26 月竜宮
◯ 26 月竜宮
次の日の朝、完成した宮殿が霧の晴れた水月湖に現れたとの知らせが別荘内を騒然とさせた。どうやら予定通りにラークさん達が終らせたみたいだ。
皆で宮殿に向かう事にした。宮殿は……島の大きさから変わってしまっている為、全くの別物だ。色は前と変わらない混じりけの無い白色で宮殿の上部には翼竜の離着陸の場所まである。地上の部分には水竜の為の港も完備されていた。実は地下の奥宮殿にも入口があり、水竜の地下の乗り場はお忍び用でもあるみたいだ。こっちにもアストリューの酸素キャンディーみたいな、空気を発生させる魔術があるので出来るし、短時間なら空気の膜を張るだけでも大丈夫だ。
「これは……島が大きくなってないか?」
僕達は湖の端に来ていた。門で繋げる形になった島は位置も少し岸から離れている。
「門が二つあるがどう言う事だ?」
セスカ皇子は戸惑っている。外門の様子に首を傾げていた。
「あっちが入口でこっちが出口だよ。あっちから入らないとダメだよ」
移動して門の前に立った。湖の向こうに見えてなかった道が現れる。僕達は馬にまたがったままそこを進んだ。
「なんと!! どうなっておるのだ」
「空間の変換術が効いてるんだよ」
「成る程、管理組合でもたまに見るあれか?」
「それなら分かるが、随分思い切ったな」
「ヴァリーは分かるのか?」
「あー、何となく見た事あるってだけだ。理解は出来ない」
「ヴァリー、切り替えのカバンを持ってるから、あれを見せたら? 規模は小さいけどそんな感じだし」
「ああ、財布もそうだったな。兄上、後で見てみると良いぞ」
「うむ。それで宮殿に着いたが何処から入るか分からぬぞ」
そこにセーラさんとネリートさんがやってきてセスカ皇子を呼んだ。セスカ皇子は膝をついている。後ろにいた従者もそれに従った。まずは宮殿の持ち主の登録からだ。正門と中宮門、奥宮門を通る人を決めたり色々と説明している。
まあ要するに魔力紋と声紋が一致する人が中に入れる仕掛になった。奥宮門はセスカ皇子や、皇族、国、そしてラークさん達神々に悪意を持っていると通れない。僕の力にラークさんが少し力を注いでそんな効果を付けた。それをマリーさんが強力に効果を持続させる為の術を空間に施し、時間の劣化を防ぐ為にレイとメレディーナさんが更に上から力を注いである。
何やら誓いを立てる儀式の様な事が始まった。何の事は無いがパフォーマンスで意気をつける効果と皆の結束を固めるのに調度いいからやることになっただけだ。うん、信仰はこういう形からも得られるものなのか……と、ちょっぴり勉強した。
宮殿は地上部分は大きな玄関ホールがあって、その奥から地下に降りれば透明な壁から湖の中の様子が見れる大パノラマが広がっていた。天井部が二階までの吹き抜け部分からの明かりで暗さは感じない美しいホールになっている。そこからは執務室、会議室、客間に書庫等が揃っていた。
内側の装飾はシンプルで飽きのこない感じだ。中宮殿は従者達の生活区やら食堂に厨房や広い裏庭へと続きそこで菜園やら動物の飼育まで何でも出来るようになっている。地下の備蓄庫は劣化を防ぐ魔法付きだ。時間は止めていない。甘やかすのは良くないらしい。
「ここまでとは……腰を抜かしそうだ」
「夜はすごく綺麗ですよ」
「そうか。まだ驚かせてくれるのか」
地下は壁がほんのり光りを発しているので光り要らずだ。夜は床の両端部分だけがほんのりと光り、天井や壁に湖の銀色の光の揺らめきが映る仕掛けでレイの仕業だ。
奥宮に入るには門をくぐらないとならない。セーラさんは門には神眼が宿ってると説明していた。皇族の為の空間だ。落ち着きのあるゆったり設計で丸みの多い壁や柱は見てるだけでも癒される。角を取った装飾は見た目も綺麗だ。そこから先は皇子達の好きにして良いプライベートな空間だ。
地上のよりも小さめの厨房やら生活の為の施設も揃っていた。二階へと続く螺旋階段を上るとテラスのある部屋へと続いていた。外からは見えないし、入れない設計だ。実際は壁に見えている部分になる。二階部分は続き部屋を通ってまた門をくぐると、中宮殿の二階の皇子の執務室と繋がった。三階部分は翼竜の離着陸の場所だ。四階部分は小さな展望台になっていて見晴らしが良い。元々天井部が高い設計だから高さはかなりある。
水竜に乗って水の中に潜り、客間や奥宮殿は外からの視線を通さない設計なのを見て、セスカ皇子は満足そうだった。
早速引っ越しの準備が始まった。家具等は何も置かれてなかったので新しく作る必要があり、職人達が集まった。王宮からも選りすぐりの人材を招いて全ての物のコーディネートを決めていた。そんな様子を横目で見ながら僕はカシガナの木の種を一つ二階のテラスに植えた。
お兄さんの無事な様子を見てヴァリーは満足したのか、母親に会いに翼竜に乗って飛んで行ってしまった。きっと口止めをしに行ったのだろうが、もう遅いと思う。ホングは仕事をするからと、来た道を僕と一緒に水竜に乗って帰った。




