41 改善
◯ 41 改善
取り敢えずは宝箱による十年計画で食料改善に、衣料品改善に魔道具の技術大幅改善誘導計画が立ち上がった。教会は教会でも町の権力者との癒着による神官達の魔核の浄化の独占問題もある。シュウ達についてあの翌日に町の中の豪華な教会に行ったら結構なお値段で浄化をする形だった。
魔石になった物を買い取ってもらえる所が魔道ギルドだ。それもなんだか買い叩かれている。魔道具自体の値段がかなりするのに対して魔石の値段がおかしなぐらい安い。これではダメだ。宝箱に魔道具を入れようと決心した。値崩れさせるのも良いかもしれない。これはまた何かアイデアが出れば良いけど。取り敢えず市場の価格操作から宝箱は色々と出きる訳だ……。良く分かってないけど。
それから、浄化の出来る人を育てて、世界樹の教会でも魔石の浄化を出来るようにするのもありかもしれない。見習い神官、巫女の養成所だ。浄化の出来る人が増えれば値段が下がると思う。教会が囲えないくらいの人数を揃えてみよう。それに町の教会でやっている浄化の魔術は魔核の浄化の効率が悪い。
アイリージュデットさんと相談して人を育てる場所を作る事にした。冒険者とか神官等の技術を教えるのに世界樹の教会に人材を置く事になった。が、ただでやる様な人を捜すのは難しい。外からの人材で半年程給料保証してやっとなんとかやってくれる人が十人来てくれた。ここの魔法の方式とかをガリルから講習を受けた十人の人達がやってくれることになった。教育水準も上がったら色々と良くなる。
本当はフィールドごとにある世界樹の教会に何人かずつが理想だったけれど、思ったよりも人が集まらなかったので仕方が無い。二人一組で五つのフィールドで剣とか槍、弓を教えて貰って身を守る事と、治療師と魔核の浄化の出来る人材育成を始める事になった。
シュウ達もその試みを一緒になってやっていた。実はちゃんとプロに剣の扱いを教えてもらっていた訳ではないので随分熱心にやっていたのはシュウ達だった。
「あ、マリーさん。帰ってきたんだね」
「ええ、第十フィールドまでは奴隷の首輪も殆ど破壊出来たわよ〜。後は十一から二十二ね」
リストに載っている物だけだから外れている物はあるとは思うけど、それでも大半が破壊出来ているし、転移門の利用でも破壊を出来るようにしておいたので随分楽になっている。貴族の館を回れば大体が破壊出来る。
「うん、僕も手伝うよ」
「そうね〜、死神様なら簡単よね〜」
その上幽霊だし、壁抜けも出来る。スフォラと一緒に回れば早く終るに違いない。
「うん。頑張るよ」
この首輪の製造も禁止しているし、というよりもブランダ商会が売り込んでいた物だから製造はここではされてないはずだ。
「で、ガリルのデータに残っているのは半分以下よ」
でも、首輪の数が多過ぎる。実際に使われている数より多い。奴隷を多くして回すつもりだったんだろうか。地獄の使者がやりそうな事なのだろうか。それとも人間の考える範疇なんだろうか? マリーさんも首を傾げている。というよりそんなに人口がいたかな?
