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世界を繋ぐお仕事 〜世界征服編〜  作者: na-ho
しんせかいへのみち
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24 密偵

 ◯ 24 密偵


 少し眠っていたのか、ベッドの縁に座ったまま崩れたような姿で目が覚めた。外が騒がしい。なんだか悲鳴が聞こえた様な気がするし、今もバタバタと足音が騒がしく響いている。仕方ないので上着を羽織って部屋から出た。

 砂漠よりは気温差は激しくはないけれど、夜は寒い。従者達が走り回り、警備の者が何やら慌てていた。隣からホングが同じように上着を羽織りながら出てきた。


「騒がしいな。何があった?」


「さあ、僕も今、気が付いて出てきたんだ。どうもあっちの方で何かあったっぽいね」


 音の魔法で一番騒がしそうな方向を指さした。そのまま向かって行ってみる事にした。セスカ皇子がヴァリーに連れられて走ってきた。従者と、警備も慌てふためいていて出す言葉が意味を持っていなかった。


「ヴァリー、何があった?」


「ホング、アキ、分からないが、従者の一人が……なんて言ったら良いんだ?」


 ヴァリーが取り乱していた。何か恐ろしい物を見たようで引きつった顔だ。


「腐っている。が、動いている。死して動いてはならぬ者だ」


 セスカ皇子は顔色が悪いながらもなんとか答えた。


「アンデッド? 腐ってるならゾンビかな?」


 それならその驚きようは分かるよ。


「のんきだなアキ。ま、ゴーストだし、見てきてくれよ」


 ホングが軽く使いにでも言ってこいという感じで言った。


「え? そう?」


 仕方が無い。行こうとしたら、肩を掴まれた。


「冗談だ。本気にすると思ってなかった」


 焦った顔をしている。


「もう! でも見ないと分からないよ。何処にいるの?」


「浴室だ。調度用意が出来たと聞いて行ったら、ぼろぼろと皮膚が崩れながらも歩いていた。助けを求められたが、どう見てももう既に死んでいないとおかしい姿だった」


 セスカ皇子が、その姿を思い出してか今にも気を失いそうにしていた。分かるよ。僕は気絶したから……。ゾンビと言えば、アストリューの物は触るとダメだ。確認はしておこう。


「今日は僕のお土産の温泉の元とか入れました?」


「ああ、使うように言ったが、関係あるのか?」


「霊泉の物だから、アンデッドにはちょっと良くないかな」


「それを掛ければあれは止まるのか?」


「助けを求めたんですよね? 僕が一度見てきます」


 正気があるなら、保護対象だ。浴室がどこか分からなかったが、従者が死なないぞ! いや、死んでるんだ! まだ動いてるぞ! と、叫んで声のする方向を目指した。

 後ろからヴァリーとホングも付いて来ている。ラークさんに、ここではアンデッドは生息しているのかメッセージを入れて聞いてみた。

 セーラさんからすぐにアンデッドに対面するのは初めてじゃのと返事がきて、ネリートさんに片付けるでないぞと、念を押され通信が終った。こっちに向かってるみたいだ。

 つまり、悪神の手下ってことだろうか。浴室の外側に出てきた姿を見た。警護の者達も剣で刺しても死なない様子に何をしていいのか困惑して、神に助けを懇願していたり、気絶していたり、吐いている者まで混迷を極めていた。


「うあぁぁ、がぁああ……嫌だ、崩れる……助けて、よ」


 女性のようだ。温泉の元が入った湯気の霊気に当てられて体が崩れて行っている。黒い瘴気が抜ける度に内蔵やら残っていた皮膚がこぼれ落ち、床に落ちていった。


「う、これがアンデッドか?」


 ホングが腐った臭いに直ぐに後ろに下がった。闇のベールを掛けて様子を見る。しばらくして瘴気の抜けは止まったが、殆どスケルトン状態になっている。切られたのか腕の先が無く、骨も随分あちこちひび割れたりしている。


「悪神に何かされたの?」


「分からないの。私、もうダメ? 苦しいのにどうして死なないの?」


「もう、死んでるからだよ。気が付いてなかったんだね? 多分操られて気が付いてなかっただけだよ。もうすぐ、守り神が来てくれるよ。ちゃんと術を解いて、あるべき所へと返してくれる。安心して?」


 僕じゃこんな複雑な術はまだ解けない。


「そんな! 私は地獄行きなの?」


「大丈夫。地獄に行くなら、僕の癒しが効かなくなってからだよ。皆と同じ所だから心配しないで」


 骨になった残っている手を握って声をかける。女性の幽体がほんのり重なって体(骨)に縛り付けられている。こんなになっても精神が崩壊しないのはそんな術を掛けられているのだろうか。そこにセーラさんとネリートさんがやってきた。


「なんと、アンデッドが本当に動いておるか」


 ネリートさんが驚いた様子でこっちを見ていた。


「うむ、思ったよりも地獄が近いのかもしれぬな」


「冥界に連れてゆくか」


「何、ほんの隣よ。心配せずともこのままで終わりにはせぬ。月の癒しのベールは外さぬ方がよいの。一旦神殿まで来て貰うぞアキ」


 ネリートさんはゾンビな彼女に少し声を掛けて安心させていた。まだ、瘴気が残っているし、このままでは精神の傷が増えて魂への負担が掛かるだけだ。


 そのまま、転移装置を使って神殿に向かった。着くとラークさんも頭を抑えていた。取り敢えず話を聞いて、まだ悪神が潜んでいるのかを調べる事になった。

 現場に残ったセーラさんはついでなので、宮殿の者を全員残らず集めて温泉の元で試すつもりらしい。もう一人ゾンビがいたが、本人は同じように気が付いてもいなかった。セーラさんなら見れば分かったが、セスカ皇子に分からせる為にやったみたいだ。

 街の住民の調査もやるべきかもしれないと、後でセスカ皇子は顔色も悪く、そう言った。本人のせいでないのだから、追及出来ない。知らない間に殺され利用されていたなんてその方が悲し過ぎるし、怒りがわき起こる。


「普段は普通に生活をさせて時々呼び出して情報を引き出し、その後呼び出しを忘れさせて普通に宮殿へと戻していたんだろう。アンデッドなら悪神達も操るのに差し支えは無い。より深く操る為に犠牲にされたようだ。霊気に触れるか、術が切れなければずっとあのまま気が付かなかっただろう。防腐処理までされている所を見ると、最近作られたという訳ではなさそうだ」


 と、神殿の神官の一人が厳しそうな表情で話してくれた。今は術を解いて普通の魂としてここの冥界へと送られて行った。僕はセスカ皇子の元へと戻った。勿論、質問攻めは覚悟だ。セーラさんが、ネリートさんと一緒に王宮へと調査に向かったようだ。その後、転移装置を使って戻った。


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