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世界を繋ぐお仕事 〜世界征服編〜  作者: na-ho
ふりょうなるいさん
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39 呪縛

 ◯ 39 呪縛


 夕方前にはダンジョン探索は終った。魔核が三つと色々な素材を集めて町に戻った。他の冒険者達とも何度かダンジョン内ですれ違ったけど、お互いの事は干渉せずって感じで挨拶のみが交わされた。魔核は明日、町の中心にある教会で浄化してもらう。僕がやっても良いと思うけど……まあ良いか。見てみよう。


「素材の買い取りはあそこだ」


「へえ」


 ダンジョン帰りはドロドロの汚い格好が多いからか外に受付があった。査定が済んで見積もりが出され、それをチェックして良かったらサインをしてお金を受け取る。そんな感じだった。ギルドのランクだとかパーティーだとかはゲームと似た感じで、ランクが上がるごとに報酬の良い難しい依頼が受けれるみたいだった。でもダンジョンの近くは大体は腕利きが揃っていて、新人は殆どいなかった。たまにレベルの低い危なっかしい人を面倒見ているのがシュウ達だった。


「まあ、教会に保護されてる子達がいきなり冒険者にとかはなれないから、私達がある程度育ててからパーティーに入れてもらえるように交渉してるんだ」


 今朝会った髭のおじさんのお店に連れて行ってもらっている。分からないので注文してもらった。


「良い事してるんだね」


「神樹からの依頼だしな。最初にかなり我がまま言ってしまって揉めたけど、ここの現状を知ったらそれも恥ずかしいくらいだ」


 どうやらここの生活に不満を持っていたらしい。チートを寄越せとか言ったみたいだけど、それをする程アイリージュデットさんにも力は無かったみたいだ。


「それでも、普通の人よりは力があったから、優遇されてるって気が付けたのは良かった」


「そうよね、レベルが上がったら結構大丈夫だったからね」


 それは単にここの人達のエネルギーが落ち込んでて外の人の力が強いってだけだ。


「ネクロマンサーも倒せたし、あれはしんどかったけどやりがいがあったよね。レベルも上がったし」


 お皿が目の前のテーブルに置かれたが何か嫌な予感がする。フォークで突ついたこのプルっとした感触は……まさかの? 芋虫? 聞くべきだろうか。嫌、聞いたらダメだ! 目をつぶるんだ!!


「最近はレベルが上がらなくなったな」


 シュウの説明だと芋虫の背中辺りだと聞かされた。そこが美味しいらしい。確かに味の薄いエビの様な味だ。勝手に視界が歪むのは感動しているからに違いない……。


「簡単には上がらなくなったね」


「そんなもんだろ。ベテランでも中々難しいみたいだし、まだ一年ちょっとの俺達じゃな」


 本人達のレベルの事みたいだ。僕にはレベルは付いてない。ガリルは僕の数値は何故か分からないらしい。レイが後ろで笑っていたから何か理由があるんだろう。皆のレベルは聞いても分からないけど、ギルドのランクは分かった。

 Gが最低でAに向かってアルファベット文字順にランクアップするみたいだ。それを過ぎるとSになるらしい。大体はBかCのランクが多いみたいだ。ちゃんと試験もあるらしい。


