30 改造
◯ 30 改造
今日はアストリューで管理組合の通販部門の人達と話し合っていた。魔術の服の売り出し方の話し合いを詰めていた。デザインの部分をデザイナー募集で何人か入れるという話が出ている。組合も服の好みの問題にはうるさかった。
結局、旅行関係者とかは各地域の服装を入れて持ち歩きたいし、自分の世界の服装を入れたいという要望が多いのでそうなった。組合の言う事も一理ある。死神の戦闘服のデザインはナミリルさんに参加してもらうのもありだと思う。勿論、マリーさんの服も妹が気に入っているようにファンが付くはずだ。
魔術の服のデザインを自分で作れるソフト部分がかなり良い感じに仕上がっているので、やる気のある一般からもデザインの募集をやる事に決定した。
売り上げの管理とかは組合がやってくれるので、顧客と作り手を結ぶ形になった。ベースは僕達のアイデアが入っているので売り上げの何%かはやっぱり入ってくる。最初に選ぶ魔法布の一部にはカシガナ実の魔法の効果付けをしたものがあるので、それもメレディーナさん経由で少し僕の財布に入ってきたりする。
鞄や靴、靴下のメンズラインを作る話もしたのでそっちの売り上げも少し上がっている。うーん、何に使ったら良いんだろう? まあ、いいか。そのうちに高い買物をするかもしれないし。
「光の演出は独占出来たから良いわ〜」
「……そうだね、マリーさんのこだわりだし、あれをやるとコストが掛かるから……。でも子供服に付けるのは絶対可愛いよね」
「そうよ〜、乙女の心を鷲掴みよ〜っ!」
「男の子は変身ヒーロー的なのかな?」
「その手もあったわね〜」
マリーさんの目がキラキラしている。
「魔力で動かせる金属とかプラスチック擬きも代用品が見つかったから、ボタンやジッパーにアクセサリーも追加出来るようになったし、良かったよね」
「そうなのよ〜。中々良い感じよね。でもアキちゃんの『カジオイド』には敵わないわ〜」
「それはマリーさんの力のせいだよ」
「そうよ〜、その強さを表せるのが良いのよ〜。でも『スフォラー』に登録させて管理しちゃうのなら持てるようになるって言うのは考えたわね」
「うん、まだ完成じゃないって言ってたけど」
マシュさんが何やらやっている。魔術服は使う魔結晶で値段がどんどん上がって行く形になった。ただの着替えから光の演出付きの衣装替えに、戦闘服用の防護重視のものまで用意された。そしてデザインを作る為のクリエイタータイプの人用も完成したので売りに出された。無駄を省く為に、予約制だ。
魔法布は元々が魔法防護が少し付いているし、高い値段を出せばその人用にデザインを作って固定させるサービスは従来でもあった。変身する人は今まではそんな感じのサービスを使っていたみたいだ。
そこに、うちのチームが出したものはデザインも固定ではなく、いつでも変更が利く便利商品だ。魔法布とデザインを分けて自由に入れ替え出来る形にシステム化した事で一般受けも良くなり、最初の投資をすれば後はデザインの値段だけになったのだから良いことだ。魔法布が劣化したら、その取り替えの販売もあるし、アフターサービスも充実している。
告知の段階で随分管理組合の方に問い合わせがあったみたいだ。販売に向けてしっかりと予約も取ってあったので、その人達からデザインを決めてもらう事になった。専属のアドバイザーも付けて組合の商業施設に専用のスペースまで作られた。まずは試着をしないと嫌だという人は多い。変化する体に合わせて魔法布も変化をするので安心だ。
この事業がうまくいけば、マリーさんは自分の専用の店舗が出せると息を巻いていた。組合の商業地区の家賃は高い。
「あたしのデザインのお洋服が町を飾るのよ〜」
「嬉しいね」
「うふふ〜、今まで書いたデザインも見直してるの〜。魔術の服だと縫い目とか気にしなくていいんだもの。でも、わざと残してデザインにするのも良いわね。楽しいわ〜」
確かにとても楽しそうだ。苦労したけどその分の返りは大きい。
アストリューのみかん箱の部屋でチャーリーとリーシャンのお披露目があった。マシュさんが満足げな顔で紹介してくれたのは前と何処が変わったのか良く分からない二体だった。
「新生チャーリーとリーシャンだ。オートマタの技術を加えてみたから外でも動くぞ。『スフォラー』にも使っている動力と繋げたから外でもちゃんと動くし成長すれば喋る。『カジオイド』も使って彼らの意志でしか使えないように改造してある。魔力が使えたからそういう形にした」
僕が込めた想いと作り主の力とで意志を内包し始めていたところに、魔法を使って僕が動かそうとした事で一気に自我が生まれたのだろうと言われた。そこに僕がその念いを動力に体を動かす力を与え、更にマシュさんが大改造して生まれた存在だ。ただの機械じゃあ無い。そもそもが霊魂の出来上がりかけてたところにそれを補助したのだからもう魂を持ったぬいぐるみだ。
「ここの守護が出来るね」
「家の手伝いが出来る優秀な熊とうさぎだ」
「忙しくなるから調度いいわ〜、嬉しい。よろしくね〜?」
「よろしくね、チャーリー、リーシャン」
二人が頷いた。手には爪が付いていた。出てきたり引っ込んだりしている。長さの調節が出来て魔力で指のように動かせた。『カジオイド』で出来たその爪で器用に物を掴んでは料理をしたり掃除をしたりしてくれ、妖精達のお世話まで手伝ってくれる。有り難い。ボディーの重量はぬいぐるみ時よりも増えたけれど、軟らかさは変わらなかった。ふかふかだし、抱き心地は最高だ。
「スフォラに合わせた同様の動力を作ればスフォラの力も増えそうだから作って実験しよう。ぬいぐるみの二人の力がかなり強いからスフォラももっと魔法が扱えるようになるはずだ」
また実験なんだ?
「分かったよ。じゃあ早速」
僕はスフォラから出て幽体になった。みかん箱の部屋で集中する。スフォラの念いを感じながらそれに合わせた力を集める。光と闇とを集めて二つが入れ替わるようにくるくると動き続けるそれをマシュさんに渡した。
「じゃあ、やるか」
そう言ってスフォラは新しい改造に向かった。スフォラにも『カジオイド』を付けてくれるらしいので期待しよう。




