33 征服
◯ 33 征服
僕が管理神になってから四日目、会議が始まった。半分のフィールドの掌握を終えて、残党狩りが行われている。残り半分はまだ戦闘地域だが、旗色が悪い所は無い。みかんの中間界では死神達が治療をしに入ってきていて、キリムとチャーリー、リーシャンが大活躍している。五日目にはみかんの中間界の安全が確保出来たのでアストリューからも神官達が来てくれて随分にぎわっている。
レイとマシュさんは管理組合を仲介に、ガリェンツリーの管理を巡ってブランダ商会と話をつけている。盗んだ訳でもないし、アイリージュデットさんの反乱が原因なのだ。
それに地獄からの侵略もあったりするので損害賠償付きで誰が払うのかとか色々と揉めに揉めてるみたいだ。アイリージュデットさんの身柄の要求なんかもあったりする。
落ち込んで僅かな力しか無い世界の利権問題なんてどうでも良いのだ。相手から損害賠償というものを引き出す為の話し合いになっている。再生出来るのか? というのは二の次だ。
みかんの中間界の存在が話を更にややこしくしている。まあ、狙ってレイがそういう風にしたんだけど、良く分からない感じだ。随分法外な価値を吹っかけてそっちに戻すなら支払いを要求すると言い出している。お宅の中間界は役に立ってなかったからアイリージュデットが反乱を起こしたのだといった感じだ。
ガリルの問題もある。契約に基づいて上位の者を認識して管理神として登録したのだからそちらのミスでは? と、迫っている。
突っ込みどころを抑えた話し合いはこの死神達が戦闘をしている間中行われ続けていて、最早消すつもりだった世界の後処理はブランダ商会もこれ以上は手を入れる気はなかったみたいで、さっきこっちに要求をするのを止めてどちらも帳消しでと、うやむや作戦に変わったとレイから連絡があった。
死神達の勝利が見えてきたせいだろう。さっさと処理をして手を切りたがっているのが見えてきたそうだ。最後までごねてた元管理神は何を思っていたのかは知らない。
アイリージュデットさんに神界のあちこちに閉じ込められていた元管理神の下位管理神達は、本人の意思を聞いて今後の選択を聞いた。
残ると言った者は一握りだった。全員新たに作られる世界に向かうと言って出て行った。ちなみにそんな世界は無い。
悪神達を取り調べた死神達からは、最後の契約をしてそれが終れば全員虐殺だったと聞いているからだ。一応それを最後に全員に教えておいた。真っ青な顔で出て行く人達がチョッピリ可哀想だったけど、新しい場所を探して欲しい。
残ると言った人達は薄々気が付いていて他の場所を自力で探していた人達だった。決まり次第出て行っていいかを聞かれた。寂しいもんだ。誰もがここを見捨てるという。沈みかけた船を引き上げる気がないんだ。最後を見届けようとも思わないのは仕方ないんだろうか?
