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世界を繋ぐお仕事 〜世界征服編〜  作者: na-ho
しんせかいへのみち
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16 見学

 ◯ 16 見学


 夢縁の図書館で加島さんに声を掛けた。振り返った加島さんはよく見ると別人だった。加島さんの双子の弟という星三つの人だ。確か加島さんが下の名前は基直もとなおで、弟が智直ともなおだったはずだ。


「すいません。人違いでした」


「すいませんじゃないよ。人の機嫌を悪くしといて、もっとちゃんと謝ってもらおうか?」


 大げさに歪めた眉の下で睨みをきかせつつ値踏みしている目があった。なんだか顔を近づけて威圧しているみたいでやたらと近寄ってくる。


「え、と、あの失礼しました」


 後ろに下がりつつ距離を取ろうとするけど、顔を近づけてくるのは変わらない。だから、近すぎだから!


「おい、聞こえないぞ! あー? 何か俺の持ってた携帯が落ちたぞ! お前が話しかけたからだ。弁償しろよなんとか言えよ、おらっ! みんな見てただろ? 警察呼んでも良いんだぞ」


 輩だ。DQNだ。落ちてもいない携帯を手に持って、拾う振りだけしたよこの人! 恐ろしい。逆らったらなんかされそうな雰囲気を出してる! しかも騒ぎを大きくして、人の視線を集めて利用している。こんなに怒らせる様な事をした人に、僕がいつの間にかなってるみたいだ。新しいフォーニに会った気分だ。


「はいっ、警察を呼びましょう!」


 僕には警察を呼んだ方が良い気がしたので、それに乗った。


「なんだとこら! 物損を払いたくないから警察呼ぶのかよ? これだけ証人がいるんだ覚悟しろよ?」


 それだけ言って、何故か行ってしまった。意外と警察が来られては困るのが分かってたんだろうか? まあ良いか。この一連の映像を警察に届けておこう。何か後で因縁をつけられても困るし、怖い。僕も成長したもんだ。

 スフォラと一緒に怖い弟さんだねと話しながら、警察に届けておいた。何の被害も無いのに届けるなと言われたので、相談という形にはなった。途中で怜佳さんが来て、担当者と変わった。


「今時は怖いわね」


 そういうと、即席のお茶会が始まった。後ろでシシリーさんがお茶を入れてくれている。担当してくれた人はひっ、とか言いながら柱の影からこっちを見ている。周りの注目は半端無かった。


「はい。良いんですか? 大注目ですよ?」


 何か狙いがあるんだろうか?


「まあ、たまには良いでしょう。恐喝に詐欺の手口にあったという事ね」


「そういう事になるんですかね?」


「そうね、これから請求されそうね? 見学しても良いかしら」


 怜佳さんが人差し指を頬に当ててニッコリと微笑み、可愛く聞かれた。


「見学ですか?」


「ええ、そんな脅しを間近で見てみたいわ」


 そんな好奇心を出されても困るんですけど……。


「そう上手く相手は来ますかね? 危ないですよ?」


 ちらりとシシリーさんの方を見ると、にっこりと笑っている。まるで大丈夫だと言っているみたいだ。


「そう? 明日のお茶会は外でしましょう。向こうからいらっしゃるように、図書館のカフェテラスで待ち伏せましょうか?」


「あー、そうですね。図書館の横のレストランで出しているケーキセットが人気があるみたいですよ。行ってみませんか?」


 空振りだと思うので、美味しい物を食べてた方がきっと気が紛れる。


「あら、話題の場所なの?」


「ええ、中央公園にも近いし、前の店と持ち主は入れ替わったけど、店長は同じなので頑張ってるみたいですね。新作のケーキを毎週、開発しているみたいで、当たり外れがあるみたいですけど、楽しめますよ」


「まあ。たまにはそんなのも良いわね。当たりだと良いけど」


 ふふと、面白そうに怜佳さんは笑った。


 そして、次の日の講義が終った頃に、怜佳さんと昨日のお誘い通りにレストランへと向かった。調度いい感じでテラス席が空いていて、そこに案内してもらった。シシリーさんも少し後ろについてきている。護衛かな? いつものメイド服じゃない姿は新鮮だ。同じ席には座らずに近くの席に座ってお茶を飲んでいた。キャラメルムースが入った新作のチョコケーキは、コーヒーに良く合った。


「これは、濃いめの味ね」


 一口食べて怜佳さんはそう言った。


「コーヒーに合いますね」


「あら、そうなの? 変えようかしら?」


 紅茶セットを見ながら怜佳さんが迷っているみたいだ。


「そうですね、ケーキに合わせるのも面白いかもしれませんね」


 そこに、木尾先輩の勉強会メンバーが店にやってきた。園田さんが木尾先輩の肘を突ついて僕を指さしている。成田さん、沖野さんも三ツ星になってからは勉強会メンバーに入っている。沖野さんと成田さんが、怜佳さんの姿を見て固まっていたが、大丈夫だろう。

 こっちを見てる加島さん達に手を振っておいた。人数が多いので少し先の大テーブルに収まって、注文を始めた。

 ウエイターにコーヒーを追加して、紅茶を下げて貰った。舞台が整ったような気がしたら、テラスに外から上がり込んで僕のテーブル席の脇に来た三人がテーブルを囲んだ。顔を上げると、昨日の加島さんの弟の智直さんと知らない人達だった。


