20 変位
◯ 20 変位
死神の組合に、正式にガーディアンとしての見習いとして登録される事になった。闇のベールは最初に言われた規定の時間をクリア出来ていないし、範囲も狭い。いや、狭くなったし、時間も減った。悪意ある者を避ける事は出来るようになったが、他が落ちた。それでも何故か見習いになった。
僕の方法は同じ場所でも認識できず、触れ合えない亜空間での切り替えによる仕分けになった。悪意を持って触れる者とそうでない者とを分ける仕様だ。闇のベール内の空間で親しみを受け入れ、憎しみを素通しするかで分けるだけだ。
同じ場所に次元をずらして空間を配置するだけで、そこにいるのに認識出来ないし、空間が違うのでベールにも気が付かずに、触れる事も出来ずに通り過ぎる。
星深零でフォーニが僕を認識出来ずにベールの中を通り抜けて行く。それが僕の一つの答えだ。その内攻撃もすり抜けさせれるだろうと言われた。でも、すごく意識して集中しないと選り分けもまだ難しい段階だ。無意識でもやれるくらいに特訓だ。攻撃をすり抜けさせるとか高度な事は当分は無理だろう。取り敢えずは慣れるまで頑張らねば。
死神の仕事は、最初は先輩の補佐をするだけだ。危険は……あるのでポースとマリーさんが付いて来てくれる。ポースはお目付役が無いとアストリューから出れないので、マリーさんは主にその為に来る。
「お財布の切り替えのアイデアと同じ発想ね〜」
「うん。防ぐのは無理だから素通りさせたら良いかなって」
「発想の転換ね〜?」
フォーニの憎しみを返すのにも似ている。僕のなかでは憎しみを、哀れみに変えて処理し、不必要な憎しみを返したのだから。
闇が光を吸収しても、内側の闇を光は照らすだけだ。痛みを伴っても新たな光を生み出せる程に闇も光を包めなくては意味が無い。光り輝く者を守る闇を作ろうと思う。初めてこの闇を出した時も光を守る為だったから。
「随分成長したわね〜」
照れながらも頷いた。まあ全然足りないけど少しはね。
「憎しみとかの負のエネルギーが糧なんだね、闇落ちの人って」
「そうよ〜。人々を困らせれば困らせる程、彼らは肥え太って行くのよ〜。怖いんだからね〜?」
「それは怖いね。太ったら分裂するの?」
冗談で返してみた。
「そうなのよ〜。いつの間にか増えてるのよ〜。台所の敵並みにしぶといのぉ」
マリーさんも乗ってそんな事を言っている。
「困ったねそれは。良い殺虫剤は何処に売ってるんだろうね?」
「それは自前の腕でスパンッとやっつけるのが手っ取り早いのよ〜」
「そっか。マリーさんは出来る人だね」
「そうよ〜、アキちゃんのは敵を入れないフードカバーね」
「そうだね。埃も入らない精度だよ」
「だから死神の組合が見習いに入れたのよ〜。中継点としての役割が出来るの。休憩したり、そこで回復をしたりする拠点になるのよ」
「そうなんだ?」
「そうよ〜。先輩と交代しながらやるのよ? 時間を伸ばせれば先輩もそれだけ楽が出来るんだからね?」
登録はされたけど、二時間を超えて維持出来るように特訓中だ。
「うん。頑張るよ」
そっか。補佐でもかなり重要な役割だね。
そしてみかん箱の部屋も、同じように憎しみを持って傷つけようとする者や、悪意を広げようとする者は入れなくなった。
僕の作るカジオイドもその性質を持たせる事が出来た。マシュさんはそっちで出来るようになったのならと言って、悪用出来ないように制限を更に上乗せする感じで開発をしてくれている。
僕の作る全てがその性質を持たせれるようになったので、今までの物の作り直しをしていた。収納スペースも作り直したし、チャーリーとリーシャンの動力も変えた。キリムの光の力の純結晶も変えた。
憎しみを糧に生きる者は受け入れない事にしたから、家の妖精達の守護もまかされるようになった。まあ、みかん箱の部屋にいざという時は入るだけだけど……。
収納スペースはギダ隊のキャンプスペース用に一つ、使い勝手を試して貰っている。二人の闘神も竜達を運ぶのに欲しがっているので、同じように試験してもらう事になった。
あー、変な空間なのは皆なら黙ってくれるからね。僕がもっと制限出来るようになったら良いんだけど、闇のベールに繋げてる亜空間のように普通には中々ならない。間が抜けている。世界を繋ぐ力と魔法との間にある抜けもそんな感じだ。埋めて行くにはパズルピースを探さないと行けない。




