29 扇舞
◯ 29 扇舞
今日はアストリューでのんびりと過ごしている。夕方から紫月とポースに付いて行って今度のステージの様子を見に行くのだ。何やら音楽祭みたいなイベントがあるらしく、そこでやってみないかと誘われた。
マリーさんはそれを聞いて気合いを入れていた。勿論、衣装の気合いだ。僕はそこで楽器の演奏とか出来る人と知り合えたらと思っている。色々と楽しめそうな気がするんだ。
「それで、ステージと周りを見てから照明の位置とかをスフォラと決めようって言ってて、いつもと違って宴会というか音楽祭だし、ちゃんとステージがあるからもしかしたら演出は自前でなくても良いかもしれないし確かめておきたいんだ」
「スタッフが揃ってればそうかもしれないわね〜」
「取り敢えずそれを見てからかな」
「そういう事なら衣装もそれに合わせましょ〜。日にちもあるから間に合うわ」
「うん、七日間この町中にあちこちから音楽好きが集まって演奏会をやってるんだって。メインのイベントが町の中央の野外公園でのライブなんだ。日が沈むと同時に始まるからそれに参加だよ」
「いきなりメインなの〜?」
「うん。神殿の人が呼んでくれたんだ。演奏は三日目の二番手だよ」
参加する人達は多いのでそれに混ぜてくれたみたいだ。
「成る程ね〜」
「場所はこことは逆の夏だから、衣装もそれっぽくした方が良いかも」
「分かったわ〜。見に行きましょ、楽しみねぇ」
マリーさんは両手に頬を当てて妄想にふけっているみたいだ。そっとしておこう。ポースもかなり気合いを入れていて、また新しい曲を作っていた。本のページは音符らしきもので埋まって行っている。
紫月も負けずに何やら妖精達とコーラスを極めていた。どちらも言葉よりも音の感じが主体だと思う……。ポース語も詩になると言葉なのか音を出してるのかって感じだ。感情そのままを乗せるための手段だから気にしないでおく。……音楽語があるんだきっと。
そして、町のステージを見た僕達はどうするかを会議し始めた。
「以外と客席に近いのね」
「そうだね。ライブ会場っていうかお祭りだから、かなりラフな感じだね。露天とかも出て出入りも自由な感じだし、お酒を飲んで食べながら皆で楽しめるって感じだね」
当日も食べて良し踊って良し寝てても良し、の自由な感じだと聞いた。
「真剣に見るというよりも皆が楽しむって感じね。緩い感じで良いわ〜。浴衣とかそんなのも良いわね〜」
「うん。夏祭りだね」
「そうね、そんな感じね〜」
「じゃ、ノリの良い曲が必要だな。気合いが入るから最初はそんな感じが良いぞ!」
「そうだね、ポースの気分が上がった方が楽しめるからそうしよう!」
と、次々と決まった。僕は浴衣ならうちわか扇子がいると思い、日本の神界に探しに行った。考えたら冬場にそんなものは売ってなくて、自作する事になった。ネットで作り方を調べて取り敢えずは材料を集めてみた。
ポースを作った時に出来た紙の試作品の山からしっかりしてそうな何枚か抜き出して、その横に細い木の棒があったのでそれを適当に掴んだ。紫月に手伝ってもらいながら、木の縦の繊維にそって剥がして適当に形を整えた。木の棒の長さから適当に紙の大きさを決めてスフォラに正確に半円を描いて貰って切り抜いた。
表はカシガナの花の絵を描いてから折り目をつけて行き、木の棒に糊付けして紙に貼付けていく、スフォラと魔法が無いと無理な作業だ……。慎重に折り目にそって畳み、魔法で熱を通してから冷やして魔法の糊を定着させた。
要の部分をマリーさんに頼んで、はみ出した所をカットしたら持ちの部分の手触りをよくする為に磨いた。要の部分に組紐を通して飾れば出来上がりだ。