「昨日は良くも逃げたな? 俺のスマホを弁償してもらおうか、え?」


 逃げてはいません、勝手に去ったのはそちら様です。


「昨日、ぶつかっといて、弁償せずに逃げたんだって? ひでぇ奴だな、え、こら分かってんのか? 金出せよ、こらっ」


 右側にいた男にすごまれ、怒鳴る様な声で言われた。


「えーと、昨日警察に話しましたから、今日も一緒に行っていただけると助か……」


 冷静に警察と一緒に話し合いましょう。怖いお兄さんとは得に……。


「何言ってるんだ? 金を出せば問題解決だろ? 簡単じゃねえか」


 右の男に襟首を掴まれて、椅子から引きずり上げられた。あっ足が届かないっ。顔近すぎだし! ごつい顔を近くによせないで欲しい。マリーさんで十分だから。


「まあ、いつもこんな風なの?」


 怜佳さんが冷静に見学中だ。はい、そうですね、大体こんな感じです……。ちなみに苦しいです。


「智直、何してるんだっ。そこの奴、手を離せ!」


 気が付いた加島さんが、慌ててこっちに走って来て叫んだ。が、左にいた人に阻まれて、こっちに来れなかった。


「何だこいつ、って智直が二人? こいつお前の兄貴か?」


 前後の顔を見比べて目を丸くしている。


「他人だよ」


 ちらりと、お兄さんのブレザーを見て苦虫を噛んだ様な顔をした。星が五つ並んでいるのを見たせいだろう。


「どうやって星を買ったのか知らねえけど、俺の前をうろつくんじゃねえよ、基直。可愛いお嬢ちゃん、怖がらせて済まないな、こいつは止めといた方が良いぜ? 人の物を壊して責任も取らない奴だからな」


 加島さんを罵倒して、吊るし上げられたままの僕に向かって顎をしゃくり、怜佳さんに向かってすごんで見せていた。シシリーさんがさりげなく、後ろから鋭い視線を投げている。今にも飛び込んできそうだ。


「あら、おかまいなく。今日は犯罪についてのお勉強ですの。乗って下さって助かりますわ。ささっと続けて下さります?」


「ああん? なんだぁこの糞ガキ! 後で可愛がってやるから覚えとけよ、こらっ!」


「ええ、ここの土を二度と踏めなくして差し上げる為に覚えますわ」


 方眉を上げて横目で無造作にゴミを見る目でそう言ってから、優雅に立ち上がった。


「シシリー。コーヒーが来たわ、折角ですもの冷めては勿体無いわ」


 コーヒーをお盆に載せたまま固まっていたウエイターを、ちらりと見て怜佳さんはシシリーさんに言った。


「畏まりました」


 シシリーさんの目が据わったと同時に姿が消えた。というか目で追えなかっただけだった。怜佳さんの前にいた智直さんがドガッという音で横を見たら倒れていて、床に尻餅をついて痛いと思った時には、僕を釣り上げてた男が横で伸びていた。さらに反対側で最後の一人が床と接吻をしていた。

 怜佳さんは、シシリーさんが警察に連絡を取って、三人を突き出そうとしているのを見もせずに、そのままコーヒーを持ったウエイターに奥の席に変えてもらえるように言って、テラスから離れた。

 勉強会のメンバーも唖然としていた。店の最奥に位置し、周りからは見えない囲いのある場所でケーキセットの試食が再会された。


「下品でしたわ」


「そんなものですね」


 服を直しながら答えた。


「そう、貴方も大変ね」


「そ、そうかも知れませんね」


 いや、偶々だから。そんなに絡まれてばかりじゃないですから。ええ、これが最後です。


「ところで、同じ顔があったわ。あれは双子なのかしら」


「はい、止めに入った方が兄で、明石焼を教えてくれた人です」


「あらそうなの、どういった人物かしら?」


「えーと、金枠の生徒だったんですけど、普通枠になったんです。弟さんが奪った様なことを聞いたんですが、そんな事って可能なんですか?」


「まあ、そんな事があったの? 嫌ね、それも売り買いがあったのかしら……調べてみるわ。それに星を買うだなんて言葉も嫌な感じね」


「そうですね。お兄さんの方は、後輩の面倒も見ていい人なんですけど、弟さんは……評判は良くないみたいです。木尾先輩が忠告してくれた通りでした」


「あら、いつも言ってるメンバーね?」


「はい、今日、居合わせてましたから、後で質問が来そうです。なんて言っておきます?」


「あら、そのままお茶会のメンバーで良いじゃないの?」


「……そうですね」


 その後、色々と木尾先輩と加島さんの事を聞かれた。


「そう、職員の不正に気が付き、それを良しとしなかったのね。それに、さっきも止めに入っていたし。彼には頑張って欲しいわね」


 加島さんと探偵団との関わりを話していたら、そんな風に怜佳さんは言って微笑んだ。


「はい。家を追い出されたと聞きましたが、あれは弟さんが……」


「そこに手を出す事は出来無いわ。バックボーンがどうあれ、手を切るのかどうするかは彼次第ね。グラスグリーンのクラスに入れたら、夢縁警察にも推薦しておくと伝えて良いわ。それまでに身辺を整理する事ね」


「はい」


 木尾先輩が落ち込みそうだな。


「そうね、有力な人物がいるなら、紹介者も考えておくわ。あのメンバーならそう悪くなさそうだわ。ちゃんとした人物でないと困ると言っておいてね?」


 良かった。希望はありそうだ。


「はい。加島さんなら大丈夫です」


 間違っても弟の智直さんを推薦はしないと思う。怜佳さんは枠の売り買いに付いて、彼らに聞いてみると言ってお茶会を終わらせた。いつの間にかシシリーさんが近くで待機していた。中門まで送ってそこで別れて僕はアストリューに戻った。

 大変なお茶会だった。怜佳さんの気まぐれもそうだけど、まさかあんなに直ぐに現れるなんて変な感じだ。


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