「そうだな。武器とかもうちょっと良いのが手に入れば良いけど、そういうのは中々手に入らないんだよ。最奥のボスとかが持ってるって噂だけど……宝箱は奥にもあるのか?」


 次に来たのはうさぎ肉だった。ちょっとホッとした。横に付け合わせのハーブがあった。


「あたし達じゃまだそこまで行けないよね。頑張ってここの中層に行けるかどうかだし。鮎川君が泊まりでも良いなら今日だって行けそうだったのに」


 惜しそうな顔で倉沢さんが頬を膨らませている。


「初心者を泊まりではちょっと無理だろ?」


「あの眠りの魔法って反則に近いんだもんー」


「あー確かに。あれは……」


 坂本が胡乱な目になっている。自分達も眠らされるから堪ったもんじゃないだろう。


「いつも苦労させられる蟻の中隊があっという間だった……」


 二メートルもある蟻の群れに遭遇したら無理でした。そんなのが三十匹以上いるんだ泣くよ。


「結局カバンが一杯になってこれ以上無理になったじゃないか。今日だけで三十万は超えてたぞ?」


「そんなに? あれ買える?」


「魔法のカバンだろ? 買える。もう一つ欲しかったからな、今までのと合わせたらなんとかいける」


「これでもう、荷物に困らないね。神樹に貰ったのも結構良い奴だけど、最近入れる物が増えたからね」


 シュウの返事に西本さんが嬉しそうに言った。


「ゲームならストレージかアイテムボックスなのにここは違うんだよな……」


 永井が不満そうに言った。それをするとものすごっく高く付くから神様経営が成り立ちませんからっ。って思ってたら、意外と行けるらしい。僕の中間界にガリルを通して生体端末と繋げれば良いのだとか。でもレイが言うには甘やかしはダメだそうだ。

 それに魔法のカバンも意外と入る。五人のカバンにはあの蟻とか芋虫とか蜘蛛が解体された形でそのまま入ってたから。確かに僕の空間にそんな(ぶつ)は入れたくないかも。

 カバンは空間の魔石とかがあってそれで加工するみたいだ。便利な魔石のおかげで作られた魔道具の一種となるみたいだ。こういった技術は庶民には教えてもらえない。王国御用達とかのお店に行かないと手に入らなかったりするみたいだ。

 技術の囲い込みがある。確かに他と差をつけるには秘匿するべきだとは思う。けど、技術が向上しないのはそのせいもある。手に職を付けるのはここでは難しいのが当たり前みたいだ。


「簡単な技術なら皆が出来れば苦労も減りそうだね」


「奴隷の首輪とかを取れれば良いんだけどな。分からないんだよ」


 シュウがそんなことを言ってきた。奴隷の首輪? そんなものが出回ってるんだ。


「そんなのあるんだ?」


「ああ。王都とかに行くと裕福な家には大体はいるな。奴隷商人が跋扈してやがる」


「あの首輪を取る技術があれば……」


「勝手に取っても良いの?」


「いや、ダメだけど、だけどな……病気になったりしてもそのまま死ぬまで外されないのは嫌だろ? せめて最後くらいはって思うんだ」


「時々、教会に死んだからって連れてくるんだけどまだ息があったりして……死なないと外れないからってそのまま放置して行くの。ご飯を上げたりしても命令で食べれないしどんどん弱って行くのを見てるだけになって……悔しい」


「罠解除じゃ取れないんだよな」


 永井も悲しげだ。


「呪いの解除だね?」


「分かるのか?」


「ある程度なら出来るけど、複雑なのは無理だよ?」


「さすが、神官をやってるだけあるな」


「良っし、じゃあ早速」


「え、いるの?」


「……まあな」


 シュウが歯切れ悪く言った。


「そっか、行こうか」


 向かった先の教会の小部屋にいたその子はもう、目も見えてなかった。見ると死神が横にいて連れて行く準備をしていた。魂の方も傷ついてる。そっか、この拘束は魂の部分にも食い込んでるから……外さないとダメなんだ。それで死神も死ぬのを待っているのか。

 この術は禁止にしないとダメだなと思うけど、これだけ世の中に浸透してたら難しい。これを無くすだけでも死神のコスト分が減るから何か対策を考えるべきだと思う。そっと魔法をかけて、眠らせる。

 少しでも苦しみが減るように。最後は自由の身だったと知っても彼女自身はもう、そんな事も喜びにならない。もう何も感じていない程に壊れている。悲し過ぎる。この行為も意味が無い。

