はしっかりやるよと返事を書いた。お土産も忘れずに持っていく事にした。

 世界樹の落とした枝とかはリーシャンとチャーリーが拾って神界に持ち帰ってくれた。世界樹の食べ残した竜の角もついでにリーシャン達に頼んで持って帰ってもらった。鉱山のダンジョンに向かう途中に、またコウモリに出会った。


「血を分けてもらっていいでしょうか?」


 と話し掛けられた。


「吸血鬼さん?」


「はい。もう飢え死にそうなんです」


 コウモリが必死に羽ばたいているので速度を緩めてあげた。よく見るとあちこち火傷しているみたいだ。


「あー、ごめんね? 人間じゃないから輸血は出来ないんだ。気を分けるぐらいだよ?」


「ありがとうございます。では早速」


 礼儀正しい吸血鬼さんだ。手のひらに集めた気を美味しそうに飲んでいた。


「ありがとうございました。このご恩は忘れません……」


 涙目の青白い顔がそう答えた。あちこち焼けこげてぼろぼろの燕尾服を着ている。なんだか執事みたいだ。三十代後半のおじさんがハンカチで口元を拭くついでに涙をそっと拭っていた。


「もう竜にちょっかい掛けちゃダメだよ?」


「は、はい。灰になりたくありませんからもう致しません。(わたくし)、ヴァンパイアロードのカジュラともうします。お名前を伺っても?」


「アキだよ」


「アキ様ですね? では極上の気を頂きましたお礼にその内にお伺い致します。ところでお住まいは?」


「住まいはアストリューだよ」


「はて? 聞いた事がございません」


 首を傾げているがそうだと思う。


「外の世界だよ?」


「おお、ではハイドーリア様と同じ悪神であらせられますか?」


 感動した様子で聞かれたが、


「違うよ。ハイドーリアって? 最近会った?」


 即座に否定したら少しがっかりしていた。


「いいえ、ほんの少し前の大戦からは見かけておりません。おそらくは……武功を上げられると仰ってましたので……この度の大戦はどうやら悪神達の負けではないかと我々も考えてまして、何かご存知でしょうか?」


「うん、悪神達は今、死神が残党狩りしてるよ?」


「死神がですか? あの冥界を統べる王が……」


 何か考え込んだみたいにしばらく黙った。


「そうだね。死神が好きなの?」


「いいえ、そういう訳ではないのですが、やはりアンデッドを従えさせるのは、死神のみだと改めてこの大戦を振り返って確認した気がします。貴重な情報を有り難く頂きましたので、こちらも何か情報を提供出来れば良いのですが……」


 ニッコリ微笑んでそんな提案をしてくれたので、考えてみる。


「あー、そうだ! なんかこう大きくて五つくらい頭が別れてる大蛇とか知らない? 取り分を奪っちゃって、友達に悪い事したから返さないとダメなんだ」


「畏まりました。それでしたらあの辺りがよろしいかと」


 カジュラが指さした辺りに大蛇の巣があるらしい。


「ありがとう。ところでアンデッドって多いの?」


「勿論でございます。よろしければこちらに何時でもお越し頂ければご案内致します。外の世界には出れませんので、どうかお忘れなきようにお願い致します」


「分かったよ。じゃあね」


 そこで別れて僕達は大蛇のいる場所に向かった。


「スフォラ、ポースは寝てるから僕達だけだよ。頑張ろうね?」


 契約の疲れからかポースは寝ている。僕達は空からそっと大蛇を探した。巣だというだけあって何匹もいたが、はぐれた二、三匹を眠らせて生け捕りにして僕の作った方の収納スペースに入れた。こっちは生き物もはいるからね。


「よし、シュウ達と合流しよう!」


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