28 誘導
◯ 28 誘導
地球もクリスマスが終ったし、年末の大掃除を始めることになった。庭の物置やら網戸なんかを綺麗にしつつ、夕飯の献立を考えていた。やっぱり鍋だろうか? 昨日はおでんだったし、やっぱり暖かいものが良いよね。
「夕飯は鍋で良い?」
妹に聞いたら、
「すき焼きが良い」
答えはこうだった。
「すき焼きはそういえば最近食べてないか」
「じゃあ決まり!」
「分かったよ。冬休みも課題が出たって?」
「そうなの。厳しい……ワークノートも五冊もあるし、あり得ないー」
大げさに落ち込みながら妹はガラス窓を拭いていた。
「そっか、まあ学生だから」
「お兄ちゃんは高校の宿題とかはないの?」
「うん、無いよ。試験だけだから……逆に自分がどのくらい勉強したら良いのか分かりにくいかな」
「あー、自由すぎても分かんないよね。何か分かるかも」
窓のサッシの溝もこんな物かな? 僕は外していた網戸を入れ始めた。
「そういえば、気の操りとか伊東さんに褒められてたね」
「うん。二月から私も夢縁学園に行くからね?」
「そうだったね」
妹はぼんやりとしか見えるようにはならなかったが、幽霊の気配が分かるみたいだった。御門さんの霊気を感じたり、トシの練習している闘気を感じたりも出来ていた。気を操るのは上手いみたいだしタイプ的には妖気を操りそうだと伊東さんが言っていた。霊気も少し扱えるみたいだから沖野さんと似たタイプだ。
「うん。おいしい食べ物が多いって聞いてるよ。学食も美味しいって利香さんが言ってたし、すごく楽しみ! お兄ちゃんも連れて行ってくれるんだよね? 利香さんが奢ってもらったって言ってたよ〜」
お小遣いの範疇では学食ぐらいしか使えなさそうだったから、たまにはね。
「そうだね、皆で行こうか」
「約束だよ? 奢ってね?」
「う、うん」
なんだか誘導があった気がしないでもないけど入園祝いだし、いいかな。妖気を操るくらいだそんな感じなのかも。言われなくても連れて行くつもりだったし。
妹と夕飯の買物に出かけて一緒に作った。と言っても材料を切っただけだ。後は皆が揃ってからの方がいい。家族揃って夕食を食べた。
「千皓は休みの予定はどうなんだ?」
父さんが聞いてきた。
「うん、友達と会う約束してるよ」
シュウと会う約束をしている。
「そうか、今年も皆でゆっくりと家で過ごすくらいだな」
「そうね、春ぐらいに少し旅行にでも行きたいわね」
母さんが旅行の提案をしてきた。
「そうだな。千皓も随分長い間見えるようになってるし、温泉とかなら大丈夫だろう」
確かに宿が中心ならそうはバレない。
「やったぁ、っっと」
妹は喜びすぎてお茶を零しかけている。僕も頷いて行くのを賛成した。