 だけど、この呪いを解かなくては少しでも魂の負担が減るように。首輪を外せば壊れた魂が命を紡ぎ出す事が出来ずにいるのがはっきりと分かる。命がこぼれ落ちていくばかりの体はもうぴくりとも動かない。

 意外に単純な作業だった。あっさりと取れた首輪が地面に落ちた。両手に付いている枷も外して行く。これで明日の朝までに死神が彼女を連れて行くだろう。魂の帰る道すら忘れて戻れないから、連れて行く必要がある。

 あの術の魂の縛る部分を誰がやったのか……いや、それを無くす為にやる事は沢山ある。


「この首輪を作ってるのは?」


「分からないよ」


「大体この規格だから何か決まり事があるんじゃない?」


「そう。すぐに体勢が変わるとかは無理だけど、魂に干渉させてるからこれは上が取り締まらないとダメだね。考えとくよ」


「あ、それは返さないとダメなんだ」


 倉沢さんが首輪の返還を求められているのを言った。無くすと罰金があるみたいだ。


「じゃあ、今日は借りるよ」


「分かったよ」



 僕はそのまま宿に泊まらずに神界に戻った。レイとマシュさんに相談した。


「ブランダ商会のに似てるね」


 レイが見るのも嫌だと言わんばかりに顔を背けた。


「というかそのままだろう」


 マシュさんも嫌そうな顔をしながらもじっと見ている。


「じゃあ、これを変えさせるのって無理かな? 奴隷商人がこれを受け入れないようにしたら良いかな?」


 僕にはどうしたら良いのか分からなかった。皆の顔を見て続ける。


「せめて魂を縛るのは嫌だよ。それに、これじゃ死神達が一々外さないとダメだし、どうなってるの?」


「冥界も黙認してるってことだね。これで冥界への支払いが増えるんだ。嫌とは言いにくいね」


「そうなんだ」


 ちょっとがっかりだ。


「でも、アキが……管理神がこのタイプのを嫌だというなら、変える事は出来るよ。死神の方が折れるようにコストが掛かりすぎて払えないと言ってこれをすり替える事は出来るよ」


 変更が利くんだ。


「これなら、ここの回路と術のこの部分を壊せばそのまま使える。全部一気に外すと暴動が起きかねないからな、やるなら段階的にやるしか無いだろう」


「精神が崩壊しても命令が効くのはこのせいだしね。それに地獄を呼んでる一つだよねこれって……」


 レイがものすごっく嫌そうにしながらもう一度首輪を見た。話し合って、その方向でいく事にした。直接の干渉をするのは余り良くないけれど、変わったばかりの今なら許される部分だと思う。奴隷の首輪の術と回路の一部の破壊をし、魂を縛っている部分は壊すことになった。

 解放をする所までは無理だけど、せめて魂の自由だけでもと思う。このタイプの物は外の技術が入っているので取り除けるし、魂の保護は神界の仕事だ。

 これで、余りひどい扱いをしたら動かなくなるので、奴隷の扱いが改善されると思うんだ。神樹のお告げで奴隷達にも一定の人権と保護を制定するようにと伝える事になった。

 奴隷商人達は焦っていたけれど、人を無理矢理動かして復興しても意味が無い。足下から崩れるだけだ。ただの借金での奴隷落ちなら返済が終るまでとか、子供を売るのではなく、本人が責任もって奴隷になる。それが浸透するまでは時間が掛かりそうだけど、徹底する事にする。いずれは奴隷とかいうのは無くなるように導くべきだと思う。

 もしくは奴隷の身分が良いと思えるくらいの待遇にするかだ。組合長のようにひどい扱いが好きという良く分からない人種がいるのだ。そこはなりたい人がなればいいと思う。将来的にどうするかはアイリージュデットさん次第だ。彼女も言うなれば奴隷と同じ立場だったのだからきっと良い方向に行くと思う。

 今回は一気に解放して虐殺や暴動に発展して地獄への繋がりが復活しないように、慎重に魂の縛っている部分を解放するに留めた。


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