17 説明
◯ 17 説明
レイカ様との繋をお願いする程に俺は恥知らずじゃないが、説明はして貰えると助かる。という木尾先輩のメールを受けて、今日は昨日の騒動のあった時にいた勉強会のメンバーと一緒に公園で待ち合わせた。
そのまま図書室の談話室を一室丸ごと借りたという太っ腹な木尾先輩が、そこに先頭に立って向かった。
「で、勿論来たって事は説明してくれるってことだよな。大丈夫ここは防音はばっちりだし結界も張って準備は万端だ」
そう言って、椅子を勧めてくれた。ささっとお茶まで出てきた。そんなに態度を変えなくても良いのに。
「態度は今まで通りで大丈夫ですよ? 先輩」
「そ、そう言う訳には……。レイカ様とデートしてたから、その、無下には扱っちゃダメだろう。あいつらの二の舞はしたくないからな」
何か別の心配をしているみたいだが、そんな雰囲気は僕達の間には無い。その誤解は解いておく事にして、口を開いた。
「そう? でも僕に何かしても得にならないよ? そんな心配する仲じゃないし、怜佳さんとはお茶会のメンバーだから、あそこでケーキセットを食べたんだよ。いつも皆のお勧めをメンバーと一緒に食べてたから助かってるよ」
「な、なにっ、レイカ様の口に入れていいのか?! いや、重大な事をぽろっと言うなっ。いやっ、庶民の味が好きなのか?」
頭を抑えながら木尾先輩は何か叫んでいる。分かった質問は最後だけだ。
「そうだね、興味があるみたいだよ。焼き芋も気に入ってたし」
「っ!! そんなものまでっ!」
木尾先輩は何故か首の調子が狂ったように震わせて叫んでいる。そんなにショックを受けて、大丈夫かな? 我々の責任は重大だと、何やらフラフラと机に突っ伏してしまった。隣にいた園田先輩が介抱し出した。食べ歩き会のメンバー以外は苦笑いだ。
「それよりも、弟の処分は……永久追放なのか?」
加島さんは少し顔色が悪い。
「夢縁警察で反省はしてたから、一年間の追放に決まったよ」
二度とここの土は踏ませないとか言われてたから、心配だったんだろう。金枠の売り買いの情報提供の協力に応じたのでそこはまだ腐りきっては無かったみたいだし、反省して素直に一年の追放になった時もお礼を言ったみたいだった。怜佳さんはちゃんとやり直すなら許してくれる。
「そうか。今はあんなだけど、昔はそうでもなかったんだ。星も一つ増えてたから努力してるみたいだし、家もプレッシャーになってるみたいだから」
「でも、そうだね。彼が一緒だとちょっと不味そうだから、考えてからの返事で良いって言ってたよ」
そのまま昨日の怜佳さんの言葉を伝えた。
「そ、れは、期待されてて嬉しいけど……」
どうやらいきなりで面食らってる感じだ。
「グラスグリーンのクラスに上がったらだからね? まだ時間はあるよ。木尾先輩も加島さんに紹介してもらえれば、夢縁警察も夢じゃなさそうですよ?」
「紹介者の人数制限は無しか?」
期待の眼差しで聞かれた。
「聞いてないよ。でも、おかしな人を入れられても困るからね」
念を押しておいた。このメンバーなら問題なさそうだと言っていた、と教えたら、皆の期待は一気に高まった。
「いや、そうだな。やってみよう。家は話し合いをもう一度して、弟にはやり直しをさせる。再生が無理でも、僕自身の経験にはなるだろう」
加島さんも皆の様子を見て、気合いを入れるべきだと思ったらしい。こんな事が切っ掛けだけど、何かのとっかかりにはなりそうだ。
「そうですね。家族なら、支えにも抑えにもなれますね」
「ああ。あれを野放しにしてきた僕が悪いな。どうにかしよう。弟には職員も夢縁警察にも入ってもらわないよ、他をあたらせる。レイカ様にあれだけの悪態をついたんだ、それだけは出来ないからな」
何か覚悟を決めた加島さんが、気持ちをゆっくりと噛み締めながらそう言って僕と目を合わせた。
「うん。応援するよ。弟さんの事は本人が決める事でもあるから、うまくいくかは分からないけど、きっと気持ちは伝わるよ」
「そうだな。責任の取り方を教えるぐらいだな」
加島さんが苦笑いした。
「良しっ! ここは一つ皆の結束を固めてから勉強だ! 最低でもグラスグリーンは取らないとダメってことだからな。諦めないぞ、俺は」
木尾先輩は拳を上げて気合いを入れていた。メンバー全員が士気も高くそれぞれに気合いを入れていた。
その後はシシリーさんの動きがすごかった、という話で盛り上がった。あそこまで訓練された護衛を見るのはこのメンバーも初めてで、すごいの言葉が飛び交った。
確かにかっこ良かった。沖野さんもベタ褒めで、優基がダメならお姉様にすると良く分からない事を言っていた。
帰り際に、沖野さんと成田さんが来て質問された。
「俺達は神界警察とも縁があるけど、どうなるのかな?」
「そうだね、どちらでも良いと思うよ? 探偵業が性に合ってたらそのまま続けて神界警察入りも良いと思うし、加島さんについて夢縁の職員でも良いし。自由だと思うよ? それにまだ時間はあるし、焦らなくても良いと思うんだ」
「それもそうだな」
「そうだよね。何かどっちも話が出てきて迷っちゃった〜。自分のやりたい方で良いんだよね? 優基〜。優基はどっちにする〜?」
「いや、まだ今日だろ? もっと考えてから……愛美こそどっちだよ」
「そんなの優基と一緒の方に決まってるもーん」
「あのな、そういうのはもっとちゃんと……」
カップルな話が始まったのでその辺で失礼して帰った。まあ、じっくり話し合えば良いと思うんだ。




