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世界を繋ぐお仕事 〜世界征服編〜  作者: na-ho
えさのかち
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1 横縞

 えさのかち

 ◯ 1 横縞


 レイと一緒にアストリューの神殿でマッサージを受けていた。ストレスが多かった日々で疲れを取る為だと言っていた。僕も賛成だ。

 ダンジョンの為の核として作り替えられていた妖精達の、魂の処理が始まったらしい。ダンジョン化の術から無事に切り離して冥界に運んだけれど、解体して元に戻すのにラークさん達と神官達が頭を悩ませているらしい。余程酷い殺され方をしているのか尋常じゃない瘴気を放っていて、浄化に時間が掛かるみたいだ。


「メラードノストの方は、核が見つからなくて手をこまねいてたんだけど、それが狙いの囮だってそっちの邪神と悪神達の尋問で分かったからね。一段落したよ」


 どうやらダンジョン化が完全に止まって、再生に入ったらしい。


「そうだったんだ」


 あのとき小屋でタキ達が話してたのと良く似てる。もしかしたらその事だったんだろうか。


「でも、核はもう一つあるはずなんだ。ダブルダンジョンってことはどこかにあるはずなんだよ。それが見つからないと、直ぐにでもそれを持ち込めばナリシニアデレートでも、メラードノストでもひっくり返されかねない」


「う……随分ギリギリだね?」


「そうだよ。アキがメラードノストでの憎しみの目を気にしてたから、ちょっと探ったんだよ。そしたらそんなものが出来てて、ルージンなんか泣きべそかいて助けを求めてたからね。全くさぼり過ぎなんだから!」


 そっか。あの憎しみの籠った目は悪神達の仕業だったのか。誤解だったんだね。でも、確かにさぼったせいだから仕方ないと思う。いや、さぼってた訳でないラークさんでもこんな事になってるんだから、一概には言えないか。

 あれから警戒態勢が組合でもまたされてるみたいだ。移動の制限がかなりされてて、動きが鈍っている。それでもやらないよりは良い。


「ブランダ商会はどうなったの?」


「尻尾は捕まえられなかったけど、転移装置を悪神達に売ってるからね……注意はしたけど、どうとも思ってなさそうだよ」


「どうしてそんな感じなの?」


「……そうだね。こっちに存在出来てるんだから、権利はあると主張しているかな?」


「一理あるんだね?」


「確かにね、最後の一線だけは超えずにこっちにしがみついてる。向こうに行くのを恐れているんだろうけど……最後の最後で踏み越える事が出来ずにいるのは、やっぱりこっちの美しい世界を離れるのが惜しいからだよね。美に未練を残すなんてちょっと可愛いよね?」


「そ、そうだね?」


 そうなんだろうか? 良く分からないけど、そう思っておこう。いや、可愛いって何だろう? いや、追究してはダメだ。僕は悪神や邪神の美味しい所だけ欲しいなんて、ずるいとは思うけど。


「管理神が変わるって、どうなるの?」


「……そうだね、その世界のエネルギーの支配権が移るってことだよ。悪意で変えようとすると直ぐにバレるから、今回みたいに何重にも結界を張ったり、空間のねじれを作ったりして見えないように伝わらないようにして、管理神の目を盗んで世界を乗っ取ろうとするんだ。後はやりたい放題して奪い尽くしたら次に移るんだよ」


「その世界はどうなるの?」


「エネルギーが無くなったら消えるしかないよ……」


「そんな、酷いよ」


 そんな風に消えるなんて嫌だな。


「その理由で解体せざるを得なくなった世界は多いよ。元の管理神の不始末で解体というのよりも多いんだ。ブランダ商会の所ではダンジョンと繋がっても上手くやってる所もある。ただ、悪神や邪神が生まれやすい世界になるから……それで外の世界のエネルギーを奪って持ち帰ってなんとか凌いでいるんだ。盗人だよ。それで盗みに入る世界が、自分達と関係を持ってない世界だけっていうのは偶然じゃないよね」


「うわ、厭らしいね」


「そうだよ。いけしゃあしゃあと、ガーラジークの所にブランダ商会が来て契約を迫りに来てたよ。うちと契約すればこのようなことは少ないと言ってね。悪神と繋がってるからそんな事を言えるんだよ」