「多いね」
「ええ。多過ぎるわ。これじゃ、町の半分が奴隷でもおかしくないくらいよ。これからはそれじゃ回らないってことを分からせないとね〜。ここのフィールドは王宮の奴隷が多かったわね。扱いが酷かったなら奴隷が動かなくなるから国が荒れるのは必須よ」
第七フィールドの王宮か。シュウに連れて行ってもらった所だ。栄えている裏側がそんな感じなのか、嫌だな……出来ればひどい扱いでなかった事を祈ろう。一キロ圏内の首輪の一部破壊と術の一部解除が可能な魔術対応機械をマシュさんが作ってくれたのでそれで首輪を壊して行っている。
魂を縛って無理矢理に命を続かせる様な物ではなくなったし、死ねという命令も人を殺せという命令も受け付けなくなり、最低限の命は守れるようになった。
「そっか。大変だね」
「神の怒りも考えておかないと。畏怖というのも必要よ?」
「うん。分かったよ」
適当に呪いでも考えてみよう。
「アキちゃん? 大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ」
「我慢しなくて良いのよ〜?」
マリーさんが頭を撫でてくれている。
「う、うぐ……」
「もう、しょうがないわね〜」
何やってるんだろう。僕は何やってるんだろう? なんだか嫌だ。疲れたよ。
「もう、アストリュに行くわよ〜」
「うん。ここ嫌だ」
「知ってるわよ〜」
「うぐ、嫌いだ」
「分かってるわ〜」
「帰りたい」
「そうね〜、帰りましょ〜。アキちゃんはいつでも帰っていいのよ?」
「うん。帰る」
アストリューの家で寛いだ。雨の音が優しい。ここの空気が好きだ。穏やかで命の危険だって無い。こんな場所をあそこにも一つでも良い、作れたなら良いのに……。そっか何の目標も無くただ闇雲に借金返済でやってたからダメなのかな?
地獄の影響で壊滅状態のフィールドを使っていつか自由国家を作ってもらおう。奴隷制度無しで自分で責任を持って生きていく為に、必要な事を最低限は学んで選べるように、あそこなら自由に出来るし、外の人しか今の所はいない。少しずつその計画を立てておこう。自由を求める人の場所を作っておこうと思う。僕の意志だから。今みたいに中途半端にやるよりはいい。
「良し。何か出来そうだ!」
「もう立ち直ったの〜? ココアが入ったわよ?」
マリーさんが入れてくれたココアの好い香りがする。
「うん。良い事思いついたよ」
「単純で扱いやすいわ〜」
「え? 何か言った?」
マリーさんの呟きは置いておいてココアを飲みながら壮大な計画を発表した!
「良いわね〜。フィールドの中が奴隷の首輪が利かない場所になるのね?」
「うん。フィールドごと丸ごと奴隷のいない場所にするよ」
「それだと新しく作った場所をそうした方が早いわよ〜。あそこの浄化は生半可じゃ出来ないのよ。それにまだ新しい場所を増やすのも、エネルギーが全然足りないわ〜」
どうやら立て直しとエネルギーの状態を改善する段階から始めないと行けないみたいだ。だけど、まともな目標を持ったのでなんとか気分が落ち込むのは避けられた。
世界樹の苗も育てないとダメだし、やる事が一杯だ。僕がやると何百年単位になってしまう計画だ。だけど、一つくらいはそんな場所があっても良いと思うんだ。僕は新しいフィールドを作る計画を入れておいた。誰も文句を言わなかったので通ったのだと思う。
地獄型のダンジョンのフィールドは、解体の方向に決定したと共に新しいフィールドが一つ作られる事が決定した。新しいフィールドは早くても千年後から作られる事になった。長い計画だ。それを聞いてもう半分やる気をなくした僕はダメ神だ。
今はせっせと奴隷の首輪の一部の破壊をやっている。これがかなりのコスト削減で、死神の組合に払っていた経費が随分楽になった。浅井さんは満足そうに資料を眺めていた。
心を病んでしまい、魂が傷ついて自ら生きるのを止めていた人達は自然と息を引き取るだろう……。無理に縛り付けられて動かされていたのだから自然に戻る。一時的に彷徨う魂が増えるので死神達にもフォローを頼んである。
冥界からも奴隷達の売買が世界間で渡されるケースに付いて聞いている。生きているうちは管轄が違う為に手が出せないらしかった。ここでそんな事はさせない。
一気に人口が減ってここのエネルギーが一気にまた減ったとしても、それでも最低限の事はするべきだ。こんな無茶な誤摩化しは要らない。魂は自由だ。