「僕が頼りなさそうだからかな?」
「再生する気なんだね?」
レイが複雑そうな微笑みで聞いてきた。
「皆は違うの?」
「ここの管理神はアキだよ。決めたら良いよ」
「出来るならそうしたいけど、どうやったら良い?」
「言うと思った。借金返済計画を立てておいた!」
自慢げに何か見せてくれた。
「……マシュさんが立てたの?」
「なんだ! その目は! 信用出来ないって言うのか!」
「出来ないわね〜、自分の借金がどれだけあると思ってるの〜?」
「ぐ、だが、返せていない事は無い!」
「でも考えてくれたんだね、ありがとう」
誰もそんな事を考えてもくれてないと思ってた。それだけでも嬉しい。この計画表がうまくいくものなのかは別として。
「地獄と繋がってたダンジョンとかあるし〜、特訓には良いと思うの。外の戦闘員の養成所を作ったらどうかしら〜」
そんな案をマリーさんが出したので僕も乗って、
「死神も含めて?」
と、聞いた。どうせなら合同訓練も実地でやれば良い。
「良いわね〜」
「あれをどうにかするのも随分時間が掛かるし、目処が経つまではそうするかな。幸いにもフィールドごとの管理で出来るから酷い場所は切り離したまま実戦を積める場所にしてしまうのもありだね」
「マリーさんのブートキャンプ?」
「良いわね〜、そんな感じよぉ。新人だけじゃなくて幅広くやろうかしら〜。死神との合同訓練にも役に立つわ〜。闘神としてやるべきよねっ。地獄型のダンジョンの制圧の仕方を実地でやれるんですもの他の闘神もきっと興味を持つわ〜」
どうやらその計画にウキウキとしているみたいだ。さっきからテンションが高い。
「じゃあ、早速交渉に行ってみる? 外の闘神達にも告知しようか」
レイが死神の組合に連絡を入れ始めた。
「了解!」
「アッキも参加して新しい闇の生物を捕まえようぜ!!」
「え? あーそうだね」
「うじゃうじゃ湧いてるみたいだぞ! これを逃してちゃダメだぜ!」
「わ、かったよ。まずは皆を招待する準備をしないと」
ダンジョン経営はどうするか聞かれた。経営って? 何? 宝箱の配置だそうだ。地獄からの瘴気で湧いてくる魔物の始末をするのにそれがあった方がみんな頑張るそうだ。成る程。それは大事だね。
ダンジョンの魔物は体内に魔核を持っていて、倒されるとそれだけが残る仕掛のようだった。魔核は浄化してもらって初めて使える魔石に変わるのだ。うーん、ファンタジーゲームだ。
各フィールドのダンジョンは普通の動物達が魔物化したものもいて、それは魔核ではなく普通に死体として残るらしい。その材料を使って武器やら防具を作る事もあるのだとか。この各フィールドの宝箱はかなり質が落ちた物しか出てないみたいだった。
「リストを見たら分かるけど、木の棒とか木の盾とかカスが多くなってる。これじゃ誰も入ってくれないからね」
「うん、宝箱の数は減らしていい物をいれようか」
「じゃあ、アキの作ったアクセサリーでも入れようか?」
「え? そんなのいれて大丈夫なの?」
「オオカミの牙とかで作ってたあれは結構評判良いんでしょ?」
「あ、そうだね。あれでいいなら……」
「確か練習で作った革製品も大量にあったよね?」
「魔法の力が増したりとか癒しの効果があるし、倉庫整理も出来るし、調度いいと思うわ〜」
「じゃあ、本来のダンジョンはそれで、地獄型は訓練が目的だし宝箱は省く?」
「え〜そんなのつまんない〜。あたしの作った防護服を入れるわ〜。宝箱の罠も楽しみのうちの一つよ〜」
「じゃあ、そっちはそんな感じで」
家の倉庫にあったガラクタが持ち込まれた。ここの基準で何処に入れるかをガリルに計算してもらって木の盾とかは一階層とか森の入口とかそんなところだけになった。
宝箱は空いたら消えて他の場所に移るようにした。僕が扇子を作った紙とかまで持ち込まれた。製品じゃなくて素材としていれた方がここの人達も創意工夫するという訳でそんな感じになった。神界の倉庫に残っている木の棒と木の盾を見て他に使い道は無いかと脳みそを捻ったが、何も思いつかなかった。
「ダンジョンの外で交換出来る仕組みが欲しいね」
「そうね〜、宝箱はランダムだから欲しい物があたらない可能性があるものね」
「じゃあ、地獄型の方は交換所を作って、お互いの責任で変えてもらおうか?」
「それよりも買い取って売った方が喧嘩になりにくいし、仲介料も取れるよ。そういうのは管理組合が得意だから人員は任せて!」
ファンタジーゲームよろしく人界のダンジョンの場所は、冒険者ギルドが設置されているので地獄型のダンジョン専用交換所がみかんの中間界に作られる事になった。
ついでに見習い神官の診療所もそこに作って経験を積む為の施設が設けられた。アストリューからベテランさんが来て見習いさんの訓練を始める事に決まった。……中間界の経営は順調だが、肝心のガリェンツリー世界の運営は難航している。