 うわあ、ラークさんの怒った顔が目に浮かぶよ。


「そういえば、小屋の中で嫌でもうちと取引になるって言ってた人がいたけど、あれはブランダ商会の人だったのかな?」


 ふと、頭の中で何か繋がった様な感じで、ポンと言う感じでそんな事が出て来た。


「見せて?」


 レイがパックしている顔をこっちに見せてそう言った。


「うん」


 レンガ色のジャケットの男が、嫌でもうちと取引になるとか映像の中で言っている。


「成る程ね。悪神達に気を取られてこいつらは後回しだったよ。確かまだガーラジークの神殿の地下牢だよ。至急、取り調べを行うように連絡するよ」


 そう言って、レイは全身パックで磨いた体を確かめて、服を着だした。僕も付いて行く事にした。


 地下牢には、タキとレンガ色のジャケットの男と、黒一色の男が牢屋の掃除を自らやっていた。雑巾を絞って手で全部を拭き取っている最中で、何とも言えない感じだった。僕達が着いた時には尋問は既に終ったみたいで、推測の通りのブランダ商会の人間だったみたいだ。タキはティランと共にヘラザリーンに切られたと思っていたら、売られたらしい。人身売買? 良く分からないけれど、ブランダ商会の奴隷になって働いている状態だったみたいだ。

 ヘラザリーンが窮地に陥ったのを、取引してブランダ商会が手に入れたのがタキとティランという事みたいだ。逃がす事を条件に能力のある人間を買ったということらしい。殆どただ働きみたいで、嫌な感じだ。勿論、ブランダ商会の方はうちの人間じゃないと否定したそうで、既に何処の所属でもない人間にタキはなっていた。レンガ色の男と黒一色の男はブランダ商会の人間だと分かっていたが、決して自分では認めようとはしなかった。まあ、永久にこの地下で暮らすのもありだよね、とレイが呟いていた。

 タキに関しては、地球(ちたま)での罪と、マシュさんからの多額の請求書と、ここでの罪が加算されるので、どうなるかはまだ分からない。董佳様は地球からの永久追放にしようかしら、と帰りたい発言している映像を見ながら嫌そうな表情で言っていた。

 まあ、確かに帰ってきて欲しくない気持ちも分からなくはないけれど、それはせずに少しは希望をあげて欲しい気もする。なんせ、目が死んでいて、ご飯もろくに食べれてないみたいだったし……。


「そうだね、彼に関してはここでの事は利用されての事だから、他の二人よりは罪はかなり薄いね」


 ラークさんに地下牢から出れる可能性を聞いてみたら、そんな答えだった。実際彼らの雑用をやってたというのが分かっている。ここの世界の事も知識として教られてもいなかったのだから。自分のやってる事の結果がどうなるのかも全く知らなかった。


「そうですか。じゃあ、マシュさんの請求は彼が働く所がないと無理ですよね……」


「そうなるね。地球の方はどう言ってるんだい?」


「永久追放を待ってもらってます。それにマシュさんからの借金を何処で調達させるか、検討してます」


「分かったよ。地下牢の全ての掃除を彼に科してから、そっちに渡す手続きをしよう」


「はい。無理言ってすいません」


 地下牢と言ってるけど、違う界だ。神殿のある場所からしか何処とも繋がらない場所だった。どう見ても掃除は一ヶ月くらいは掛かりそうな地下牢の広さは半端なかった。タキは着替えも何もなかったので、囚人ルックの横縞服を三枚程差し入れに行った。マリーさんがそれしか作ってくれなかったのだ。


「着替えだよ。ここの掃除が終わったら、他の仕事が待ってるから頑張ってね? 借金が返済されたら地球の方に返して貰えるようになったから、頑張って。地球の生地でわざわざ作ってたよ、この服」


 董佳様は渋々ながら、帰還を認めてくれた。罪人としてなので記憶の処理とか色々されるみたいだけど、灰影の人と同じぐらいの彼を邪神とか悪神と同じように処理は出来なかったみたいだ。それでも随分な温情だと思うので、それに答えて欲しいと思う。……借金の返済が恐ろしい桁だったから、かなり先の話になりそうだけど。

 横縞服を見て、不機嫌さ全開のタキの目から視線を逸らして、地球産の生地だと伝えておいた。


「分かったよ」


 と、言ってふっと笑った気がした。もしかしたら横縞服に地球でしか通用しない意味を見たのかもしれない。歯ブラシとコップは僕の差し入れだ。まあ、日本の囚人服は実は横縞じゃないみたいなんだけど、こっちの方が何故か有名だ。モップとバケツはマシュさんからだけど、費用を借金に上乗せしていたからどうなんだろう……。

 この八日程で少し痩せたタキは、やっと目に力が入ったように思う。でも、服の間に入ってたマリーさんの仕立てた下着に目を剥いて文句をつけられたけど、紐パンがダメな理由は僕には良く分からなかった。もしかしておかしいんだろうか? せめてレースを付けるのは次からは止めてくれ、と泣きながら訴えられた。泣く程嫌なら仕方ない、マリーさんに伝えておく事にするよ。


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